●物質関連障害における睡眠覚醒障害とその治療
遠山朋海 樋口 進
物質関連障害における睡眠覚醒障害は物質の種類,進行度,使用時期,重複障害を考慮しなければならないため複雑である。2002年の10ヵ国調査によると,日本では不眠に対して医療機関を受診する割合が8.0%と低く,飲酒する割合が30.3%で最も高かった。アルコール関連の睡眠障害は主に不眠であり,36〜72%に合併している。断酒または飲酒量低減の治療目標達成6ヵ月後でも33%に不眠が残存する。不眠症に対する認知行動療法は効果が長く続き,処方薬乱用防止の点からも第1選択である。しかし,認知行動療法の効果が現れるまでの数週間は薬物療法が補助となる。Gabapentin,trazodone,quetiapine,acamprosate,topiramateなどの潜在的有効性が検討されている。不眠と断酒継続の成否について,平均5ヵ月間の再飲酒率は不眠症合併群では59.6%,非合併群では29.6%であり,不眠は物質関連障害の再燃リスク因子である。
Key words : alcohol, cannabis, opioids, cocaine, insomnia due to drug or substance