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星和書店
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自己変容をもたらすホールネスの実践

自己変容をもたらすホールネスの実践

マインドフルネスと思いやりに満ちた統合療法

ロレーナ・モンダ 著
ウィリングヘム広美、木村章鼓 訳

四六判 並製 488頁
ISBN978-4-7911-0886-2〔2014〕
本体価格 2,900 円 + 税

自分は、何者なのか、一体誰なのか。そう、自分は、今初めて出会ったばかりの人物。多くの人が自己変容をもとめて治療を受けるが、根本的に自分を変えることに成功する人は、ごく一部である。自己を変化(自己変容、トランスフォーメーション)させるためには、内面の気づきだけでは不十分である。自己変容をもたらす真のエネルギーは、暮らしの中での絶え間ない実践にある。
ホールネスは、いつでも〈今〉、〈ここ〉にある。本書の各章に載っている練習課題を何度も実践することで、私たちはホールネスな状態へと導かれる。自己変容の鍵は、日々の実践にある。
さあ実践しましょう。練習による実りを十分に味わってください。

自閉症とサヴァンな人たち

自閉症とサヴァンな人たち

自閉症にみられるさまざまな現象に関する考察

石坂好樹 著

四六判 上製 360頁
ISBN978-4-7911-0885-5〔2014〕
本体価格 2,800 円 + 税

世に棲む日々の自閉症。本書は、現実の自閉症児者が示す様々な現象の中から著者が関心をもつものを取り上げて論じている。一つ一つの事柄が、物語のように面白く分かりやすく記述されている。自閉症概念のない時代に、現在なら自閉症とされるだろう人々がどのように生きていたかを江戸時代の例を挙げながら考察する。サヴァンに関しては、かなり詳細にいろいろな実例を挙げて考察している。著者は、ICD-10やDSMによって定義づけられた「自閉症」概念の狭苦しさと貧困さへの反撥から、従来の研究で傍流と考えられる領域の研究を取り上げ、考察する。それにより、知能や才能といった言葉を相対化し、自閉症の主要な症状である常同的反復的行動が、自閉症の本来の症状ではなく二次症状であるとの考えを示す。「自閉症」にまつわる様々な概念を批判的に検討するうえで、本書は貴重な示唆を与えてくれる。

   雑誌の最新号 next
精神科治療学
本体価格  
2,880
円+税
月刊 精神科治療学 第29巻10号

特集:精神科における困難事例にどう対処するか? II

精神科医が困難事例に出遭った時の解決策が満載!いずれの事例も、まだ外来診療を始めたばかりの若手がクリアしてもらいたい『基本対応例』と、ベテランの工夫が生きる『応用対応例』を記述。特集 II では転移が問題になる事例、威圧的な事例、薬物を要求する事例、親の対応に苦慮する事例、児童虐待事例、困難を感じていない患者、対職員暴力などを取り上げた。なかなか解決策が見つからず困ったときに役立つ特集。
JANコード:4910156071044

臨床精神薬理
5,900 円+税
精神科治療学 第29巻 増刊号

発達障害ベストプラクティス
―子どもから大人まで―

発達障害者支援のための実践的な手引書の決定版!この10年、発達障害に対して精神医療界のみならず社会一般の関心が沸騰し、もはや児童精神科医だけでなくすべての精神科医が知っておくべき基礎知識の1つになっている。この領域は、まだエビデンスが十分にないため、現場の実践家たちによる経験を、子どもから大人までのライフステージを網羅しつつ1冊にまとめた。精神医療の立場を中心に据えながらも、他分野の専門家にも執筆いただき、包括的な現段階でのベストプラクティスの集大成となっている。精神科医のみならず、小児科医、さらにはコメディカルスタッフや行政、教育関係者も必読の書。
JANコード:4910156081043

臨床精神薬理
本体価格   
2,900
円+税
月刊 臨床精神薬理 第17巻11号

特集: NMDA受容体機能と新たな精神疾患治療

以前から統合失調症治療薬の新たな作用機序として注目されてきたNMDA受容体機能調節作用を有する薬剤が現在、精神科領域の様々な疾患に対象を拡大して、治療薬としての開発が進められている。その開発状況は必ずしも順風満帆とは言えないが、現時点における精神疾患治療薬としての新たな可能性について整理し、その将来性を評価する特集である。
ISBN:978-4-7911-5205-6

