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星和書店

新刊の解説(Publication of this month)を掲載しました。

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うつ病の再発・再燃を防ぐためのステップガイド

うつ病の再発・再燃を防ぐためのステップガイド

本書は、長く暗いトンネルの先にある光です

Peter J. Bieling/Martin M. Antony 著
野村総一郎 監訳  
林 建郎 訳
A5判 並製 400頁 ISBN978-4-7911-0696-7 〔2009〕
定価 2,940 円(本体2,800円)

認知療法を基本に置いた、ステップ方式でうつ病の再発・再燃に対処するための実践書。うつ病の概念と薬物療法について分かりやすく解説するとともに、練習部分は明快で取り組みやすくい構成となっている。また、マインドフルネス(気づき)・対人関係療法など最新の技法や概念についての解説ばかりでなく、うつ病予防の効果が実証された技法の数々を、ワークブック形式でわかりやすく紹介しており、再発・再燃を予防する方法が見事に示されている。

境界に生きた心子

境界性パーソナリティ障害の姿を描いたノンフィクション

稲本雅之 著
B6判 並製 224頁 
ISBN978-4-7911-0693-6 〔2009〕
定価1,575 円(本体1,500円)

境界に生きた心子

いま、特に若い人に増えている境界性パーソナリティ障害。この障害を抱える女性のピュアでドラマチックな生き様を、彼女の恋人がハートフルに綴ったノンフィクション。激しい感情の荒波に晒されながら際限のない愛情を乞う彼女は、恋人を巻き込みながら千変万化の悲喜劇を日々繰り広げた。彼女を真正面から受け止め、愛し続けたパートナーだからこそ描けた境界性パーソナリティ障害を抱えた女性の姿。

精神療法という音楽

精神療法の対話に流れる「音楽」を読み解く

スティーブン・H・ノブロック 著
朝井 知、黒澤麻美 訳
四六判 上製 284頁 ISBN978-4-7911-0695-0 〔2009〕
定価2,940 円(本体2,800円)

精神療法という音楽

本書では、精神分析療法の事例を中心に、そこで繰り広げられる対話の中に音楽の構図を見出し、再び療法に還元していく様が見事に示されている。音楽の観点から本書で示唆されていること、そして、そこから得られる姿勢は、セラピストに限らず、日常の多くの場面で、実りある対話を生み出す可能性を秘めている。

精神科医のためのインターネット利用ガイド

精神科医にとって有用なインターネット上の情報や、セキュリティ、リテラシーなどを体系的にわかりやすく紹介

[編者]仙波純一、小原圭司
[著者]加藤 温、小原圭司、仙波純一、福田倫明
B5判 並製 52頁 ISBN978-4-7911-0694-3 〔2009〕
定価1,995 円(本体1,900円)

精神科医のためのインターネット利用ガイド

インターネットを上手に利用すれば、便利なことや得をすることが非常に多い。本書は、精神科医が研究したり、診療上の情報を収集したり、自己研鑽に努めるときに有用なインターネット上の情報を体系的にわかりやすく紹介する。インターネットを利用してはいるが、それほど使いこなしていない方を想定して書かれており、利用する上でのセキュリティ、様々な情報の中から信頼できる情報の読み取り方などについても丁寧に紹介する。
(※本書は、『精神科治療学』誌の23巻1号〜23巻8号に連載されたものです)

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精神科治療学
定価 3,024
月刊 精神科治療学 第24巻2号

特集: 夜,寝ている時に起こる異常行動

精神科医がコンサルテーションを受けることが多い睡眠時に起こる異常行動を取り上げる。睡眠時驚愕症(夜驚)、睡眠時遊行症(夢中遊行)、群発頭痛、睡眠麻痺(金縛り)、むずむず足症候群などの症状面から、また前頭葉てんかん、パニック障害など疾患面から紹介。一般精神科医にとって必要な睡眠時の異常行動のメカニズムと対処について、精神科医に必要な知識が網羅されている。


定価 3,045
月刊 臨床精神薬理 第12巻3号

特集1:精神疾患の早期介入における薬物療法の意義
特集2:新規抗てんかん薬topiramate

精神疾患の早期介入に関するエビデンスを包括的に展望し、様々な精神疾患への早期介入における薬物療法の意義を明らかにした特集。また、2007年9月に本邦で上市された抗てんかん薬topiramateの特集では、開発の経緯や将来への展望、薬理作用、臨床応用、副作用などを幅広く取り上げた。

季刊 こころのりんしょうa・la・carte
定価 2,940
年一回刊 治療の聲 第9巻1号

特集:安克昌の臨床世界

若くしてこの世を去った卓越した臨床家・安克昌氏。阪神淡路大震災で被災者のこころのケアに奔走し、また解離性障害治療の第一人者として活躍する氏の生き生きとした姿が、論文や著作からは窺うことができない氏の素顔とともに描かれる貴重な内容。また、中井久夫氏の特別寄稿「中井久夫、描画症例を語る―暗闇を歩く天使―」を収載。

