■原著論文 ●非定型抗精神病薬による重度の認知症周辺症状(BPSD)の縦断的治療経過について――2症例報告を通して――
大野篤志
非定型抗精神病薬を使用せずに重度のBPSDの治療をすることは極めて難しい。BPSDに対して非定型抗精神病薬を適切に使用することで,患者の精神状態,介護負担は改善される。一方で非定型抗精神病薬の不適切な使用は重篤な副作用を出現させる。非定型抗精神病薬によるBPSD治療時の副作用としては,FDAの警告,横断的副作用としての過鎮静や錐体外路症状等が知られているが,今回筆者はBPSDの縦断的治療経過中に統合失調症における精神病後疲弊状態様の副作用を呈し,BPSDが改善した2症例を経験した。2症例の臨床経験から縦断的治療経過について考察し,精神病後疲弊状態様の副作用について報告する。BPSDの病態,BPSDに対する非定型抗精神病薬の薬理学的な効果と副作用について解明すべき点は多い。本報告はあくまで2症例を通して考察したものであり,報告である。今後はさらなる症例の蓄積と検討が必要である
Key words : behavioral and psychological symptoms of dementia (BPSD), atypical antipsychotics, side effects, longitudinal treatment, postpsychotic fatigue-like status