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星和書店
今月の新刊 next
トラウマからの回復

トラウマからの回復

ブレインジムの「動き」がもたらすリカバリー

スベトラーナ・マスコトーバ、パメラ・カーリー 著
五十嵐善雄、五十嵐郁代、たむらゆうこ 監訳
初鹿野ひろみ 翻訳

四六判 並製 180頁
ISBN978-4-7911-0852-7〔2013〕
定価 1,575 円(本体 1,500 円)


悲惨な鉄道事故で生き残った子どもたちに
ブレインジムが与えた驚くべき証拠!

著者マスコトーバは、悲惨な列車事故に遭遇した子どもたちに、ブレインジムを応用してトラウマ治療を行った。ブレインジムの動きが回復へと働きかける驚くべき証拠があざやかに記述されている。

記憶

記憶

ジョナサン・K・フォスター 著
郭哲次 訳

四六判 並製 296頁
ISBN978-4-7911-0853-4〔2013〕
定価 2,625 円(本体 2,500 円)


記憶の仕組みはどのようになっているのか? 記憶はなぜ大切なのか?

記憶研究の歴史から、様々な重要記憶研究まで、豊富な具体例を用いてわかりやすく解説。記憶に関する知識のエッセンスを本書に凝縮。訳者による豊富な脚注や用語解説ですぐれた入門書となっている。

スキーマ療法入門

スキーマ療法入門

理論と事例で学ぶスキーマ療法の基礎と応用

伊藤絵美 編著
津高京子、大泉久子、森本雅理 著

A5判 並製 400頁
ISBN978-4-7911-0854-1〔2013〕
定価 2,940 円(本体 2,800 円)


スキーマ療法は、スキーマ(認知構造)に焦点を当て、心理療法を組み合わせて構築された認知行動療法の発展型である。日本でスキーマ療法を習得し、治療や援助に使いたい方々の心強いテキスト。

10代のための人見知りと社交不安のワークブック

10代のための人見知りと社交不安のワークブック

人付き合いの自信をつけるための認知行動療法とACT(アクト)(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の技法

〈著〉ジェニファー・シャノン
〈イラスト〉ダグ・シャノン
〈序文〉クリスティーン・パデスキー
〈訳〉小原圭司

B5判 並製 136頁
ISBN978-4-7911-0855-8〔2013〕
定価 1,260 円(本体 1,200 円)


認知行動療法やアクセプタンス&コミットメント・セラピーを基礎にしたトレーニングで、人見知りや社交不安を克服。豊富なイラストや事例、エクササイズは、10代の若者向けに工夫されている。

  雑誌の最新号 next
精神科治療学
定価 3,024
月刊 精神科治療学 第28巻8号

特集: せん妄の診断と治療の現在 I

せん妄の診断と治療の決定版!今月と来月の2号にわたり、せん妄を特集する。せん妄は頻度が高く、患者のQOLを低下させ、医療者や家族の負担を増やし、転倒・骨折等の原因となり、結果として医療費の負担増にもつながるなどさまざまな問題を引き起こす。そのため、迅速で適切な対応が必要である。今月は、せん妄の全般的な診断と治療について取り上げた。特に、せん妄の病態生理、身体疾患や一般治療薬との関係、睡眠時随伴症との関係、低活動型せん妄について、向精神薬による対症療法、また非薬物療法的アプローチも取り上げた。適切なせん妄の診断と治療のために必読の特集。
JANコード:4910156070832

臨床精神薬理
定価 3,045
月刊 臨床精神薬理 第16巻9号

特集: 様々な気分障害患者を今どう治療するか

2013年5月にDSM-5が正式発表されたことにより、今後気分障害の診断・治療はどう変わるのか。本特集では、DSM-IV-TRからの変更点を概説し、非定型うつ病、軽症うつ病、双極性の要素を持つうつ病、服薬アドヒアランスが不良なうつ病、思春期のうつ病、寛解したうつ病患者のその後、自殺を繰り返すうつ病など様々なケースについて、最新の治療戦略を論じた。
ISBN:978-4-7911-5191-2

