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精神科医の主な責任は、患者に対してであり、社会に対する補足的な義務はあくまで二義的なものなのか? 医師は、第三者に対するリスクをアセスメントする必要があるのだろうか。感染症の場合は、医師には病気を蔓延させる患者を隔離する権限がある。
精神障害を持つ人の暴力の問題を考えるとき、上記のような疑問が呈されることがたたあります。新裁判員制度も、ついに始まりました。そのようなこともあり、病気と触法事件との問題を考えていた時、オックスフォード出版会から本書Treating Violenceが出版されました。早速、取り寄せて検討していたところ、翻訳者の吉川先生が「訳者あとがき」で書かれているように、先生もこの本のご翻訳を考えておられました。そういうことで、では翻訳をしようと決めてから、本当に短期間でご翻訳を完了されました。先生から「訳者あとがき」をいただいて初めて知ったことですが、癌の苦しみに喘ぐご母堂様の病床の傍らで翻訳を続行されたということが書かれていました。先生の本書に対するお気持ちが伝わってきて、胸が熱くなりました。
本書は、精神障害の暴力についてのリスク・アセスメントにまつわる問題をことごとく整理してくれている点でも、非常に便利な本です。翻訳文もとても分かりやすく、読みやすくなっています。
「ワークショップを受けた方が、人生かわりました、と言っています」と水島先生からお聞きしました。衆議院議員を辞められて、精神科クリニックを開かれている先生に、何年振りかでお会いしました。実は、このお話ではなく、他の企画のお話をしに行ったのですが、いつの間にかAH(アティテュディナルヒーリング)の話になりました。水島先生が、ほとんどボランティア的に開かれているワークショップで、受講者が沢山いるけど、一度に多くの人が参加できるものではないので困っているというお話でした。では、そのワークショップを録画して、多くの方に見てもらえたら、ということから、早速、ワークショップを開いていただき、2日間にわたり録画したものが、今回の「DVD版 アティテューディナル・ヒーリング入門ワークショップ」です。
このAHを実践すると、本当に人生が変わると実感されるのです。このワークショップに、当社の出版物を印刷してもらっている会社の社員の一人に参加してもらいました。その日から、彼の人生は変わったそうです。ぜひ、みなさんもこのDVDを見て、アティテューディナル・ヒーリングを体験してみてください。
これも、DVDですが、今回初めての試みとして、本の表紙の裏にDVDを張り付けました。
今までの当社のDVDは、箱入りになっているのですが、本書は、外から見るとDVDが入っているようには見えません。開いてみると、ちょこっと表紙の裏についている、という体裁です。
先月出版したバニラエッセンスの著者と、荒井先生が富山で行われている「うつ病講座」を録画し、それをもとに作ったテキストとDVDです。バニラエッセンスは、約1か月前に出版しましたが、富山県の明文堂書店では、ベストセラーの1、2位を争っているそうです。
本を読み、DVDを見ることによって、うつ病の知識がよく分かり、どう対処していけばいいかのヒントが得られます。病院やクリニックの待合室で流していただいたり、企業のメンタルヘルスの教育に使っていただければ、とてもお役に立てると思います。もちろんご家族の方にとっても、患者さんにとっても、きわめて有益な内容です。
何人かの患者さんの座談会も収録してあり、かなりの録画時間のDVDとしては、
かなり値段を抑えてあり、お求めやすくなっています。
マスク不足、紙不足、医師不足
他人事のように見ていたインフルエンザですが、ついに日本の各地でも感染者が出てきて、他人事ではなくなってきました。5月22日からの日本精神神経学会も、会場が神戸だったこともあり、中止になりました。神戸はこの時期、どのホテルも満杯で、学会に参加する当社の社員も、神戸には宿をとれず、大阪での宿泊となっていました。学会が中止になって、ホテルをキャンセルし、編集会議に取ってあった広い部屋もキャンセルしました。神戸に行く予定であった社員は、神戸出張は取りやめになりました。
