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■特集 スペシャリストの知識と技術で腕をあげる

第1章 スペシャリストが伝えたい治療法のエッセンス
●認知行動療法
伊藤絵美
 認知行動療法(CBT )は,ストレスの問題を「認知」と「行動」の側面から自己改善するためのシステマティックな心理療法であり,さまざまな障害や症状に対するエビデンスが認められており,世界中で広く活用されている。CBT は常識的でわかりやすい治療法のため,CBT を体系的に適用することのできない日常の臨床場面でも,その考え方やスキルを部分的に活用することが可能である。なかでも有用なのは,CBT の基本モデルに沿って,患者の抱える問題のメカニズムを,患者とともに理解するというアセスメントの過程である。アセスメントを通じて患者は自らの自動思考やその他の反応をモニターできるようになり,その結果自分の抱える問題を理解したり,問題に距離を置いたりできるようになっていく。他にもCBT にはさまざまな技法があり,治療者自身がそれらの技法を身につけた上で,必要に応じて患者に紹介し,活用してもらうようにするとよいだろう。
キーワード:認知行動療法(CBT),ストレス,アセスメント,自動思考,技法

●力動精神療法のエッセンス
狩野力八郎
 筆者は力動精神療法のエッセンスについて,個人的な学習経験を下敷きにしながら,もっとも基本的な方法として,傾聴すること,無意識を形あるものとして知ること,構造化すること,想定外の出来事に対してもオープンであること,理論化すること,解釈すること,書くことをあげ,それらについて若干の説明を加えた。
キーワード:傾聴すること,構造化すること,知ること,理論化すること,解釈すること

●集団精神療法を実施する際のちょっとしたヒント
鈴木純一
 私が集団精神療法を実際に始めた時に,こういう場合はどうしたらよいのだろうと考えて教科書を探しても,よいヒントを得られなかった経験がある。経験もずいぶん積んで,技法的にも熟達したと思えるようになった今日でも,初心者であった時と同じようなことでつまずいたり,考えを重ねたりしていることに気づいた。グループの始め方,終わり方,沈黙の扱い方などはその例である。コンダクターがグループの構造を守ることが重大であること,日本人として,グループを実践する際に特に注意しなければならないことなど,日常的に参考になるであろうことをいくつか挙げた。
キーワード:グループ,コンダクター,沈黙,盛り上げない,水を差す

●家族面接のポイント
後藤雅博
 家族療法とは症状や問題行動を家族というコンテキストのなかで捉え直そうとする精神療法の1つであるが,現在は「家族との協働」が強く意識されている。家族面接には家族との信頼関係を築くジョイニングが重要だが,その代表的な方法としてMinuchin , S .,Berg , I .K .の方法と家族心理教育の基本的態度を紹介した。さらに面接のすすめ方のなかでは,常にフィードバックをもらうリフレクティングが家族との協働作業にとって重要であることを述べた。
キーワード:家族療法,家族心理教育,ジョイニング,家族との協働,リフレクティング・プロセス

●チームアプローチ
藤田大輔
 精神科臨床の場面において,チームアプローチが着目される以前は,1人の担当者と1人の利用者という関係性の中で支援が提供されていた。そのような支援を行う中で,担当者の負担は増し,担当者が代わるとそれまでの支援は継続されないといった不利益が生じ,またタイムリーな関わりは困難となる,というような弊害が生じ,さまざまな形態のチームという発想が出てきた。
 最近では,日本においても病院から地域という大きなテーマの中で,国の施策も改訂されているように思われる。精神科病院においては,長期入院者(社会的入院者)の退院を目的とした地域移行支援事業の取り組み,また地域においても在宅支援に関連する資源および制度の見直しがされているのも事実である。このように,国の示す「病院から地域」という大きな流れの中で,精神科病院の退院に向けての取り組みや,地域支援の取り組みを進めていく中でも,担当者単独の関わりでは限界が生じ,各方面でのさまざまな形のチームが必要となってきているのが現状である。
 筆者は,病院勤務においては院内(病棟内)連携チーム医療を実践し,community care においては,対象者の重症度によるチームの在り方,そして現在実践中のACT チームの効果を最大限発揮できるアプローチについて,試行錯誤し現在に至っている。今回は,チームについて簡単にまとめ,その中でもチームアプローチの効果を最大限に発揮でき得る,ACT チームによるチームアプローチについて述べる。
キーワード:多職種チーム,チームアプローチ,ケアマネジメント,コミュニティケア,ACT

