あやまる言葉を忘れたのかな
最近、若い人たちが、あやまらなくなってきたと思いませんか。
以前は、電話にでたとたんに、挨拶代わりに「もうしわけございません」などとあやまる人がいて、それはそれで変に思いましたが、比較的すぐにあやまりの言葉を聴くことが多かったように思います。最近では、めっきり減りました。 たとえば、食事にいくと、すぐ水が出てくるものですが、あまり水が出てこないので催促すると、「今お持ちしたほうがいいですか」とか「お水がいいですか」というような返事が返ってきます。一言も「あ、すいません」というような言葉は聞かれません。あるところに電話して、ある用件をお願いし、急いでいるからと言って、電話をきって待っていると、いつまでも返事がきません。業を煮やして電話して、どうなったのですかと聞くと、「すぐ調べたほうがいいですか?」といって涼しい顔。
今はどうか知りませんが、昔、ドイツのハンブルグの友達に会いに行ったときのこと。ハンブルクに10年以上住んでいる友人いわく「こちらでは、あやまってはいけないよ。あやまれば、こちらが悪いと認めたことだから、まずいことになるよ」といわれました。道路を渡るときも、右左を見てわたってはダメだ、左をみて確認すると、車の運転手は、こちらが車を見たのだからといってとまってくれない、左を見ないでわたれば、運転手はこちらが車を見ていないのだから止まらざるを得ない、と言われました。冗談かなとも思いましたが、うまく言い当てているとも思いました。デパートなどで、荷物を運んでいる人が、周りのお客さんに、「注意しろ」といって、大きな車を動かしていました。
イギリスに行くと、こんどは、excuse me という優しい言葉を良く耳にしました。電車に乗ってこちらがぶつかっても、相手がexcuse me、こちらが足を踏んでも踏まれたほうがexcuse me。デパートで、荷物を運ぶ人も、excuse me。 国によってかなり違うものですね。
小さな子どもは、謝りません。怒られると、なきます。いつごろになってでしょうか、怒られると、ごめんなさい、といえるようになるのは。「ママ、ゴメンナチャイ」という魔法の言葉を子どもは発見するのです。もしかすると、この魔法の言葉を発見せずに大きくなってきた人たちが、沢山いるのかもしれません。 コンビニや、ファーストフッド店などでマニュアルにあるとおり、小さな子どものお客さんにまで「おそれいります」などと怖い顔をして言っていますが、言葉と顔が一致しません。 最近、コンビニに入っていくと、店員さんがそっぽを向いたまま「いらっしゃいませ、こんにちは」と鸚鵡返しのようにいっています。すごく変な感じです。発音している言葉と、その言葉の持つ意味が、まったく矛盾しているわけです。まったくコミュニケーションになっていません。鬼のように怒っているお母さんを、一言でにこっとさせてしまうこの魔法の言葉は、精神療法の極意かもしれません。
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