●MemantineのBPSDに対する効果
工藤 喬
BPSDは認知症の行動・心理症状を差し,治療・介護の大きな障害となるため,その対策は重要である。BPSDの薬物療法には抗精神病薬などを中心に従来使用されてきたが,適応外使用などの問題がある。認知症治療薬であるmemantineのBPSDに対する効果については,興奮/攻撃性に対する効果を中心に肯定的な報告が散見されている。そのメカニズムについては,memantineのタウ蛋白リン酸への効果で説明がされている。
Key words :memantine, BPSD, tau
●NMDA受容体拮抗剤登場後のアルツハイマー型認知症の臨床
北村 伸
Memantineの使用が可能になり,アルツハイマー型認知症の薬物治療は大きく変化した。Memantineは中等度および高度のアルツハイマー型認知症の第一選択薬の1つであり,単独投与でも効果が期待できる。そして,コリンエステラーゼ阻害薬とは薬理作用が異なり,memantineは,コリンエステラーゼ阻害薬との併用が可能である。海外の臨床試験では,donepezil単独投与よりもmemantineを併用した方が,認知機能,日常生活動作,全般症状,行動心理症状により大きい改善のあることが示されている。よって,これからのアルツハイマー型認知症薬物治療において,常にmemantineの併用を考慮しておくべきである。主治医は,memantineと3種類のコリンエステラーゼ阻害薬が使用できるようになったことで,薬の切り替えや併用をする場面もあることから,少なくとも6ヵ月に1回は認知機能の評価を行い,患者と介護者から生活の様子を聞き取って症状の変化をよく把握しておかなくてはいけない。
Key words :Alzheimer's disease, memantine, treatment