第2章 医療の現場に生かすスペシャリストの知識と技術
●境界性パーソナリティ障害
遊佐安一郎
 境界性パーソナリティ障害(BPD )など,感情調節が困難で衝動的に行動する特徴がある患者層は一般に難治だと考えられ,治療者も否定的感情的な反応を喚起されることが多い。弁証法的行動療法,スキーマ療法,そしてBPD の家族支援の理論と実践法の中で,精神医療従事者が活用できそうないくつかの知識と技術を抽出して紹介した。弁証法的行動療法からは「問題患者」を「問題解決に努力している患者」とリフレームすることができるようなスキル訓練の構造と「承認」の重要性について,スキーマ療法からはBPD 患者の衝動性を理解し対処するために役に立ちそうな「スキーマモード」について,そしてBPD の家族支援からはBPD の患者と関わる際に心がけて実践すると役に立ちそうな5つの「パワーツール」と呼ばれる原則を紹介した。最近のBPD のための治療の進歩からより効果的に治療,支援し,そしてより人道的に患者に関わることが可能になり始めている。
キーワード:境界性パーソナリティ障害,弁証法的行動療法,スキーマ療法,BPD の家族支援,承認(validation)

●アルコール依存症の捉え方と臨床的アプローチ
木村武登
 アルコール依存症について,病気の捉え方と臨床的なアプローチについて述べた。アルコール依存症を嗜癖の1つと捉え,援助者が共依存的関係に陥らないように注意が必要なことを述べた。嗜癖の背景には機能不全家族の問題があることに触れ,アルコール依存症を家族システムを通して捉えることについても触れた。また通常の治療モデルでは対応が難しく,アディクションアプローチと呼ばれる考え方が有効であり,家族全体を関わりの対象にしていることや,病気の多様性をふまえた個別的治療(関わり)の大切さ,援助者自身が自分の関係性の問題を知ることの必要性を述べた。
キーワード:アルコール依存症,アディクション(嗜癖),機能不全家族,家族システム

●摂食障害
須田真史 上原徹
 摂食障害の経過は長く複雑で,患者自身の治療意欲が乏しいことも多く,治療に難渋することが多い。極度の低体重状態の患者においては,低栄養状態から身体的危機に陥ることがあるため,身体管理と回復が第一に求められ,入院治療も考慮される。自己誘発嘔吐などの排出行動を伴う場合も,電解質異常や消化管障害などの身体合併症に注意する。薬物療法の効果は限定されているが,過食症においてはSSRI の有効性が示されており,併存する抑うつや不安障害などにも一部有効である。治療者−患者間の安定した治療関係や患者の治療への動機付けが必要不可欠であり,患者の変化可能性を支持し,勇気づけ励ましていくことが,実際の治療では繰り返される。治療者だけでなく,心理士,栄養士,自助グループ,家族会などと連携し,チーム医療を進めていくことが理想的である。
キーワード:神経性食指不振症,過食症,身体管理,薬物療法,精神療法

●ひきこもり
近藤直司
 本稿では,精神科臨床や精神保健福祉相談の場でひきこもりケースに関わる際に求められる基本的な事柄のうち,とくに診断・評価について取り上げる。個々のケースを的確に診断・評価するために,パーソナリティ障害(ないしは特性)や家族状況などの評価を含む精神力動的診断が重要であること,また,発達障害(ないしは特性)を詳細に把握することの重要性を示す。
キーワード:診断,パーソナリティ障害,発達障害,精神力動的診断

●成人の発達障害
米田衆介
 この数年,成人の発達障害に注目が集まっている。成人の発達障害者は決して少なくはない。しかし,その中の大多数が未診断のまま生活している。
 粗大な脳器質性の障害をともなわない発達障害では,その病理は正常との連続性の中にあるが,量的な偏りが一定の水準を超えると,それは現実の日常生活の中では質的に明白な障害となる。当事者自身の特性としての偏りと,環境との関係でのあらわれを区別することは,理論的にも現実的にも容易ではないが,適切な支援を計画するためには,本質的な特性の把握を可能な限り試みることが重要である。最小限,自閉症圏としての特性,多動性障害としての特性,全般的な知能の水準の3つの指標に注意する必要がある。
 発達障害者への支援としては,自分の特性を理解して上手に使えるようにすることが大切だが,このような支援はデイケアなどの集団を利用しなければ困難な場合がある。
キーワード:発達障害,成人,アスペルガー障害,アセスメント,デイケア

