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■特集 家族のリカバリーをどう支援するか
第1章 総論:今,求められる家族支援とは?
●なぜ家族支援か――「援助者としての家族」支援から,「生活者としての家族」支援,そして家族のリカバリー支援へ――
大島 巌
本誌特集「家族のリカバリーをどう支援するか」の総論として,「なぜ家族支援か」という根本的課題に対して,「援助者としての家族」支援,「生活者としての家族」支援,そして「家族のリカバリー支援」という観点から,家族支援のあり方を検討した。その検討に際して,家族支援の種類,家族支援のプロセスと導入方法,専門職との関係のあり方について整理して,その方向性を提示した。
キーワード:家族支援,家族ケア,援助者としての家族,生活者としての家族,家族心理教育
●家族が期待する支援
川﨑洋子
高齢化した家族と当事者の支援がここにきて大きくクローズアップされる背景には,病院から地域へという精神医療の大きな潮流の中で,精神障がい者が地域で生活することが多くなり,特に家族とともに暮らす精神障がい者が増えたことが挙げられる。精神障がい者が地域で生活するに必要な受け皿の整備がされていない状態で,高齢の家族が当事者の日常の世話から経済的なことまで支援しているのが,現状である。しかし,ここには課題が多い。家族関係から病気の再発,家族も年金生活者が多くなり,経済的負担から医療を中断したり,家族は身体的,精神的な病気を発症するなど,いまや家族への支援が不可欠となっている。家族支援により,家族が自分らしい生活を取り戻し,元気になることが,精神障がい者の病気の回復にもよいというデータもある。具体的に必要としている家族支援について,家族の立場で述べてみたい。
キーワード:家族の負担,未支援状態の家族,家族の孤立化,精神保健福祉法の見直し,差別偏見の問題
●あるべき家族支援サービスネットワーク――英国の家族支援の動向――
伊勢田堯、岡崎祐士、針間博彦、西田淳志
英国の家族支援サービスのわが国と比較して際立った特徴は,国全体の基本政策,福祉政策,精神保健政策の中で,主要なサービスの1つとして位置づけられ,包括的なサービス開発に挑戦していること,しかも,サービスユーザー・家族の要望に真摯に耳を傾けて進化させていることが挙げられる。国としても,ケアラー(家族など)は国民の10人に1人と推定し,ケアすることと仕事や人生を楽しむことのバランスが取れることを目指して,ケアラーを国家的に支える政策を展開している。精神保健の領域では,家族を病因と見なし,治療からも排除してきた歴史的誤りを認め,精神保健改革の7つの国家目標の1つに選び,家族支援を重点的に取り組んでいる。そして,地域ケアが発展するにつれて,家族は治療のパートナーとして位置づけられた。そして,家族への医療的専門的支援に留まらず,生活全般を支援するサービスを展開している。本小論では,英国における包括的な家族支援サービスの概要を紹介する。
キーワード:英国,ケアラー支援,歴史的誤り,精神保健改革,包括的支援
第2章 家族同士による支えあいの工夫
●家族会の維持と運営――情報機器利用のコミュニティづくり――
岡嵜清二
新宿フレンズにおいては高齢化や会員の不足といった問題はあまり感じられない。それは,会員,役員ともインターネット,メールなどの情報機器を使い,働きながらの活動を行っているためと思われる。会員の多くは,定年後に時間の余裕ができたので家族会に入ろうというのではなく,抱える患者さんをいかに早く回復させるかを参加の目的にしている点で共通している。反面,仕事を持ちながらの活動では週日,日中の活動が難しい状況でもある。
役員の平均年齢は63歳であるが,仕事の現場でコンピュータ,情報機器を利用していることから,さまざまな活動が可能になってきている。また,インターネットを通しての会員募集は全国的な地域に広がりを見せている。さらに当事者をも含めた会員募集も新宿フレンズの特徴であろう。こうした背景を持った家族会の活動内容はいかなるものか,今後に向けての活動とはいかなるものか,あるいは家族会のあるべき姿を探った。
