うつ病と飛脚
最近 うつ病について、雑誌やテレビなどで頻繁に報道され、一般の方にとってもかなりなじみのある言葉になっているようです。ここのところ相撲の世界の話題にも、うつ病とかうつ病一歩手前とかが上がっています。
そのようなことから、どうしてうつ病になるのですか、というような質問を、周りのかたがたから良くされます。脳の生物学的な働きなどを知っているわけではない一般の方に、いきなりシナプスとか神経伝達物質なんて話をしても、理解してもらうには大変ですし、かえってうつ病にたいしても誤解が生じてしまうかもしれません。そこで、私は以下のような話をするようにしています。
脳の中を、大きな湖に小さな島が無数に浮かんでいる、と考えてみてください。脳の中は、インターネットも電話線、無線もないので、島から島へ連絡するには、その間を泳いで渡る多くの飛脚(郵便配達さんたち)が必要です。ストレスが強くなると、何人かの郵便屋さんが、今日の水は冷たいので、疲れたからと一度水に入りかけて、またもとの島に戻ってしまうこともあります。そうすると、次の島に手紙や連絡が届かなくなるので、次の島の人たちがとても困るし、寂しがり、元気がなくなってしまいます。 この状態がうつ病になった状態です。そこで、お薬を飲むと、そのお薬が郵便屋さんが戻ってくる島の水辺のバリケードになり、郵便屋さんがバリケードに阻まれて戻れなくなります。じゃあ、仕方ない、がんばってあちらの島まで泳いでいくか、ということになります。そこで手紙が次の島の人に渡されるということになります。これが、うつ病の薬物療法です。精神療法(認知療法など)の場合は、この戻ってこようとする郵便屋さんに、君が向こうへ行かないとみんながこまるよ、水もそんなに冷たくないし、疲れているときは泳いで運動したほうが良いよ、意外と浅いから向こうの島まで行くのは簡単だよ、君がいくと向こうでうんと歓迎されるよ、などといって、郵便屋さんが戻るのをやめて向こうに行こうといく気にさせます
というような話をします。この説明は、以外と分かりやすいようで、皆さん、なるほど、といってくれます。脳の機能と病気との関連がある程度わかっているものについは、説明の工夫があるのですが、パーソナリティ障害をどう分かりやすく短時間で分かってもらえるように話をするか、今、思案中です。
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