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うつ病の再発・再燃を防ぐためのステップガイド

 日本で出版社の多くが東京にあるように、アメリカでは東海岸、それもニューヨークに多くの出版社があります。西海岸に活動の中心をおく出版社は、とても少ないです。
本書の出版社New Harbinger Publicationsは、サンフランシスコの対岸オークランド市にあります。カリフォルニア バークレイ大学のすぐ近くです。
 New Harbinger Publicationsは、社長さんが臨床心理士ということもあって、多くの心理学的な自助本を出版しています。毎年フランクフルトで開かれるブックフェアやアメリカで開かれるBook Expo America にブースを出されているので、当社とも毎年顔を合わせて情報交換をしています。世界一の規模のブックフェアといわれるフランクフルト・ブックフェアは、毎年フランクフルトで行われますが、Book Expo Americaは、ニューヨーク、ワシントンDC,ロスアンジェルス、など大きな都市で毎年場所を変えて開かれます。この二つのブックフェアには、世界中の主な出版社が参加し、その出版社の人たちも集まり、大変にぎやかで、出版社にとって大変貴重な機会を与えてくれます。日本で行われるブックフェアは、国際と名乗っていますが、アメリカやヨーロッパの出版社は、ブースを出しておらず、その出版社の人たちも現れないので、何ともローカルなブックフェアになっています。世界一の都市「東京」といっても、ことブックフェアのグローバル化から見れば、イタリアの小さな町ボローニャで開かれるブックフェアや、北京のブックフェアと比べても、はるかにさびしいものです。規模だけは大きいのですが、出展しているのが、出版社というより、印刷業や広告業、IT機器メーカーなどで、世界のブックフェアと比べると、え、これがブックフェアなの、と驚かれる内容です。
 New Harbinger Publicationsの出版物で当社が最初に出版したのはStop Walking on Eggshells(境界性人格障害=BPD)です。この本がベストセラーになっているということもあるでしょうが、その後も連絡を取り合って互いに協力し合っています。
 さて、「うつ病の再発・再燃を防ぐためのステップガイド」ですが、認知行動療法の理論に基づいて書かれています。うつ病について書かれている本は、現在巷にあふれていますが、再発防止に重点を置いた本は、あまりないでしょう。大野先生がお訳しになった「うつと不安の認知療法練習帳」の著者パデスキーは、「うつ病の再発・再燃を防ぐためのステップガイド」について次のように言っています。
 「本書は、1度以上うつを経験した人にとって、暗いトンネルの先に光輝く出口になるであろう。最新の研究や情報に基づいているが、だからと言って難解な記述ではなく、明快で理解しやすい。うつ病の繰り返しという悲劇のメリーゴーラウンドを断ち切るための方法が、どの章でもわかりやすいステップ学習として説明されている。」

年一回刊 治療の聲 第9巻1号

 治療の聲は、1998年4月に創刊第1号が出版されました。それから11年たち、9巻1号が出版になりました。この間、11年。ということは、残念ながら出版されない年もあったということです。ここのところ毎年、○○巻1号が出版されていますが、2号は出ていません。なら1号としなくてもいいようですが、出る可能性も残っているということです。
 「治療の聲は、大声でしょうか、小声でしょうか。・・・・・小声の、低音の治療の声をこそ静かに聴きたいと思っている読者もきっと少なくないと私は信じます。・・・・・・・・・・
治療の聲はもっとひっそりと語り始めようとしています。その声に耳を傾け、また、ともに語ろうという読者が必ずおられることを信じ、静かな声がしずかなままで、やがて大きな広がりをもつようになることを心からお祈りします」と中井久夫先生が創刊号に寄せてのなかで書かれています。
 本誌は、まだまだ小声のままで、大きな広がりをもつにいたっていません。ご投稿が増えれば、2号が出版できる可能性が見えてきます。ぜひみなさまご投稿をお願いします。

月刊 精神科治療学 第24巻2号

 今月の特集名が面白いです。「夜、寝ている時に起こる異常行動」というのですが、夜が付いているのがみそのようです。寝ている時間で、明るい時間のほうが暗い時間より長いという人も多いかもしれません。午前5時は、夜でしょうか。なんてことを編集部で雑談しました。臨床場面であまり先生方が出会わない病態についての特集です。患者さん当人は気づいていることが少なく、治療者が疑ってかからないとなかなか判明しないことが多いと思います。ぜひ参考にしていただきたい特集です。


Changeを拒む価値あるもの


顔見りゃ苦労を忘れるような、人がありゃこそ、苦労する

 今は、未曽有の不況だそうです。不況というと、すぐ対策となるんですね。今までに何度も何度も同じことの繰り返しのような気がします。もともと進む方向が間違っていたのかもしれません。行き詰って崩壊すると、それ経済対策というカンフル剤を打って問題を目立たなくさせ、表面上をつくろってきました。今までやってきたことがまちがっていますよ、今の状態はよくないですよ、といってくれている病的サインを、経済対策という注射で隠してきたというような気がします。熱が出て体の不調を訴えているのに、熱さましで熱を下げて仕事をするとか、風邪の症状が出ているのに薬を飲んで休まない、とかいうようなものではないでしょうか。だんだん隠れていた悪い部分が肥大化して、もう小手先の経済対策ではどうにもならないというところに来てしまったと訴えているのかもしれません。