キーワード:情報機器利用のコミュニティづくり,高齢化,プライバシー侵害,復習教材,制度改革
●家族による相談支援
飯塚壽美
精神疾患に苦しむ家族の姿に初めて遭遇したときの戸惑いは,体験する以外とても理解できないことでしょう。予備知識のないままに翻弄され迷い続けて,ようやく他の誰かに相談をすることから,家族は外の世界へとつながっていきます。仲間の中で羽を休めて体験を語ることから,回復が始まるでしょう。
まったく同じ境遇などはなく,いろいろな体験を語り合うことで,最適な対処法を自ら発見していくのですが,自己の体験を客観視できるようなサポートこそが,家族会で可能なことではないでしょうか。
電話による支援では,初めの対応が大変大事であり,相談者が殻を閉じてしまわないような受け止め方が求められます。これからの相談支援では,権利条約批准の時代を意識した対応も求められ,担当する家族のリカバリーも図れる活動を目指したいです。
キーワード:家族による家族相談事業,電話相談,ナラティヴ・アプローチ,ピアサポート,障害者権利条約
●家にひきこもりがちな精神障害者への訪問活動,居場所の提供
小松正泰
退院はしても,大半の精神障害者は結婚や就労はおろか,語り合う友人も失い,支援センターやデイケアなどにも通えず,悶々とした日々を送っている実態は知られていない。彼らは障害者支援諸施策からも取り残され,その家族ともども人知れず地域の片隅でそっと生きているのである。
孤立しがちな彼らを支援するために,川崎市の家族会連合会(NPO法人あやめ会)が「窓の会」活動と名付けて進めてきた試行錯誤の15年の経過を辿り,その成果と残る課題などについて記したいと思う。
キーワード:ひきこもり,戸別訪問,気軽に利用しやすいプログラムの提供
●家族による家族学習会プログラム
岡田久実子
重度精神疾患・精神障害を持つ人の家族は,予備知識もない中でこの病気に直面し,さらには自分自身の中にある精神疾患に対する強い偏見から,なかなか病気を受け入れられず,隠すことに必死で,助けを求める力も失ってしまうことさえある。そのような家族にとって,同じ体験をした家族との出会いは,「私一人ではなかった」という思いに救われ,ほかでは話せないような苦しい体験を吐き出し,自分らしさを取り戻すきっかけともなる。それが家族会の1つの大きな役割であると思う。これからの家族会は,家族が家族を支援するという家族会本来の機能(セルフヘルプ機能)を取り戻し,精神保健福祉の向上に力を発揮できるような社会的役割を担う団体として大きく成長していくことが期待されている。そのための取り組みの1つとして,2007年から実施されている「家族による家族学習会」プログラムを紹介する。
キーワード:Family to Family,家族学習会,体験的知識の共有,エンパワメント,家族会
●「兄弟姉妹の会」における支え合いの工夫はピアな関係性から
神谷かほる
精神障害者と同時代を生きるきょうだいは,ライフコース上の問題を抱えている。セルフヘルプグループの「兄弟姉妹の会」は,きょうだい同士のピアな関係性の中で語り合うことによって相互支援を行っている。「兄弟姉妹の会」の語り合いはナラティブ・セラピーに近く,否定的な部分を好意的な聴取者の前(ピアな関係性)で明らかにすることで,各人各様の物語の書き換え作業が行われエンパワメントされていく。
「兄弟姉妹の会」と「女性だけの語り合い」の支え合いの工夫を,例会風景などを交えながら具体的に紹介した。親とは異なる問題を抱えるきょうだいには支援が必要であるとともに,異性の本人から被害を受ける女性のきょうだいへの支援の必要性を指摘した。精神障害に関する早期教育,本人と家族への早期支援・早期介入は古くて新しい課題である。
キーワード:精神障害者のきょうだい,セルフヘルプグループ,ピアな関係性,ナラティブ・セラピー,エンパワメント
第3章 家族支援ネットワーク:それぞれの現場における考え方と実践
●精神科診療所から発展した家族支援のネットワーク
上ノ山一寛、上ノ山真佐子
