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星和書店

【書店フェア情報】
紀伊國屋書店新宿本店5F心理学書及びジュンク堂書店新宿店7F心理学書にて、2書店合同の「読んでおきたい心理学基本書フェア」が4/1(火)より開催されます。これから心理学を学ぶ人のための基本書の他、著名な先生方が選んだオススメ本も並びます。弊社の書籍も多数並びますので、ぜひ新宿に足をお運び下さい。

こころのマガジン
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体験を聴く・症候を読む・病態を解く
精神症候学の方法についての覚書
心的体験から精神症候を読み取り、さらに精神症候から病態心理を読み解くという精神症候学の方法を論じ、ひいては個々の患者の病態構造の把握のための、そして各々の疾患の病態生理の追究のための方法としての精神症候学を呈示する画期的書。各章を通じて、統合失調症の精神症候を個々に取り上げ、その病態心理の究明のために著者が編み出した独自の方法を述べる。

中安信夫 著
定価
2,730円(本体2,600円)
四六判 上製 208頁 ISBN978-4-7911-0656-1 〔2008〕
体験を聴く・症候を読む・病態を解く
  雑誌の最新号 next
精神科治療学
定価3,024円
月刊 精神科治療学 第23巻3号
【特集】 完全寛解に至らないうつ病とパニック障害―あと一押しの治療的工夫― I
日常臨床でよく経験されるうつ病とパニック障害は,比較的早く治療の手ごたえを感じる症例が多いが,「もうひとつのところ」で足踏みしてしまい,寛解に至らない症例もまた多く経験する。この特集では,なかなか寛解に至らないうつ病とパニック障害への「あと一押し」の治療的工夫を幅広く扱った。
臨床精神薬理
定価3,045円
月刊 臨床精神薬理 第11巻4号
【特集】 AD/HDに対する薬物療法のエビデンス
リタリンに代わって新発売されたmethylphenidate徐放錠 コンサータの紹介を中心に、AD/HDの基礎から臨床まで、 中枢神経刺激薬の依存リスクや薬物療法のエビデンス、行動療法と薬物療法の実際、成人期AD/HDの問題などを特集した。
こころのりんしょうa・la・carte
定価1,680円
季刊 こころのりんしょうa・la・carte 第27巻1号
【特集】 子どものチックとこだわり
チックとこだわりは子どもに生じやすい傾向があり、しかもしばしば両方が同じ子どもに起こります。親の育て方が根本的な原因であると誤解されていましたが、今では生物学的な基盤があると理解されています。それを前提として、子ども全体を受けとめて発達を支援することが大切です。本特集では、チックやこだわりに有効な治療法についてやさしく紹介し、最新の生物学的知見も紹介します。

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今、このときを、楽しんでいますか

私たちの脳には、たくさんのデータがぎっしりとつめこまれていて、それらのデータに基づいていろいろ考えているのだと思います。何かを見ると、すぐにそれをあらわす言葉が出てくるわけです。これは便利かもしれません。犬を見て、犬といえば、みんなああ犬か、と分かるわけです。もし犬という言葉のデータがなければ、足が4本あって、なんて説明しなければなりません。便利の反面、犬といえば、聞いたほうも、自分で犬のイメージを作ってしまいます。犬でもいろいろあるのに、一言、犬で済ませてしまうわけです。もし、物を見るときに、今までのデータを全く遮断して、ただただ見ていると、すごく新鮮な感じがします。データを遮断することは、なかなか出来ないのですが、ただ見たままを見たまま人に話してみると、いかに普段は、言葉を使って簡単に話してしまっているかと反省させられます。

人の話を聞いても、聞いたとたんに自分の過去のデータベースから自分の意見を引き出してきます。人の話を素直には、聞いていないんですね。今現在、いろいろ体験しながら私たちは生きているのですが、見たもの、感じたものを、過去のデータや未来の予測で脚色しているような気がします。会社などで、営業会議があり、ある人が話すと、それはいつもこうだったよ、という意見が出てきたりします。現在のことが、過去のデータで色付けされてしまうわけです。 後日当社から発売するのですが、今のところ企画段階で、詳しくはお知らせできないのですが、ある模擬ワークショップを開きました。12人くらいの参加者が輪になって、人の話を、何のコメントもせず、ただただ素直に聞くことから始まります。NLPの練習でも、患者さんの話を真剣に一言漏らさず聞く訓練をすると聞いたことがあります。一生懸命聞くと、余分な考えが出てきません。余分な考えをしていると、一言残らずおぼえていられなくなります。未来のことも、過去のデータベースも遮断して、何のコメントもせずに、聞きます。私は、参加したわけではなく、映像を撮るほうに回っていたのですが、これは本当にすばらしい体験のようでした。このように聞かれると、話すほうも、いつもとは違って、すごく話しいい体験をするようです。

余談ですが、この模擬ワークショップに、当社の取引会社の社員を出席させました。 初日が終わって、家に帰って、何と明け方の3時ごろまで、奥さんの話を聞いていたそうです。いつもは、批判したり、あまり話を聞かなかったりしていたのだそうですが、その日は、素直に、批判せず、奥さんの話を聞いていたそうです。奥さんのほうも、何の批判もされず、何を話してもいい、というメーセージを受け取ったので、話が止まらなかったのでしょう。二人ともすごく今までにない幸せな気持ちになったそうです。次の日、彼は帰りがけに、奥さんにお土産を買っていくと、デパートに行きました。お土産なんか今まで買ったこともなかったそうです。このワークショップを受けると、人生が変わる、と聞いていましたが、確かに彼の人生は変わったようです。

私たちは、人の話を聞きながら、いつもこちらが何を話そうかと身構えながら聞いているのかもしれません。そういう態度は、自然と相手に伝わるのでしょう。相手もついつい何か言われそうで、本当に話したいようには話せていないのかもしれません。はっきりとあらわすわけではない微妙なしぐさのメッセージが、相手につたわるのでしょう。

どうも私たちは、親切にとしていることが、本当は自分がいやだからしているということに気づいていないのかもしれません。相手が話していて、咳払いをしていると、親切にお水をもってきたりします。本当に親切心なのでしょうか。自分では気づかないうちに、何となく咳が耳障りで、咳を止めてもらいたいという気持ちから水を持ってきたのではないでしょうか。母親が子どもがご飯を食べてるとき、子どもの口を拭いたりすることもあるでしょう。これは、子どもが拭いてもらいたいと思っているであろうから、拭いているのでしょうか。あるいは、自分が不快感を感じるから、子どもの口を拭いて、いい母親だと思っているのでしょうか。

どうも私たちの行動は、自分の側の気持ちに基づいて起こっているような気がします。 このワークショップを近くから見させていただき、いろいろ勉強させていただきました。私たちは、今を生きながら、それを過去のデータで脚色しがちで、抑うつ感をもったり、未来のことを考えて、不安になったりしているのだなあ、と思ったしだいです。今このときを生き、今このときの感覚を楽しむ、というのは、本当はすごく難しいことです。ありとキリギリスの話で、みんな、今だけを楽しんではいけない、といわれ続けているのですが、今を楽しむことは、実際は、なかなかできることではないのでしょう。

 さて、私のような凡人は、「さあ、明日から、今このときを大事にしていこう」なんてついつい思ったりして、あ、いけない、今なんだ、と思い直しています。

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