 歴史が浅く、いろいろな国からの人たちで成り立ち、固有の文化の少ないアメリカに世界中が影響を受け、そのthe bigger the stronger, the mightier the better(より大きければより強く、より強大であればよりよい)というアメリカ流のやり方を理想としてきたのではないでしょうか。

 古い歴史を持ち、素晴らしい文化をもった日本。その固有の文化がどんどん変化させられ、アメリカ流のビジネスが日本を闊歩してきました。町の魚屋さんが消え、八百屋さんが消え、スーパーマーケットが増えてきました。おいしい食堂が消え、ファミリーレストランが乱立してきました。人々は、それが正しいと信じ、マスコミもそれを後押しします。ところが、歴史に根差した変わりたくない部分が、変わりたくないと悲鳴を上げだしたようです。頑固に変わりたくないという、変わってはいけない大事なものがあるんだ、と言っているかのようです。

 例えば肝臓だって、過度な仕事をすれば、過量にお酒を飲めば、やめてくれ、そんな状態にはたえられない、元のような静かな状態になってくれ、どんなに薬を与えられてももう限界だ、と悲鳴をあげますよね。最初に肝臓が小さな文句を言った時、すぐその声に気がつけば、問題にならないで済むことも多いのでしょう。栄養剤や痛み止めなどで、症状を取ってしまうと、よくなるどころか悪くなるということもありえるでしょう。

 国の経済状態でも、今までに何度となく症状をだしてきました。そのたびに、政府がお金をばらまき、国民総生産なる数字のバロメーターをあげることで、経済成長一点張りの政策をとってきたわけです。日本だけでなく、世界の多くで見られる現象です。企業でも毎年数字を伸ばしていくなんて言うのは、考えても無理なことではないでしょうか。有限の世界なんですから。そんなに急いでも、どこかでぶつかってしまいます。

 いろいろな無理が表面化し、でてきた大量リストラ、失業、などなど。こんな状態を夢見て今までみんな努力してきたのでしょうか。何かが間違っていたのではないでしょうか。こんなに努力して、こんなことになってしまって、この30年、文句も言わずひたすら企業戦士として働いてきた団塊の世代の胸中はどうなんでしょうか。

 アメリカは、オバマ大統領も変化を訴えて当選しましたが、変化という言葉がよく使われます。アメリカは、新しい国。古い歴史をもつヨーロッパや日本のように、変えることのできない守ろうとする大事なものはまだ少ないのかも知れません。多くの人種のあつまりであるアメリカでは、日本のようにみんなが共有する考え方とか行動様式とかは際立っていないのかもしれません。だから、いろいろな選択肢を次はこれ、次はこれ、とチェンジしていって、何かを見つけようとしているのではないでしょうか。しかしなかなかみんなで共有できるものが出てこない。だからマネーに重点が置かれるのかとも思います。

 アメリカの精神科領域での歴史においても、変化はよく言われます。一時は、短時間で症状を変化させるという戦略的なブリーフセラピーが流行りました。このように考えてくると、アメリカに精神病理学がないといわれているのも、よくわかります。精神病理学は、古い歴史を持つドイツ、イギリス、日本などで意味を持つのかもしれません。アメリカでは、日本の精神病理学を説明しようとすると、メディカル・サイコロジーという英語が一番アメリカ人に分かってもらえる英語のようです。

 先日、ある先生にお聞きしたことですが、イギリスのガイドラインでは、軽いうつ病の場合、最初の数週間は薬物を投与せず、精神療法的な治療をおこなう、となっているということです。軽い気分障害の場合は、すぐに薬で症状を取ってしまうことはよくない、と考えられているようです。症状を薬で処理してしまうと、本質がかくされ、病気が遷延化すると考えられているのでしょうか。

 日本では、軽い気分障害についていろいろ論文があり、精神病理学的な意見も多々聞かれますが、いざ治療となると、最初から薬物投与となっているようです。これは、精神科にたくさんの患者さんがこられ、治療スタッフが少なく治療費も安いという日本の医療状況にもよるのでしょう。

 当社の「臨床精神薬理」の昨年の12月号でもレジリエンスの特集をしました。レジリエンス(自己治癒力)は、医学の問題だけでなく、日本の社会、経済状況にとっても、重要な概念だと思うのですが。症状が出た時に、自分で治ろうとする力を大事にすることが、社会においてもいえるのではないでしょうか。病理をしっかりと考えることなく経済対策だとばかりにお金をばらまくことの繰り返しは、問題をどんどん遷延化させているのではないでしょうか。

 京都の町やロンドンは、かたくなに変化を拒んでいるような気がします。変化したら固有の、今までの、大事なものがなくなってしまう、と。効率が悪いかもしれないし、手間がかかるかもしれないし、扱うのに頑固で手がやけるかもしれない。しかし、壊してしまったら2度と戻ってこない、壊してしまうと必ずや後悔するものが、そこにはあるような気がします。

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