2009年9月に公表された「今後の精神保健医療福祉のあり方等検討会」の報告書では,「地域を拠点とする共生社会の実現」がうたわれている。「精神保健医療福祉の改革ビジョン」で掲げられた「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本理念を一歩進めたものと考えられる。その中の重要項目の1つに「家族支援」がある。家族支援を行うためには,家族が診療の場に登場しやすい状況を作っていく必要がある。精神科診療所はアクセスが便利で,気楽に受診できることから,家族支援の領域においても,精神科診療所の果たす役割は大きいと考えられる。精神科診療所において家族支援に取り組むことは,早期支援や早期介入,あるいは危機介入や再発予防において治療的に意味があるだけでなく,当事者・家族・専門職・市民が共に支えあって,「地域を拠点とする共生社会の実現」をしていくためのモデルを提示できると考えている。
キーワード:家族支援,精神科診療所,NPO法人,支えあう共生社会,SST
●訪問による家族支援の新たな方向性
英 一也,伊藤順一郎
当事者の地域生活の質の向上を実現するにあたって,家族同居率の高いわが国で家族支援が重要であることは論じるまでもない。しかし,「来るのを待つ」姿勢では支援の届かない家族がおり,また,そのような家族の中にこそより切実な対象者が含まれることも事実である。したがって,当事者のみならず家族自身への訪問による支援が必要と考えられる。さらに,そのような訪問による家族支援の方向性として,家族自身のリカバリーを積極的に支えることが結果的に本人の自立を促してゆく側面を看過すことはできない。本稿では,ACT‐Jにおける家族支援の実践を例として,訪問による家族のリカバリー支援の意義と必要性に検討を加えた。
キーワード:家族支援,訪問,リカバリー,ACT,家族心理教育
●入院という状況での家族支援
伊藤順一郎、山本啓太、堀内亮、青木和貴、田島瑛子、小河原麻衣、宮地麻美
国立国際医療研究センター国府台病院はこの数年,組織の変更,病床削減など病院自体の大きな方針の転換の時期にある。これらの転換は,精神科臨床にもさまざまな変化を与えたが,大きな変化の方向は急性期に特化した入院医療とそれを支えるリハビリテーション,地域支援づくりである。家族支援もその文脈の中で現在行われているが,一方でここには平成7年以来の家族心理教育の歴史がある。多職種チームで行う心理教育を経験したスタッフは,今やさまざまな部門で働いている。その結果,多くのスタッフが共通の認識を持ち,顔の見える関係の中でネットワークをつくり,それぞれの場面で家族支援に関わるようになった。家族心理教育の場で獲得した技能や考え方は,一般の臨床における家族への関わりの中にも生かされているようである。その様子を看護師やソーシャルワーカーの発言からまとめた。
キーワード:家族心理教育,多職種チーム,精神科救急病棟,看護,ソーシャルワーク
●福祉についての相談支援――兵家連の相談事業――
本條義和
兵家連の相談事業としては,電話相談事業と精神障害者相談員による相談(地域相談)活動があるが,まず最初に精神障害者を身内に抱える家族自身による相談活動の意義について述べたい。次に,兵家連事務所内で毎週土日祝日を除く月曜から金曜の午前10時~午後3時まで実施している電話相談について,発足の経緯,相談体制,相談実績などについて述べたい。第3番目に,兵庫県独自の県知事委嘱の精神障害者相談員制度創設の経緯や,制度の概要について述べたい。また,相談員の養成研修および委嘱については県が行い,相談活動については個人が市町と連携し行っているが,養成研修の講師派遣やスキルアップ研修実施など兵家連も係わっているところがあるので,それについても述べることとする。
キーワード:家族相談,電話相談事業,精神障害者相談員による地域相談活動
●地域における自殺関連相談への対応――本人・家族支援ネットワークのために――
黒澤美枝