●小児の不安障害
石川信一
 実証に基づく心理療法の発想に基づいて,どの問題・症状に対してどの心理療法を選択すべきかについてのガイドラインが提唱されている。現在までに児童思春期を対象として有効性の示されている治療技法のほとんどが認知行動療法に基づく治療技法である。特に,近年のエビデンスを考慮すると,子どもの不安障害に対する心理療法の第1選択肢は認知行動療法であると結論づけられる。そこで,本稿では,本邦で開発された不安障害の子どもに対する認知行動療法プログラムを例として取り上げ,アセスメント法,心理教育,認知再構成法,エクスポージャーの手続きについて概説を行った。そして,子どもに対する認知行動療法の留意点として,信頼関係の構築,プログラム課題の工夫,親への治療参加,の3点について説明を行った。
キーワード:小児,子ども,不安障害,認知行動療法,実証に基づく心理療法

●強迫性障害――曝露反応妨害法の「治療場面」について――
飯倉康郎
 強迫性障害患者が1人の状況で不安刺激に直面する(あるいはしてしまう)場面を,筆者は,「治療場面」という表現で患者に伝えることが多い。特に,患者が不安になった出来事を振り返って述べている時に,「まさにそこが『治療場面』ですよ」とピンポイントに指摘するようにしている。そのやり方について多くの患者は「どこをがんばればよいのかがわかりやすい」と感想を述べてくれている。そこで,本稿では,この「治療場面」という表現を用いた治療の進め方を行動療法の技術としてまとめることにした。そのために,著しい効果が得られた症例の治療経過を詳述した。その中から,曝露反応妨害法における有効な「治療場面」を設定しやすくする治療環境(附属施設の利用とそこからの頻回の通院など)や,日常生活の中での具体的な「治療場面」を患者に認識させやすくする手段(セルフモニタリング,電話,ファックスの活用など)を中心に考察を加えた。
キーワード:強迫性障害,曝露反応妨害法,治療場面,治療環境,セルフモニタリング

●性同一性障害
針間克己
 性同一性障害を有し,主要な医療機関を受診したものは,これまでで延べ7,000 人を超え,戸籍変更をしたものは,2008 年末までに1,263 名である。基本用語としては,GID (Gender IdentityDisorder ),MTF (male to female ),FTM (female to male ),SRS (sex reassignment surgery),特例法(性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律)などがある。鑑別診断では,同性愛,異性装,半陰陽,統合失調症などに留意する必要がある。外来での対応としては,混乱したセクシュアリティ/アイデンティティ,一般的メンタルヘルス,身体的治療の承認,名の変更,性別変更のための診断書作成,といった受診動機に留意する必要がある。入院時の対応は,入院前の社会生活上の性別が,1つの判断基準となる。いずれにせよ,性同一性障害を有するものたちを理解し受容する心のありようこそが,医療の現場に求められる。
キーワード:性同一性障害,GID ,性別適合手術,特例法,鑑別診断

●解離性障害
岡野憲一郎
 解離現象は心の機能のスイッチングの病理と捉えられるが,その具体的な機序は不明である。DID (解離性同一性障害)はその特異で非日常的な症状の現れ方から,さまざまな誤解を受けやすく,またそれが治療者が治療的かかわりに消極的になる原因ともなっていた。それだけに臨床家がDIDの正確な病像のあり方を理解しておくことは極めて重要となる。その際特に注意すべきなのは,異なる人格は,彼らの主観世界ではそれぞれがあくまでも別人として現れるということであり,個々の交代人格に対する敬意ある扱いが重要となる。また解離そのものを治療の対象とするよりは,それが病的な形で表現される原因となっているストレスや並存症を扱うことが重要である場合も多いこと,医原性の解離をことさら恐れない態度が必要であることも本稿で強調された。最後に治療のイメージをわかりやすく示すために,筆者が考案した「マイクロバス」モデルを提示した。
キーワード:解離,スイッチング,解離性同一性障害,「マイクロバス」モデル