ちょうど同じ時期、サンフランシスコでアメリカ精神医学会が開かれていています。当社の社員もこれに参加する予定でした。ただこの状況で、どうしたものだろう、と心配し、あちらの様子を聞いてみました。シアトルに住む当社の翻訳者からは、あちらではマスクをしている人もほとんどいないし、みなさんあまり気にされていない、通常のインフルエンザと同じようなものと考えている、と連絡をもらいました。ニューヨークのギルフォードプレスの友人からも、同じ返事でした。また現在サンフランシスコにお住まいのWen-Shing Tseng先生からも、映画館や人の集まる所へ出掛けても、マスクをかけている人はいず、いつものように生活しているというご連絡をいただきました。それに、アメリカ精神医学会の総会も予定通りということでしたので、よし、行って来いということで、その社員は渡米いたしました。昨日、サンフランシスコから電話で、学会も普通に開かれていて、とても楽しくやっています、リバーマン先生のセッションも見学しました、という報告がありました。
それにしても日本とアメリカでは、ずいぶんと温度差があるようです。
感染は、人から人ですので、人口が密集している日本の都会のほうがアメリカより危険地帯なのかもしれません。アメリカより狭いところに人がたくさんいるのですから、より慎重にならざるを得ないのでしょうか。
たしかに満員電車に乗っていると、マスクをしないと心配になります。ところが、マスクがどこへ行っても売り切れているんです。楽天などでも、ほとんど売り切れ。これに便乗して、通常の10倍以上の価額で販売している業者もあります。
本当に不足しているのでしょうか。30年以上前に、紙不足といわれ、スーパーなどの棚からトイレットペーパーがなくなったことがありました。この時も、出版社には紙は入ってきていましたし、本当は不足していなかったようです。ただ、商魂たくましい人たちが、買い占めたりなどしたこともあるようです。昨年の初めにも、中国などでの紙需要が旺盛で、日本の製紙メーカーは、紙の値上げを決めました。出版社は大変苦しい時期にあるため、この値上げは大変脅威でした。ところが夏が過ぎると、紙が余ってきて値段が下がってきました。
それで、メーカーは、今度は、紙の生産をものすごく落として、値段を上げようとしているのですが、この不景気で、紙の在庫を減らしたにもかかわらず、値段が上がらない、という状況に製紙メーカーも困っているようです。紙不足も、実は、人為的なものなのですね。
さて、ワクチンがない現在、インフルエンザに対抗するには、自分の免疫機能を高めておくことでしょうか。栄養をとるためにこの時ばかりと食べ過ぎても、体重が増えるだけですし。ストレスがストレスフルに感じられるのは、感じる側の受け止め方ですので、自分の感じ方を変えて、暖かい気持ちでいられれば、免疫力も高まると期待されます。これには、今月発行しました「DVD版 アティテューディナル・ヒーリング入門ワークショップ」がお勧めです。
そのポイントは、常に暖かいぽかぽかした気持ちを持ち続けることのようです。人の話を、批判的に聴けば、こころは穏やかにはならず、いらいらしたり、怒りが生じてきたりします。そういう批判的な聴き方をせず、ぽかぽかした気持ちで、話を聞いたり、物を考えたりすると、こころは平和になります。何か批判したい気持ちが出てきたら、ぽかぽかした気持ちで、と心の中で繰り返しながら聞いていると、心が平和になります。というのが、私なりの解釈なのですが。
一度、人の話を5分間、暖かい気持ちで聴き続けてみてください。聞いている間も、一言もこちらからは口をはさむこともせず、批判的な顔をしないで、暖かい心でただただ聞いてみてください。また話が終わった後も、何の批判もせず、暖かい気持ちでうなずいていましょう。お子さんにも、これをしてみてください。いつも何か言うと文句を言われている子供たちが、何も言われず、暖かなやさしい顔で聞いてくれるお母さんを前にして、きっと自由にのびのびと話をしてくれるのではないでしょうか。そうすると、こちらの気持ちも、とてもぽかぽかに平和になることでしょう。
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