●高齢うつ病者のうつ状態に対する対応――非薬物療法を中心に――
下田健吾 木村真人
高齢化社会の中で増加している高齢うつ病の治療,介入は重要な問題である。高齢うつ病は遺伝・生育的要因のみならず神経生物学的要因,器質的要因や社会心理学的要因などさまざまな要因が発症に関与し,個々の患者においてその割合は異なるため多面的な評価とアプローチが必要である。本稿では非薬物療法の中で,有効性のある治療として心理療法(認知行動療法,対人関係療法,問題解決療法),コミュニティレベルでの介入,電気けいれん療法,経頭蓋磁気刺激法,運動療法について概説した。心理療法や電気けいれん療法はエビデンスの高い治療法として確立しているが,経頭蓋磁気刺激法,運動療法については今後の研究成果の蓄積が待たれる。高齢うつ病の治療において重要なことは薬物療法,非薬物療法の線引きをすることではなく,全人的立場から最適な治療が提供されることであり,有効性の実証されているコミュニティレベルでの介入の普及が必要である。
Key words : late life depression, non pharmacological interventions, psychotherapy, electroconvulsive therapy, depression care management