●パニック障害の認知行動療法
陳峻文
 パニック障害の治療に薬物療法と認知行動療法が有効であることは多くのエビデンスによって確認されている。しかしながら,日本ではパニック障害に対する認知行動療法がまだ普及しておらず,多くの患者がまだ十分に治療を受けていないのが現状である。本論ではパニック障害の認知行動療法についてその理論背景と具体的な技法,および,現存する認知行動療法プログラムを中心に紹介する。
キーワード:パニック障害,認知行動療法,連合学習理論,認知理論,治療プログラム

第3章 地域の現場で活きるスペシャリストの知恵と技
●解離性障害で行動化を伴う特徴をもつ場合
梁田英麿,西尾雅明
 解離性障害で行動化を伴う特徴をもつ場合,支援の途上では目の前の攻撃性や操作性に瞼を閉じたくなる場面も確かにあるが,私たちの眼差しがその攻撃性や操作性だけにしか向いていないとすれば,それは「臨床の貧困」としか言いようがない。
 本稿では,東北福祉大学せんだんホスピタルのS -ACT が関わった解離性障害の事例を中心に,独自のデータベースの集計を参考にしながら,具体的な関わりのポイントをまとめた。
 地域で支える私たちの対応としては,まずは真摯な態度で働きかけ(信頼関係の構築),本人の声を聴き,本人の生活空間に安らぎ(安全な環境と安心感)をもたらすことが優先となるだろう。その上で,本人の過去や目の前の症候にとらわれることなく,本人の自己解決能力と回復を信じ,現実の生活において主体的に立てるようになるまでの間「支持的に接し続ける態度(attitude )」こそが,臨床的に意義のあることだと感じている。
キーワード:家族支援,環境調整,電話相談,見通しの共有,自己実現

●アルコール依存症の地域援助
高橋郁絵,田中ひな子
 東京都立多摩総合精神保健福祉センターにおけるアルコール依存症への援助モデルは,この10年間で大きな変遷を遂げた。それは伝統的アプローチによる直面化から来談者の動機を生かす援助のありかたへの変化と言える。そのアプローチの変化は相談場面での対応に加え,特に2つのプログラムの方法に反映されている。本人対象の「再発予防プログラム」(TAMARPP :Tama Mental Hearth and Welfare Center Relapse Prevention Program )と家族対象の「家族の対応:実践編」である。いずれも参加者の主体的選択を重視しながら行動変容を導くことが重要視されている。
キーワード:伝統的アプローチ,直面化,ソリューション・フォーカスト・アプローチ,心理教育

●摂食障害――地域の現場で役立つこと――
鈴木廣子
 摂食障害を地域で治療していくために,多くの治療者が創意工夫をされていると思うが,筆者なりに以下のようにまとめてみた。(1)心理教育・家族教室の利用(単家族または複合家族対象で),(2)家族合同面接の利用,(3)摂食障害患者本人や家族が示してくる「流れ」を利用,(4)治療経過の中で,家族が取り上げた問題を問題として扱わなかった利点,(5)摂食障害患者の治療意欲と治療,(6)治療者が連携可能な関連病院,関連機関の確保,すなわち,ネットワーク構築が必要,となった。
キーワード:摂食障害,治療,家族療法,心理教育,ネットワーク構築

●ひきこもり―― 精神科診療所での家族との関わりから――
本田徹
 精神科診療所での,「ひきこもり」問題を抱えた家族との取り組みを報告した。家族と協力しながら行っている作業を,1.相互の信頼関係を築く,2.「ひきこもり」について評価する,3.対応を話し合う,という3つの側面で取り上げ,それぞれについて医師としての立場から,その考え方,注意点に触れた。そして対応の中でも,「ひきこもり」が陥っている関係性の悪循環・閉塞状況に注目し,そこから抜け出すための努力の重要性を述べた。また診療所においても可能な援助のあり方に議論を限定し,その役割に触れた。
キーワード:家族相談,関係性,評価,悪循環,対応

