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星和書店
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トラウマセラピー・ケースブック

トラウマセラピー・ケースブック

症例にまなぶトラウマケア技法

〈企画・編集〉野呂浩史

A5判 並製 372頁
ISBN978-4-7911-0938-8〔2016〕
本体価格 3,600 円 + 税

持続エクスポージャー療法、眼球運動による脱感作と再処理法 (EMDR) 、認知処理療法など、数あるトラウマ心理療法の中からエビデンスのあるもの、海外では普及しているが日本では認知度が低いものなど10の療法を、経験豊富な専門家が症例を通してわかりやすく解説。各療法の共通点、相違点を理解するのにも有用な書であり、どれがその患者(クライエント)さんに有効・最適なのか検討・選択するのに大いに役立つ。各療法を学ぶためのアクセス方法も各Partに記載。代表的な10のトラウマ療法の概要と治療の実際が1冊でわかる待望の書。

摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語

セラピストが10代のあなたにすすめるACTワークブック

悩める人がイキイキ生きるための自分のトリセツ

〈 著 〉ジョセフ・V・チャロッキ、ルイーズ・ヘイズ、アン・ベイリー
〈序文〉スティーブン・C・ヘイズ
〈監修〉武藤崇
〈監訳〉大月友、石津憲一郎、下田芳幸

A5判 並製 216頁
ISBN978-4-7911-0937-1〔2016〕
本体価格 1,700 円 + 税

ほとほと困惑している、恐ろしい、なんて自分は馬鹿なんだ、すごく不安だ、というような思いをしなくてすめば、人生はどのように変わるでしょうか。人生に おいては、うまくいくこともあるでしょうし失敗することもあるでしょう。そういう時でも、本書の練習課題に取り組むことで、より自由に、自信をもって生き ていけるようになります。
車の運転を覚えるとき、自動車教習所に通います。何も習わず、いきなり車を動かせば、悲惨な結果を招くでしょう。教習所で運転を習ってもまだ本物にはなれません。習ったことをもとに経験を重ねてスキルを身につけていくのです。
本書は、人生の教習所です。非常に複雑なあなた自身の心(マインド)について教習を受けることが出来るのです。
対処できないような感情が襲ってくると、強いストレスや痛みにさいなまれます。本書は、このような感情に対処するためのスキルを教えてくれます。辛い感情が 消えてなくなるわけではありませんが、それにどう対処すればいいかを見つけ出せます。このコツを覚えてしまえば、あなたは感情に左右されない勇者になれま す。困難な感情にも優雅に威厳を持って立ち向かえるマインドフル勇者になれるのです。

バイポーラー(双極性障害)ワークブック 第2版

バイポーラー(双極性障害)ワークブック 第2版

気分の変動をコントロールする方法

モニカ・ラミレツ・バスコ 著
野村総一郎 訳

A5判 並製 352頁
ISBN978-4-7911-0936-4〔2016〕
本体価格 2,800 円 + 税

多くの読者の支持を得ていたバイポーラーワークブック第1版が大幅に改訂され、第2版が2015年に出版された。本書は、この第2版の全訳である。
以前は躁うつ病と呼ばれていたバイポーラーディスオーダー(双極性障害)は、気分がハイになる躁状態と、気分が落ち込んでしまううつ状態を繰り返す障害であり、薬物療法などの脳科学的なアプローチだけで対処できるものではない。ストレスに対する対処法、考え方のくせの修正、対人関係や生活全体を見直してみるなど、まさに心へのアプローチこそが治療の重要なポイントである。
では、それをどのように行えばよいのだろうか? 患者さんやそのご家族、専門家、さらに一般の人にも分かりやすい形で明確に示してくれるのが本書である。
双極性障害と明確に診断された人だけでなく、ときどき「双極的な気分」になるという人、正常とされる範囲内で気分にむらがあり、ストレスにうまく対処できなくなる、といった人たちに対しても「気分の波」に対応できるように練習問題の内容が刷新されている。
本書は、気分の変動を自らコントロールしていくための明快な実践ガイドブックである。