岩手県精神保健福祉センターにおける自殺対策活動から,自殺関連相談への対応事例を紹介した。自殺未遂者は一次二次救急機関で十分に検知されていない可能性があるため,当センターでは,警察が対応した段階で本人や家族へパンフレットによる相談勧奨を実施しており,専用電話で対応している。自殺多発地域では,一次二次救急医療スタッフとの連携による相談勧奨を実施しており,地域との協力を今後の課題としている。また,自殺が疑われた全検案時に,警察から自死遺族に対してパンフレット配布による情報提供を行っており,県内全保健所の自殺関連相談窓口と7カ所の自死遺族交流会に連携している。当県の自殺関連相談対応の推進には,相談経路等のしくみづくりとケースマネジメント・精神保健福祉相談技法の研修や評価を結びつけた事業の継続的実施が必要である。さらに,多くの方々の積極的な参加と,地域の精神保健の実情に応じた対策が重要である。
キーワード:自殺対策,自殺未遂,自死遺族,相談,精神保健福祉センター
●ボランティアによる家族支援
岩崎廣司
地域社会の変化が大きく,地域での連帯感が希薄になる中で,「障害があっても普通に参加して暮らせるまちづくり」をすすめる上では,障害のよき理解者となって,当事者との普通の出会いとかかわりを大切にする市民の福祉ボランティアの活動が欠かせない。
精神障害をかかえている多くの人々は,病気と障害をあわせ持ち,そのために偏見を持たれるなど,ごく当たり前の生活もできにくい。精神保健福祉ボランティアの活動では,地域の生活者として,日常的なかかわりを通じて心の病を持つことの困難さへの理解を深め,より豊かな生活の質を得るために,共に活動することが重要だという考え方を共有していることが大切で,私たちの活動を通して当事者からボランティアの立場性を聞いた。
キーワード:福祉ボランティア,市民,住民参加,まちづくり
第4章 専門家が知っておきたい基本技術
●家族支援における家族との関係づくり――家族心理教育プログラムに参加した家族の事例を通して――
中岡恵理
家族に対して支援を行う際,もっとも重要なのは家族との信頼関係の構築,すなわち関係づくりである。家族との関係づくりのために必要な支援者の姿勢や方法について述べ,家族心理教育に参加した家族の事例を提示して,プログラム導入時の家族との関係づくりを念頭に置いた関わり方について考察した。家族支援を行うスタッフには,家族のニーズに耳を傾け,個別の事情に配慮しながら共感的に寄り添う姿勢が必要であり,それを通して得られた信頼関係は,家族の気持ちに大きな変化をもたらすことができる。
キーワード:関係づくり,信頼関係,家族心理教育,協働
●家族成員(親であるか,きょうだいであるか,など)によるアプローチの違い
馬場安希
「家族支援」とひとくくりに指すとき,私たちは家族の中の誰を対象に思い浮かべているだろうか。現在の精神障害者家族の置かれた状況について振り返り,「親世代」「きょうだい世代」「配偶者」「その他の家族成員」と,家族成員それぞれの特徴を検討し,どのようなアプローチの違いが必要なのかを考えた。そして,家族成員間の差を越え,共通して必要な基本技術について紹介した。
キーワード:家族支援,家族成員,家族心理教育,解決志向
●家族同士の支え合いの意義と専門家による支援方法
蔭山正子
家族同士の支え合いの意義と専門家による支援方法について述べた。家族のグループには,参加する家族個人を変容する機能と取り巻くコミュニティや社会を変容する機能があり,両者にグループの意義がある。家族のグループでは,普遍性,体験的知識,ヘルパー・セラピー原則といった独自の援助技術により個人の変容に効果がある。また,家族のリカバリーの段階では,特にコーピングやアドボカシーの段階で家族のグループの必要性が高い。支援する専門家は,サポートグループの場合は自己開示を促進し,凝集性を発展させることが重要であり,セルフヘルプ・グループの場合は,パートナーシップの関係を持ち,家族会の希望に応じて家族会の問題解決にともに取り組むこと,社会変容のために共通の目的をもってお互いの強みを活かした取り組みをすることができる。
キーワード:家族支援,家族会,リカバリー,セルフヘルプ・グループ,パートナーシップ
●ひきこもりケースの家族支援