●成人の発達障害
山崎修道,石橋綾,清水希実子,森山亜希子,五十嵐美紀,浅井久栄,藤枝由美子,永井真理子,白澤知恵,管心,切原賢治,古川俊一
 本稿では,統合失調症を中心とするデイケアにおける,成人の発達障害(アスペルガー症候群)を持つ当事者への対応の工夫を,(1)就労に向けたデイケアにおける工夫,(2) SST での工夫について述べる。筆者の所属するデイケアでは,アスペルガー症候群を持つ当事者に対して,同時期の在籍者数をデイケア全体の在籍者数の1 割以下(2〜3 人)に絞った上で,(1)デイケア集団を使って本人の特徴・能力をアセスメントする,(2)集団に受け入れられる経験を獲得できるように援助する,(3)保護者の要求水準を適正化する,(4)利用期間・役割を限定して利用する,という4つの目的・方針に沿って,就労に向けた支援を行っている。また,SST では,アスペルガー症候群の特徴を踏まえた上で,課題の設定・セッションの進め方に工夫を加えている。発達障害を持つ当事者への支援体制・制度は非常に不十分であるが,現場で最大限工夫しながら支援を行っていく必要がある。
キーワード:アスペルガー症候群,社会復帰(就労)支援,SST ,認知行動アプローチ,デイケア

●医療につながらないケース
岡田愛,福山敦子,高木俊介,三品桂子
 ACTは包括的な地域生活支援を24 時間行うプログラムである。ACT の特徴の1つとして,地域生活の継続が困難であり,既存の地域精神保健サービスでは十分ニーズを満たすことができない重度精神障害者を主な対象としている。そのことから,医療を拒否する利用者についてスタッフがどのように考え,利用者を支援する上でどのような工夫や取り組みを行っているかを明らかにするために,ACT -K (京都地区)スタッフ7 名にフォーカスグループインタビューを実施した。分析の結果,(1)地域生活支援を行う専門職の在り方,(2)コミュニティの構築,(3)その人らしさを中心とした支援,(4)パートナーシップの構築といった4 つのカテゴリーが見出された。医療,そして人間不信に陥っている人に対して,もう一度人間を信頼してもよいのだと思える体験を重ねていけるような実践と,その人が持つ回復力を高めていく関わりの重要性が示された。
キーワード:ACT ,医療拒否,地域生活支援,地域精神保健サービス,支援内容

●就労の問題――障害者就労支援ネットワーク構築事業――
小暮明彦
 障害者就労の問題は多岐にわたる課題を含んでいることは言うまでもない。地域生活相談事業「精神障害者地域生活支援センター」活動の中で,就労意識の高まりを認識していたにもかかわらず「働きたい」というニーズに十分応えてこられなかった。
 伊勢崎市自立支援協議会の特定課題会議(就労支援ワーキング)などをとおして地域障害者就労支援ネットワーク構築が進展してきている。今後,伊勢崎市障害者就労支援協議会において「働きたい」というニーズに少しでも近づけるために,「いせさき版就労モデル」の実現に向け,就労支援ネットワーク構築事業におけるアプローチを検証して,今後,就労支援の取り組む方向性を明確にしていきたい。
キーワード:地域,企業開拓,就労支援ネットワーク構築

●訪問サービスで直面する問題――精神科訪問看護の実践を通して――
上村直子
 「精神科訪問看護」は,症状・疾患のコントロールに治療的に関わり,時に管理的な医療的側面,本人とのパートナーシップを大切にしながらその人を支える福祉的側面,の両側面と,それぞれを「つなぐ」役割を持つ。
 精神科臨床経験がやっと9年目に入り,精神科病院で2年,現在所属する訪問看護ステーションから1年半,「訪問看護」の形で訪問サービスに携わっている。経験の浅い私であるが,以下等身大の問題意識である。
キーワード:訪問サービス,精神科訪問看護,ストレングス,連携,当事者主体

●行政の場に持ち込まれる問題
工藤一恵
 行政機関の場に持ち込まれる問題への解決手段として,ケアマネジメント技術を実践する場となる「ケア会議」の活用について概説した。ケア会議は,(1)課題解決に向けた目的・目標の理解と共有化,(2)支援計画の作成,(3)支援の振り返り,(4)関係機関の連携強化を実現する場となる。行政的な視点から鑑みると,ケア会議で検討された課題が行政課題として認識され,障害福祉計画や施策に反映させることも可能となる。今般,障害者自立支援法,精神保健福祉法他の改正案が提出され(平成21 年7月に廃案),行政機関においては技術としてのケアマネジメントの利点を生かした相談支援体制の充実強化がより一層求められる。
キーワード:行政機関,ケアマネジメント,ケア会議,障害者自立支援法,相談支援


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