精神鑑定への誘い

精神鑑定への誘い

精神鑑定を行う人のために、精神鑑定を学びたい人のために

増刷出来!! 好評発売中

安藤久美子

A5判 並製 208頁
ISBN978-4-7911-0935-7〔2016〕
本体価格 2,200 円 + 税

精神鑑定は他人事だと思っている精神科医に、ある日、依頼の電話がかかってくるかもしれない。
精神鑑定が行われる件数は、毎年増加し続けているため、これまで精神鑑定に携わってこなかった医師たちにも精神鑑定の依頼が来る時代になってきた。
本書には、精神鑑定の依頼の受け方から鑑定面接の仕方、鑑定書の書き方まで、精神鑑定を行うための必要十分な知識が分かりやすく解説されている。また、内容も面白く、やさしい記述で、精神鑑定がどのようなものであるかを小説を読むかのように楽しく理解することが出来る。精神鑑定をこれから行う医師にとっても、心理士やPSWなど精神鑑定に携わる方にとっても極めて役立つ心強いガイドブックである。一般の方にとっても、裁判員に選ばれる可能性のある現在、精神鑑定を易しく理解できる最適の書である。

病気じゃないからほっといて《電子書籍版》

摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語
《電子書籍版》

乱れた食行動を克服するために

アニータ・ジョンストン 著  井口萌娜 訳
〈推薦の言葉〉西園マーハ文

本体価格 1,800 円 + 税

食べ物や体型への執着から解放され、本当の自分を取り戻したいと願う、すべての女性たちのために!!
本書には、古今東西の神話やおとぎ話が散りばめられています。摂食障害治療の専門家である著者は、これらの物語がもつメタファーの力を借りながら、読者である女性たちに、障害を克服するための具体的な指針を提示していきます。物語の主人公に自らの姿を重ね合わせることで、読者は内なる自己がもつ叡智に気づき、自分自身を新たな視点で見つめ、力とビジョンを取り戻し、摂食障害から回復していくのです。



病気じゃないからほっといて《電子書籍版》

病気じゃないからほっといて
《電子書籍版》

そんな人に治療を受け入れてもらうための新技法LEAP

ザビア・アマダー 著、八重樫穂高、藤井康男 訳

本体価格 2,400 円 + 税

「私は病気ではない!」と治療をこばむ統合失調症をもつ人に、どうすれば治療を受け入れてもらえるのか。その答えが新たなコミュニケーション技法LEAPである。LEAPとは、Listen(傾聴)、Empathy(共感)、Agree(一致)、Partnership(協力関係)の頭字語である。治療をこばむ人の話を傾聴し、共感を示し、同意し一致点を見つけ、協力関係をつくることで、治療を受け入れてもらえるようになる。本書は、LEAPの用い方を詳しく解説する。LEAPにより、治療を拒否する人も、必要な治療や援助を受け入れ、その人なりの人生の目標に向かって歩むことが可能になる。本書の初版は、2000年に米国で出版され、2004年に日本語訳が出版された(『私は病気ではない』星和書店刊)。本書は、初版の内容を大幅に充実させた10周年改訂版の翻訳である。重度の精神疾患をもった人への我が国における治療と支援の取り組みが充実し、再入院が減少し、ご本人やご家族の目標達成に役立つことを願って本書が翻訳出版された。



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精神科治療学
本体価格  
2,880
円+税
月刊 精神科治療学 第31巻7号

特集:こころの病理をさかのぼる―精神医学における乳幼児期の意義―

乳幼児期の精神科的問題と成人期の精神疾患との関連が強く示唆されている今日、一般精神科臨床においても乳幼児期を取り巻く生物学的問題と環境を理解することが重要である。乳幼児期に視点を据えると、日常の臨床で成人の患者さんをより深く理解できるようになる。本特集では乳幼児期の精神科的問題が生涯にわたってもたらす影響について、さまざまな視点から取り上げた。乳幼児精神医学を学び一般臨床をスキルアップするために必読の特集号。
JANコード:4910156070764

