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星和書店
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思春期の精神科面接ライブ

思春期の精神科面接ライブ

こころの診察室から

獨協医科大学 越谷病院こころの診療科教授
井原 裕

四六判 並製 228頁
ISBN978-4-7911-0800-8〔2012〕
定価1,995円(本体1,900円)

精神科診察室での面接が実況中継さながらに会話体で記述されている。現場の緊張感をそのままに、思春期患者の面接の真髄を体感できる。精神科面接における大事なポイントをつぶさに解説。

人間関係の悩み さようなら

人間関係の悩み さようなら

素晴らしい対人関係を築くために

デビッド・D・バーンズ
野村総一郎 監修 中島美鈴 監訳 佐藤美奈子訳
四六判 並製 496頁
ISBN978-4-7911-0799-5〔2012〕
定価2,520円(本体2,400円)

世界的なベストセラー「いやな気分よ、さようなら」の著者バーンズ博士が、周りの人との人間関係の悩みや問題に対して、認知療法に基づき画期的な解決法を提案する。わかりやすく効果的である。

統合失調症患者を支えて生きる家族たち

統合失調症患者を支えて生きる家族たち

ほかの家族は、どのように統合失調症をもつ患者さんの回復を支えているのか

渡部和成
四六判 並製 160頁
ISBN978-4-7911-0798-8〔2012〕
定価1,575円(本体1,500円)

統合失調症の患者さんを上手にサポートしている素晴らしい25家族を紹介。彼らの日常行っている患者さんとの付き合い方を「真似する」ことが、患者さんが回復に向かえる重要なカギとなる。

  雑誌の最新号 next
精神科治療学
定価 3,024
月刊 精神科治療学 第27巻2号

特集:精神科医の多剤併用・大量処方を考える II

統合失調症の多剤併用、大量処方が解決されぬまま、最近は抗うつ薬や抗不安薬、さらには気分安定薬や抗認知症薬の処方も問題となっている。安易な薬物療法や大量処方は自殺を目的とした過量服薬や身体救急にまで影響が及ぶ。精神科医の治療が精神医学界以外で大きな問題となっていることを精神科医は十分知っておくべきであろう。本特集では、多剤併用、大量処方の現状を知り、どのような対応が可能かについて考える。

臨床精神薬理
定価 3,045
月刊 臨床精神薬理 第15巻3号

特集:新規抗認知症薬galantamineの薬理と臨床

新しい抗認知症薬galantamineについて、基礎薬理作用や臨床効果の特徴、使用経験など幅広く紹介した特集。また新規認知症治療薬が登場したことで認知症治療がどのように変化するかを展望している。
ISBN:978-4-7911-5173-8

今月のコラム
今月のコラム
危機を生きぬく力とは?
つしまメンタルクリニック 津島豊美

寒い日々が続いていますが、大震災の被災地の仮設住宅では水道も凍るほどの寒さとのこと。御高齢の方々が不自由な生活を送っておられることを思うと、心が痛みます。震災直後は私の住む埼玉でも計画停電で毎日3時間ほど電気が止まり、随分不自由な思いをしましたが、そういう時だからこそ!患者さんが不安にならないようにと停電中もクリニックを閉めずに、真っ暗な中、懐中電灯をつけ湯たんぽで部屋を暖めながら診療をつづけました。なので、この冬は計画停電がないというだけで、随分と幸せな気持ちになれます。

震災以後、危機を生きぬく力って何だろう?と考えながら過ごしていた昨秋のある日、日本精神神経科診療所協会(日精診)の災害支援チームの一員として石巻へ行った時のことです。支援のつもりが逆に迷惑をかけることのないようにと事前に日精診災害支援マニュアル(4月以降改訂されていない)に目を通すと、「安全のためマスク+メガネ+長靴着用のこと」とあり、「もう瓦礫や魚の死骸は片付いたであろう今でもこの指示は生きているのか??」と疑問に思いつつも、忙しい現地事務局に電話するのも気が引けて、心理スタッフ2名と計3名でマスク+メガネ+長靴姿で前日夜間診療終了後、仙台へ。早朝、支援者の集合場所に着くと、猪木の闘魂Tシャツ+スウェット+運動靴という軽装で現れた現地スタッフのTさんが、さっそく不思議そうに「なんで長靴履いてるんですか?」と。「マニュアルに書いてあったから…」と私が小さい声で答えると、「あ〜! 防寒用ですか! さすがですね〜」とTさん。つづいて「なんでマスクしてるんですか?」に、「だからこれもマニュアル通りに…」と答えると、「あ〜! インフルエンザ予防ね! 言おうと思ってたんですよ〜!」と。場違いな格好で現れた私たちに対し、Tさんはひたすら肯定的なジョークで返してくれました。もちろんこれは「もうそれほど危険ではないので長靴もマスクも必要ないですよ。真面目なんですね(笑)」という意味ですが、そうストレートに言われるよりもずっと受け入れられている感があり、私たちはすっかりうちとけて共に活動することができました。車で2時間かけて石巻へ入り、手分けして仮設住宅訪問と来談者面接を行いましたが、あいにくその日は不在が多く、私たちがお会いできたのは3件のみ。その後、やることないけど邪魔にならないようにとじっとしていたら、現地スタッフのHさんが、他地区からの支援者を津波の被害現場へ連れて行くから一緒に行こうと誘ってくれたので、あべこべに接待されても…と恐縮しつつ同行しました。現地は地盤沈下して水たまりがあちこちにできていましたが、車1台通れるくらいの工事用道路ができていて、実際に家々が流された現場へと入ることができました。1階部分が骨組みだけになった家がぽつりぽつりと残る地平に立つと、ここで多くの人が抵抗できずに流されたのだということを生々しく体感し、心よりも身体が先に反応して不意に涙が出てきました。ボランティアで来たのに現地の人の前で泣くなんて!と必死でこらえていたら、それに気づいたHさんの頬にもひとすじの涙が。…そうか、Hさんは、現地の人々の体験を私たちに頭で理解するだけでなく感じてほしかったんだ。これは一瞬の出来事でしたが、Hさんと私との間に深いつながりが生まれたように、私には感じられました。そしてマスコミではふれられなかった現地の混乱と苦悩について細かく語るHさんの声に耳を傾けながら、私たちは現地事務所へと帰ってきました。

石巻の仮設住宅は世帯単位での入居のため各棟に住む人々は全く知らない人同士。そのため皆、ボランティアの支えによりかろうじて孤独にならずに過ごせているという様子でした。ある高齢の御婦人が「半壊した家だけどまだ住めるから帰りたい。でも住んでいいのか、高台へ引っ越さなければいけないのか、国の方針が決まらないから…」とおっしゃっていたように、先が見えないのも大きな不安要素となっているようです。東北を孤立させることのないように、全国から息の長い支援をつづける必要を強く感じた一日でした。そして、自らも被災者でありながらユーモアを忘れず地道で柔軟な活動をつづけ、人と人とのつながりを育みつづけている現地のメンタルクリニックのスタッフのことを、私は心から賞賛したいと思いました。危機を生きぬく力とは、柔軟性と豊かなコミュニケーション力だ! そう確信させられた体験でした。

日精診の災害支援は3月までつづくので、冬の間にまた行ってこようと思います。 (なお、この流れで強引に結びつけるのもどうかと思いますが、柔軟性や豊かなコミュニケーション力とは、安定した愛着関係により育まれる力です。詳しくは拙訳書『愛着と精神療法』(ディビッド・J・ウォーリン著)をご参照いただければ幸いです。)


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