今月のコラム
今月のコラム
理解してもらえない「カサンドラ愛情剥奪症候群」

〜 悲劇の予言者、悩める「カサンドラ」が減ることを願って 〜

  西城サラヨ

わたしにとって『マンガでわかるアスペルガー症候群&カサンドラ愛情剥奪症候群』の出版は、大きな苦しみであったと同時に、勇気がいるものでした。
 そもそも「カサンドラ愛情剥奪症候群」とは、最近注目されてきている言葉です。「カサンドラ症候群」「カサンドラ情動剥奪障害」などいろいろな言い方がありますが、簡単にいうと、アスペルガー症候群の夫と情緒的な相互関係が築けないために妻に生じる、身体的・精神的症状を表すものです。

アスペルガー症候群は発達障害の一つですが、拙著のとおり、現在では健診や教育活動のなかで発見されることが多くなり、支援が行われるようになりました。しかし、現在、成人となり職場で働いている人や家庭生活を営んでいる人たちのなかには、自らがアスペルガー症候群とは気づかないままに、「どうして同僚や妻、子どもは自分に不満を言うのだろう」と悩んでいる人も多いと思います。また、すでに自らが「アスペルガー症候群」であることを自覚したうえで、コミュニケーションを模索している人もいると思います。ですから、「アスペルガー症候群」の人を傷つけるつもりはもちろんなくても、その障害をもつ人との家庭生活のなかで苦しんだ自分のことを書けば、イヤな思いをする当事者もいるかもしれません。新たな苦しみや批判を生むのではないかと不安にもなりました。
 わたしは、夫を責めるつもりもありませんし、自分を責めることもしないように、努めて冷静に書こうと思いました。しかし、もちろん、自分がうつ状態に至るまでの過程や、当時の状況を吐露することは、当時の自分の苦しみを思い出すことになりました。忘れたいほどの苦しい記憶をプレイバックしなければならず、辛い作業でもありました。

それでも最後まで書くことができたのは、もしも自分と同じように悩み苦しむ人が他にもいるならば、“少しでも心を軽くしてあげたい”“勇気づけてあげたい”と思ったからです。
 その結果、現在では、この本の出版をきっかけに、同じように悩んでいる方々の存在を知ることができ、いくらかでも誰かの力になることができ、わたし自身も救われたと感じています。

先月のことになりますが、「Moon@札幌」(アスペルガーの配偶者を持つ女性のための自助グループ)から講演のお誘いをいただき、参加者の皆様から直接お声を聞く機会を得ることができました。参加者の皆様は、わたしと同様にこれまでの家庭生活のなかで、夫との関係に悩みながらも、懸命に社会生活を送っている方々ばかりでした。夫とコミュニケーションが図れないことによって、「家族ってなんだろう」という違和感や、「家族なのに伝わらない」という孤独感を感じながらも、それを周囲に打ち明けられないまま家族や社会の一員として生きてきた立派な方々でした。

講演会では『マンガでわかるアスペルガー症候群&カサンドラ愛情剥奪症候群』では触れられなかった「家庭内でしか見えない問題(性生活や離婚への経緯)」「家族の背景(姑・舅に理解してもらえない)」「互いの心の動き(わたしが○○と思っていたとき、夫はこう思っていたのかしら)」など、具体的なエピソードをお話しさせていただきました。参加者の皆様のなかには、話に共感して心を開き涙ながらに聞いてくださった方や、生きることへの勇気につながったという方もいらっしゃいました。

わたし自身は、夫が「アスペルガー症候群」であることに気づくことができず、重いうつ状態に陥り入院することになってしまいました。一般的には、わたしのうつ病発症という事態は“夫婦で乗り越えた”という絆につなげることができる出来事なのだと思います。しかし、結果的には、夫はアスペルガー症候群の二次障害を引き起こしてしまい、離婚に至りました。

夫婦にとって(とくに子どもがいる場合は)、お互いを信頼し合い助け合いながら良好な家族関係を築けることが理想なのだと思います。少しでも、自分がアスペルガー症候群であることに気づき特性を知ろうとする人が増えるだけで、そして、少しでも妻(パートナー)が理解できるようになれば、苦しんだり悩んだりする人が減るのではないかと思うのです。


※「カサンドラ」というネーミングは、ギリシャ神話のアポロンの愛を拒絶したカサンドラが、アポロンの呪いによって、自分の予言を誰にも信じてもらえなくなった逸話によるといわれています。

西城サラヨさんの本、好評発売中

マンガでわかるアスペルガー症候群&カサンドラ愛情剥奪症候群
(西城サラヨ 著)

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