臨床精神薬理
本体価格   
2,900
円+税
月刊 臨床精神薬理 第19巻8号

特集: 精神科治療における自殺:向精神薬のもたらすリスクとベネフィット/新規抗てんかん薬lacosamide

自殺は社会的に重要な問題で、背景には様々な精神疾患があることも指摘されており、精神科医療に求められる期待は大きい。薬物療法は自殺予防に多大な寄与をしてきたが、一方で向精神薬に関連する自殺関連事象のリスク増加や過量服薬による自殺既遂のリスク等も懸念されている。本特集では、精神科治療において向精神薬のもたらす影響をリスクとベネフィットの両面から論じた。
ISBN:978-4-7911-5226-1

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  今月のコラム

 
今月のコラム
双極性と境界性をめぐって―翻訳作業を支えた異国滞在
阿部 又一郎

筆者の研修医時代、フランスの人気女優オドレィ・トトゥ(Audrey Tautou)が主演した映画『アメリ』が日本でも大ヒットとなった。好みはあるだろうが、パリのノスタルジックな光景が、可愛らしい映像と音楽で仕上がった秀作である。作品のなかで、悪戯好きの主人公アメリによって、父親の庭先に置いてあった小人の人形がこっそり持ち出されて、世界中の旅先に連れていかれるシーンがあった。今回、星和書店での監訳書『双極性障害の対人関係社会リズム療法』(通称IPSRT)は、下訳の段階から発刊に至るまで、監訳者の手提げ鞄やパソコンの記憶媒体に入れられて様々な土地に移動して、さながら映画のなかの人形と同じような遍歴をたどってきた。

手のあいたときに進めようと日本で着手したはずの翻訳作業は、当時勤めていた職場や研究所の通勤範囲を越えて、海外研修先として滞在したウィスコンシンやパリ、帰国後は鹿児島そして再び東京へと戻っていった。その間、編集部から初校受理の返信をメールで受け取ったのは、確かルクセンブルクの投宿先であったと記憶している。英語に取り組む作業が、なかなか困難な環境に身を置いていたのもあるが、私の気質(言葉の本来の意味で)も影響して進捗はしばしば滞ってきた。環境を変えれば少しは作業がすすむかと思ったが、その逆で、日本語を見返すのさえ面倒になり、しばらく放ったらかしていた時期も何度か訪れた。IPSRTの原著者エレン・フランク(Ellen Frank)さんは、IPSRTをわずか一日の洞察の閃きで考案した、と序章で書かれていたが、筆者たちは紹介に果たして何年費やしたことだろう。時間を要したところでチーズやワインのように熟成されるわけでもなく、計画は何度も豆電球のように点滅していた。

星和書店編集部には、昨年秋に出版された『フランス精神分析における境界性の問題』の共訳本の出版に続いてお世話になった(ただ、こちらは逆に監訳者たちにまかせっきりで、筆者はほとんど何もしなかったのだが)。どちらも筆者の社会人大学院生時代、フランス給費留学に出発する前に立ち上がった企画であった。どれくらい前からというと、出発したのがリーマンショックの起きる前の2008年であるから、時代はひと回りである。紆余曲折はあったものの、どちらも無事に出版まで至って本当によかったと思う。フランス滞在中に、星和書店のなかで、さらにもうひとつ翻訳計画が持ち上がって監訳予定者からも連絡を受けていたのであるが、どうやらそちらは諸事情によりまだ途上のようである。

