月刊 臨床精神薬理 第20巻6号(6月号) 2017年6月刊行

発達障害に対する薬物療法の新展開:

自閉スペクトラム症中核症状に対する治療薬開発



【図1】オキシトシン投与とASD当事者の友好性判断の偏りとその脳基盤
     (Watanabe et al., JAMA Psychiatry, 20177)より改変して掲載)


オキシトシン投与とASD当事者の友好性判断の偏りとその脳基盤

*p<0.05 左)
ASD当事者では、オキシトシン点鼻スプレーを1回投与したことで、定型発達群で多かったタイプの、表情や声色を活用して相手の友好性を判断する行動が増えた。右)ASD当事者では、オキシトシン点鼻スプレーを1回投与したことで、表情や声色を活用して相手の友好性を判断する際の元々減弱していた内側前頭前野の活動が回復した。白い円で示した元々活動が減弱していた部位とオキシトシン投与で脳活動が増した部位が概ね一致していた。



【図2】オキシトシン投与効果と生化学的効果
     (Aoki et al., Mol. Psychiatry, 20158)より改変して掲載)

【図2】オキシトシン投与効果と生化学的効果

左)図1で脳活動が改善した部位とほぼ一致してNアセチルアスパラギン酸(NAA)を濃度測定した。右)オキシトシン投与に伴うNAA濃度の変化は同じ部位の脳活動変化と相関した。下)NAA濃度が背景となって脳活動が変化し行動変化に至るという関係が支持された。




【図5】オキシトシン投与による休息時脳機能の改善
     (Watanabe et al., 201516)より改変して掲載)

【図5】オキシトシン投与による休息時脳機能の改善

左)プラセボ投与前後に比較してオキシトシン投与前後は有意に内側前頭前野内の休息時脳機能結合性が改善していた(左)。この休息時脳機能結合性が改善している症例ほど対人場面での行動表出から評点される主要評価項目の対人相互作用も改善していた(右)。