近藤直司、蘒原和子、太田咲子
ひきこもりが長期化し,本人が医療・相談機関につながらないケースの家族支援としては,(1)家族相談を,援助者が本人に会えるまでのプロセスと捉え,その手段や手順を話し合うアプローチ(受診援助),(2)家族システムや家族内のコミュニケーション・パターンの変化を通じて,本人の問題や行動にも変化を及ぼそうとするアプローチ(システム論的なアプローチ),(3)家族が本人の心理や精神医学的問題,本人への適切な関わり方などについて理解を深めることによって,本人の問題や行動に変化を生じさせるようなアプローチ(心理教育的なアプローチ)などの方法論がある。また,相談・支援の構造としては,個別の家族面接として実施される場合とグループを活用する場合がある。本稿では,家族だけが来談するひきこもりケースに焦点を当てて,上記のような相談・支援の特徴や具体的な進め方について論じた。
キーワード:家族相談,システム論的アプローチ,心理教育的アプローチ,家族教室,親の会
●心理教育(1):家族グループへの心理教育プログラム
渡邉真里子
心理教育は,「知識や情報を心理面への十分な配慮をしながら伝え,参加者が対処方法を習得することにより主体的に生活を営めるよう援助する技法」と定義される。統合失調症家族に対する家族心理教育は有効性が立証され,国際的な治療ガイドラインで実施を強く推奨されている。目標は参加者のエンパワメントであり,スタッフには家族・チーム間との協働姿勢が求められる。グループによる家族心理教育の運営においては,教育セッションでは希望が持てる情報提供の仕方を工夫し,グループワークでは問題解決技法などの手法を用いて家族の本来持っている力を引き出すよう支援する。グループによる家族心理教育は,知識や対処技能の向上に加え,家族同士によるグループでの成功体験を積み重ねることにより「社会の中で役割を持って存在する主体」としてのあり方を回復するなどの効果が期待でき,家族のリカバリーを支援する援助技法の1つとして有用である。
キーワード:家族心理教育,エンパワメント,協働,多職種
●心理教育(2):個別家族への心理教育的面接
坂本明子
個別家族への心理教育的面接について,急性期治療病棟で展開される家族に対する心理教育的面接を中心に述べた。急性期治療病棟に入院する患者は,初発で,若年者であることが多い。同居している家族は,本人とともに,疾病によるさまざまな困難を体験している。そして,短期の入院治療ののち,再び生活を共にする。そのような状況で実施される家族への心理教育的面接は,疾患や治療に対するていねいな情報提供を行うことで,家族の疾病や治療への戸惑いといった情緒的な揺れに寄り添い,家族のサポーターとしての本来持っている力を引き出すことを目的とする。また,心理教育的面接では,家族が医療に期待している「回復の見通しについて」も説明すべきであろう。今後さらに,心理教育的面接を,家族や本人のリカバリーを信じ,協働関係を構築していく手法として活用したい。
キーワード:家族への心理教育的面接,急性期治療病棟,回復への見通し,協働関係
●心理教育(3):訪問による家族心理教育
下寺信次
訪問による家族心理教育は,集団で複合家族形式になじみにくい対象者にとっては極めて有効な介入手段である。家族教室などの集団では扱いにくい結婚や就職などの個別の問題についても対処が可能である。また,実際に対象者の自宅を訪問することで援助がイメージしやすいことも大きな利点であろう。ただし,個別の介入でありかつ訪問という形式はコストパフォーマンスが悪い。情緒的に巻き込まれている比較的心理教育に工夫が必要なケースに限定して適応していくことが実際的ではある。しかしながら,偏見の問題も含めて,集団が苦手である対象者への心理教育は再発予防の観点から重要である。再発の入院費用を考えた場合,訪問看護に厚遇した医療点数を加算してでも実施が望まれるのではなかろうか。
キーワード:家族心理教育,単家族,ファミリーワーク,訪問,統合失調症
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