http://www.seiwa-pb.co.jp/htmlmail/109.html
星和書店
今月の新刊 next
DIEPSSを使いこなす

DIEPSSを使いこなす

改訂版 薬原性錐体外路症状の評価と診断−DIEPSSの解説と利用の手引き−

稲田俊也

B5判 並製 92頁
ISBN978-4-7911-0802-2〔2012〕
定価1,995円(本体1,900円)

本書は、一般的な錐体外路症状の治療や誘発薬剤などに関する総説的な内容を割愛し、臨床現場で実際にDIEPSSを使いこなせるような診断学的な解説に重点を置いた、DIEPSSの純粋な解説書である。

認知行動療法におけるレジリエンスと症例の概念化

認知行動療法におけるレジリエンスと症例の概念化

ウィレム・クイケン、クリスティーン・A・パデスキー、ロバート・ダッドリー
大野 裕 監訳 荒井まゆみ、佐藤美奈子 訳

A5判 並製 516頁
ISBN978-4-7911-0805-3〔2012〕
定価4,725円(本体4,500円)

症例の概念化は、認知行動療法において中心的な位置をしめている。症例の概念化がきちんとできれば治療は半分以上進んだとさえいえる。その症例の概念化を体系的にまとめたのが本書である。

カップルの認知療法

カップルの認知療法

フランク・M・ダッティリオ、クリスティーン・A・パデスキー
井上和臣 監修 奈良雅之、千田恵吾 監訳 森 一也、高橋英樹、上江昇一 訳

A5判 並製 160頁
ISBN978-4-7911-0804-6〔2012〕
定価1,995円(本体1,900円)

困難を抱えるカップルに接する実践家に向けて、夫婦・カップルのための認知的アプローチを詳述。カップルへ認知療法の理論、アセスメント、治療の具体的なステップを詳細な事例と共に解説する。

  雑誌の最新号 next
精神科治療学
定価 3,024
月刊 精神科治療学 第27巻3号

特集:精神科臨床における「頭部外傷後遺症」の評価とマネジメント

頭部外傷後の脳の病理学的変化、認知機能障害、精神症状と行動変化、軽度外傷性脳損傷(MTBI)、PTSD、画像診断、薬物療法、認知リハビリテーション、小児・高齢者・スポーツによる場合、精神障害者と頭部外傷、頭部外傷と認知症との関係、裁判と損害賠償請求など、頭部外傷後の精神障害のさまざまな問題点を取り上げた。「高次脳機能障害」臨床の指針となる特集。

臨床精神薬理
定価 3,045
月刊 臨床精神薬理 第15巻4号

特集:レストレスレッグス症候群の実態と新たな治療

レストレスレッグス症候群(RLS)は、有病率は高いものの医療従事者の中でも認知度が低い。2012年1月に本邦でRLS治療薬としてgabapentin enacarbilが承認されたことをうけ、レストレスレッグス症候群の疫学、病態、診断、治療について紹介し、gabapentin enacarbilの薬理プロファイルから治療も網羅して特集した。
ISBN:978-4-7911-5174-5

今月のコラム
今月のコラム
いつも,ほめて,ニコニコ
渡部和成

私は,患者・家族心理教育を中心に据えた統合失調症治療の専門家として,統合失調症治療に関する本を星和書店から幸運にも4冊(「統合失調症から回復するコツ―何を心がけるべきか」(2009年),「統合失調症に負けない家族のコツ―読む家族教室」(2010年),「統合失調症からの回復を願う家族の10の鉄則」(2011年),「統合失調症患者を支えて生きる家族たち」(2012年))出版させてもらっています。その効果もあってのことでしょう,統合失調症の患者さんとご家族が,全国28都府県から入院や通院の別なく私の治療を求めて東京都西部の八王子市にある私が勤める病院(恩方病院)に来られています(注:2012年3月15日をもって恩方病院を退職。同年4月より北津島病院〔愛知県〕院長代行就任予定)。東京都周辺を始め,北は秋田県や宮城県,南は福岡県や大分県からという具合に,遠方から集まって来られています。

一般的には,遠方からの患者さんについては,入院治療し退院した後は患者さんの住居地の病院やクリニックを紹介して,そちらに通院してもらうことが多いのだろうと思いますが,私の場合,このようなケースは実は少ないのです。多くの退院した患者さんが,通院治療をするために遠方から私の元に来られています。

ある1週間の外来診察日(週2日)に私の元に来られた患者さんの住居地を調べたのですが,その結果は,病院のある八王子市が1/3,東京多摩地区が1/3,東京23区・関東地方・東北地方・中部地方が1/3となっていました。つまり,私の通院患者さん(9割が統合失調症の方で,その内の8割が私による入院治療を受けて退院した後通院している方)の2/3は,遠方から来られていることが分かりました。我ながら驚きでした。

以前は,お金も時間もかかりますし全国どこでも同じ薬をもらえるのですから,わざわざ遠方から来られなくても良いのではないかと思うこともありましたが,最近は,そうではなく,希望されるのならぜひ退院後は私の元に来て下さいと,患者さんとご家族に話をするようにしています。

その理由は,統合失調症治療の成果は,単なる薬物療法と病状をチェックするだけの診察では得られにくいと考えるからです。私は,薬物療法のキーポイントとして,薬が効くにはそのための素地が患者さんになければならないと考えています。つまり,患者さんに薬が効くための素地ができているかどうかで,同じ薬・同じ用量であっても効いたり効かなかったりする,つまり薬物療法の成否が決まるということです。また,病状をチェックするのみの診察(精神療法)では,患者さんにそのような素地はできないだろうと思っています。ですから,統合失調症治療では,患者さんと医師との共同作業で素地を作り出し維持していくという治療法が必要になってくると思います。

素地とは,言い換えればレジリエンス(抗病力,回復力,生きる力)です。すると,そのような共同作業をする治療法は,医師が患者さんのレジリエンスを高める指導を患者さんとご家族にしていくことだと言えます。レジリエンスが高まれば,患者さんは自分の症状を適切に表現でき薬について相談できるようになりますので,医師は,その表現を受け止め理解し,薬を適正なものにすることができますし,その薬はうまく効くようになります。私は,患者さんが患者心理教育を介して病状への対処法を身につけ安心でき周囲の人々に相談できるようになること(私が提唱する「教育‐対処‐相談モデル」)によって,レジリエンスが高まると考えています。具体的には,私は患者さんに「幻聴や妄想は,患者さんがそれらを現実と区別できそれらに振り回されなければ,あっても良い。うまくそれらに対処できれば大丈夫だ」と説明しています。レジリエンスが高まって病気をうまく管理できるようになれば,患者さんは希望と目標を持って人生を生きて行けるようになるだろうと思います。

私は,このようなことを意識しながら患者さんの診察を進めて行くようにしています。私は,診察の時はいつも,ニコニコして患者さんの話を聴き,病気に打ち克とうとしている患者さんが頑張っていることをほめて,患者さんを理解し相談に乗るようにしています。ほめてニコニコしていることは,患者さんの安心を高めるでしょうし,そのような医師の態度が,統合失調症治療では大事だろうと思っています。

ですから,「どうぞ遠方からでも私の外来診察を受けに来てください」と,患者さんと家族に話しています。 いつも,ほめて,ニコニコです。


配信停止希望