留学前の筆者(つまり精神科医になって10年目くらいまで)にとって、境界性と双極性の問題は、臨床において中心的位置を占めていた。要は、感情の病理をめぐって、さんざん患者にてこずらされていた。言い換えると、患者さんにてこずらされている自らの姿しか見えていなかったのだ(今でもまだ多少その名残があるが)。境界例とされる臨床事例が、軽微な気分変動を内包して双極スペクトラムの視点から治療に結びつけられる意義は、しばしば指摘されてきた。しかし、そのように指摘する本邦の先達たちの貴重な臨床的視座——例えば、佐藤裕史先生、内海健先生、神田橋條治先生ら——の助言の通り(筆者が専門医を取得するまでに発表されていた双極性障害と境界例に関する著名な臨床的考察である)真似てみたところで、ちっともうまくいかなかったのが邦訳作業に関わったきっかけであった。

実際のところ、どちらの翻訳作業も難渋して、途中でお蔵入りになりかけた。翻訳作業が完遂されたのは、間接的ながらも筆者のフランス滞在3年目に起こった2011年3月11日の東日本大震災のインパクトとその残渣によるだろう。というのも、震災後から、これらの計画が、文字通り再稼働し始めたからだ。他でも書いたが、あの日、出勤すると周りから、みな「おくやみ」の言葉を投げかけられ、はじめ何を言われているのかわからずに怪訝に思ったものである。直接的にカタストロフを経験していないと、かつて自分がそこにいた場所の記憶が失われていくような不思議な喪失感覚に襲われた。最近もまた、2015年11月13日に同時多発テロが生じたパリの映像をみるうちに、かつてそこにいた場所が失われたような、似た感覚を再び抱くことになった。従って、こうした翻訳作業には、訳者たちの喪失とノスタルジーがいくらか反映している、といえば言い過ぎだろうか。喪失を鍵概念とするIPSRTの邦訳サブタイトルに、臨床家と「クライアントのための」実践ガイドと付け加えたのは、いささかそんな思いもあった。

双極スペクトラム障害の提唱で知られる米国の精神科医ナシル・ガミー(Nasir Ghaemi)は、双極性(障害)が包含するポジティブな側面として、リアリズム、創造性、共感性、レジリエンスという4つの因子を掲げている。一連の訳出作業は、筆者にとって主体のそうした側面に目を向けようとする試みでもあった。IPSRTは、確かに完成度の高い心理社会的介入法であるが、原著の発刊から改訂もなくすでに10年以上が過ぎている。その間に発展してきた軽躁の評価をめぐる知見の蓄積と、社会の変容に伴う(対人関係の)欠如という問題の複雑さを前にすると、物足りなさを感じる向きもある。IPSRTと一緒に本邦に紹介しようと企図したのがAngstの軽躁チェックリスト(Hypomania Checklist)であった。今後、これらのツールや概念をどのように組み合わせて展開してゆけるのか、まだ議論と工夫の余地がある。

さて筆者は帰国後より、都内の大学病院精神科にて主に臨床と教育に従事している。行ってからよりも戻ってきてからの方が大変だな、と改めて痛感する日々である。臨床現場では、本邦でも治療経過の急進化・断片化をより一層、感じるようになった。入院日数の短縮に伴い、新たな残遺・慢性化兆候が硬直化したり、DSM-5の公刊に伴い、診断基準の変化と新たな治療要請に適応せざるをえなくなっている。そうしたなかで、異国の様々な場所を訪れた記憶とともに、翻訳作業を通じて得られたつながりもまた貴重である。これからも、借りものにもノスタルジーにもとどまらない固有の経験となるように、研鑽と出会いを重ねていきたい。

阿部 又一郎(あべ ゆういちろう)
精神科医。千葉大学医学部卒。上尾中央総合病院、都立広尾病院、栗田病院にて研修、勤務。 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神生理研究部を経て2008年フランス政府給費生として渡仏。医学博士。現在、東京医科歯科大学精神行動医科学分野助教。
監訳書『双極性障害の対人関係社会リズム療法―臨床家とクライアントのための実践ガイド』、共訳書『フランス精神分析における境界性の問題―フロイトのメタサイコロジーの再考を通して─』(いずれも星和書店刊)。
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