今月のコラム
今月のコラム
「コラム」と「橋渡し(ブリッジング)」
肥前精神医療センター 壁屋康洋

 編集部からこのたびのコラムの依頼を受けて悩みました。専門領域以外の本をほとんど読まず、関心の狭い私に、広く一般向けの文章が書けるだろうか? 悩みながら「こころのマガジン」のコラムを十数編読みました。どの著者も広い読者に向けた平易な内容から始め、巧みにご自身の著書へとお話をつなげられているではありませんか! とても私には書けそうにないと頭を抱え込んでいて、ふと気付きました。コラムとは専門的知見と一般的な関心とのブリッジングではないだろうか。私は近頃NEAR(neuropsychological educational approach to cognitive remediation;メダリアら,2008)を病棟で実施していますが、NEARでは(1)コンピュータソフトを用いた認知リハビリテーションの時間に加え、(2)コンピュータで訓練していることと、日常生活とを橋渡しするブリッジングセッションを重視します。コンピュータでのトレーニングだけでは参加者がその意味を感じにくく、モチベーションが続きにくくなるため、ブリッジングセッションでは、トレーニングしていることが日常生活場面でどのような働きをしているのか話し合い、それら二つの橋渡しを行います。「こころのマガジン」のコラムは、それぞれの専門領域の著書と、広い読者の身近な話題とを橋渡しするという意味で、ブリッジングの役割を果たしています。

昨年『触法精神障害者への心理的アプローチ』を星和書店から出版させて頂く際、オビに載せた〈多職種チームアプローチ〉〈他害行為の内省/罪悪感〉〈アンガーマネージメント〉〈リスクアセスメント〉〈衝動性へのアプローチ〉という5つの言葉のフォントサイズと、それぞれの言葉を囲む楕円の大きさの調整で編集部と何度もやりとりしました。私のつまらないこだわりですが、〈多職種チームアプローチ〉が中心で、他の4つが周りを回っているような視覚効果を狙いました。多職種チームアプローチが中心にあって、他の技法はその周囲を回る衛星のようなイメージです。実際そのように見えますでしょうか。

多職種チームアプローチ

〈多職種チームアプローチ〉が他を橋渡しするもので、同時に本書の中でも、医療観察法医療の中でも最も大事なものです。多職種チームアプローチは医療観察法医療だけでなく、精神科医療だけでなく、さまざまな領域で必須のものとなっていることでしょう。臨床心理士のプログラムと看護師の日々のケアとを橋渡しする、薬物療法と作業療法を橋渡しする……。しかし多職種の人間関係の中での連携は、うまくいくときは非常に良いのですが、苦労することも少なくありません。本書を読んで下さった方から「壁屋さんの悩んでいたことまで書いてあったので面白かった」という感想をもらいましたが、プロセスでの苦悩も含めて多職種の橋渡しの実際(他職種から橋渡ししてもらうことも)を書いています。言われてみると、できあがった理論や技法について書かれた本は多いですが、そこにたどり着くまでのプロセスや著者の思考の流れを書いた専門書は稀かもしれません。それが現場で取り組む人たちが体験する苦労と、うまくいった多職種チームアプローチや個々の治療プログラムとの橋渡しになれば、と思います。

コラムで橋渡しをしようとすると、このコラムの読者がどんな方か、ということを考える必要があるかもしれません。コラムに限らず、誰かに何かを説明するときには相手の関心と理解度を測る必要があるでしょう。拙著で書いたような医療観察法医療のことを、医療や矯正と関係のない領域の方に話す機会は稀ですが、先日、新聞社の取材を受けることがありました。医療観察法医療や治療プログラムの概要について説明する過程で、私がセルフモニタリングに触れたところで記者が「えっ?!」と驚きました。私は記者が驚いたことに驚きました。セルフモニタリングは私にとっては治療のステップの1つとして当たり前のものになっていましたが、精神科医療のことを知らない新聞記者から見ると、統合失調症患者が自分の症状を自分で観察し、記録を残すということは思いがけないことのようでした。それに気付いた私は、精神科医療への偏見を和らげるチャンスだと思い、「統合失調症も慢性疾患ですから、高血圧や糖尿病の人が自分で症状をチェックして自己管理するように、統合失調症の方も症状の観察と自己管理をします」とたたみかけました。セルフモニタリングに記者の驚きと関心が向かった瞬間をチャンスととらえて橋渡しをしたところ、記者は「へぇ〜」と感心して話を聞いてくれました。橋渡しは容易ではないけれど、日常の小さなところに橋渡しの種が転がっているのでしょう。種を目ざとく見つけ、相手の関心や日常生活とつなげる橋渡しを行うこと、これは臨床にもつながることです。コラムを執筆しながら、改めて臨床技術としての橋渡しの技術を高めていきたいと願うところです。


〈文献〉
壁屋康洋 2012 『触法精神障害者への心理的アプローチ』 星和書店
Medalia,A., Revheim,N., Herlands,T., 2002 Remediation of Cognitive Deficits in
  Psychiatric Patients―A Clinician's Manual.
中込和幸・最上多美子(監訳)2008 
  『「精神疾患における認知機能障害の矯正法」臨床家マニュアル』 星和書店

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