たった一つだけ
2010年、明けましておめでとうございます。
新年になると、おめでとう、と言いますが、みなさん、おめでたい気分になりましたでしょうか。英語では、I wish you a happy new yearですから、おめでたいというより、幸せな年を願うということでしょうか。
昨年は、随分と雑誌の廃刊がありました。私にとって大変ショックだったのは、研究社の「英語青年」が休刊になったことでした。と言って、最近まで英語青年を読んでいたわけではありません。ですので、最近の英語青年の目次や内容がどのようなものであるかは、知りません。私が高校の時、そう40年以上前でしょうか、毎月、英語青年が出版されるのを楽しみにしていました。それ以上に熱中していたのは、神田村の古書店にいって、昔の英語青年のバックナンバーを探索することでした。
英語青年には、和文英訳の課題が出ている頁があって、その和文を英訳して編集部に送るんです。ペンネームを書いて送るのですが、次の号(いや、次の次の号)くらいに、ランク別にペンネームが並んで載せられるのです。なかなか上のランクに上がらないんです。その和文英訳で何しろ俊逸だった講師は、早稲田の商学部の教授の伊地知純正先生でした。私が高校のときには、もうこの欄を担当されていなかったので、その時より10年ほど前の英語青年を古書店で探しまわり、伊地知先生が担当されている号を見つけると、それを宝物のように買ってきたものです。何しろ英語がうまい。それにコメントが超面白いのです。マンガを読むより面白かったのです。私は、伊地知先生の採点を受けたことはないのですが、伊地知先生の影響を強く受けたと思っています。伊地知先生は、その当時の日本人が(戦後日本が貧しいころ)英会話を習うことが英語を勉強するということだと思っていたことを苦々しく思っていたのでしょう。It is more important to write a good English than to speak English というようなことをよく書かれていました。そこで、英語青年だけでなく、伊地知先生の英語で書かれた著書を古書店で探し回りました。When two cultures meet, First visit to Londonなどが私の戦勝品でした。
この雑誌が休刊になったのですから、かなりショックを受けたわけです。英語青年のファンと言っても、和文英訳の欄だけを求めて買っていたのです。ワーズワースだキーツだシェクスピアだという論文には、目もくれないんですね。と考えると、雑誌では、全部の内容を気に入って買うというよりは、一つでいいんです、ほしいと思う内容があれば。たった一つ読みたい、勉強したいと思うものがあれば雑誌を購入するのではないでしょうか。今の雑誌は、このたった一つが無いような気がします。
星和書店は、医学の各分野を平均的に出版するのではなく、本当に狭い領域に絞って出版活動を行っています。この一つの領域において、本年も引き続き輝いていられるように努力していきたいと思います。
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