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展望
●治療ガイドラインから読み取れること,そしてその背景にあるもの
渡邊衡一郎
 現在世界中の国々や地域,種々の学術団体等が独自の治療ガイドラインを策定し,それぞれ対象となる治療者に対し,推奨対応を提示している。記載された治療を参照することは望ましいが,ガイドラインに法的な拘束力はないことから,「目安」という存在と理解すればよい。ガイドラインのチェックリストであるAGREEチェックリストによると,優れたガイドラインは患者や家族といった利害関係者の参加や健康経済学的な影響および費用面などの点にも目を向け,患者向けの冊子の作成,策定の際に外部の校閲者による評価を経ているかなどにおいて配慮されていた。治療ガイドライン間の差異が生じる原因の1つに,策定に至るまでの背景の違いが挙げられる。うつ病を例にとり,英国NICEガイドラインと米国APAのガイドラインとを比較すると,薬物療法の専門家が含まれているかどうか,心理療法や健康経済学者,患者などが含まれているかどうかで違いがあり,推奨内容も異なっていた。ガイドライン上に記載されている推奨内容を見るだけでなく,こうした重要な要素に配慮しているか,また策定の背景にまで注目することが望ましい。ガイドラインは「目安」ではあるが,患者に提供するのに最もふさわしい情報となるのである。
Key words : treatment guideline, AGREE checklist, shared decision making, NICE guideline, APA guideline

特集 最新の精神科薬物治療ガイドライン
●せん妄の最新薬物治療ガイドライン
宇都宮健輔  中村 純
 せん妄に対する最新の薬物治療ガイドラインについて,抗精神病薬および四環系抗うつ薬のmianserinに関する最近のEBMや実際の治療を踏まえながら概説した。Haloperidolなどの第一世代抗精神病薬,risperidone,olanzapine,quetiapine,perospirone,aripiprazoleなどの第二世代・第三世代抗精神病薬,mianserinに代表される四環系抗うつ薬のせん妄への有効性を示唆する報告が複数みられる。実際には,せん妄に対する薬物療法として抗精神病薬が使用されることが多く,本邦でもhaloperidolが第一選択薬と考えられている。一方,高齢者においては,海外および本邦の各ガイドラインでも示されているように,せん妄の第一選択薬としてrisperidoneなどの第二世代抗精神病薬が推奨されている。今後,第一世代抗精神病薬,第二世代・第三世代抗精神病薬の有効性と安全性について,さらに検討を進める必要があると考えられる。
Key words : delirium, new guidelines, pharmacotherapy, antipsychotics, mianserin

●認知症の最新薬物治療ガイドライン
矢田部裕介  橋本 衛  池田 学
 認知症に対する根治的治療は未だなく,認知症治療における薬物治療は非薬物的なケアに対して補助的なものと位置づけられる。しかし,近年では,背景疾患に応じた薬物治療が可能となってきており,選択可能な薬物治療オプションも拡大してきている。これまでわが国では抗認知症薬としてdonepezilのみが使用可能であったが,2011年中には,海外での使用実績のあるgalantamine,rivastigmine,memantineの臨床使用が可能となる見込みである。また,認知症の精神症状・行動障害(behavioral and psychological symptoms of dementia : BPSD)に対しても,背景疾患の病因や病態をふまえた薬物治療のエビデンスが集積しつつある。わが国では,このほど認知症疾患診療ガイドライン2010が公表されたが,本稿では本ガイドラインに推奨される治療を中心に,認知症の薬物治療について概説した。
Key words : dementia, clinical guideline, pharmacologic treatment, cognitive impairment, behavioral and psychological symptoms of dementia, cholinesterase inhibitor

●統合失調症の最新薬物治療ガイドライン
富永武男  伊賀淳一  大森哲郎
 統合失調症の4つの主要ガイドラインAmerican Psychiatric Association(APA,2004),National Institute for Clinical Excellence(NICE,2009),World Federation of Societies of Biological Psychiatry(WFSBP,2005, 2006),Expert Consensus Guideline(ECG,2003)について,急性期,回復期(安定期),治療抵抗性(clozapineの適応),電気けいれん療法(ECT)の扱いに焦点を絞って概説した。作成意図や作成過程および想定利用者の違いが,それぞれのガイドラインの特徴に反映されている。臨床的な決定を補佐するための1つの手引きを意図していることをわきまえて利用すると,有用な治療学の参考書となる。
Key words : schizophrenia, acute phase, recovery (stable) phase, clozapine, electroconvulsive therapy (ECT)

●うつ病の最新薬物治療ガイドライン
原田豪人  菅原裕子  坂元 薫
 わが国,および海外で発表されているうつ病の薬物治療ガイドライン・アルゴリズムのうち最新のものを紹介し,比較検討した。第一選択の抗うつ薬として安全性や忍容性の観点から,選択的セロトニン再取り込み阻害薬などの新規抗うつ薬を推奨するものが多くみられたが,これらを推奨しつつも,総じて患者の意向,過去の治療歴等を考慮し個別に総合的に判断し薬剤を検討するべきであるという記載が多くみられた。ガイドラインにより治療初期のベンゾジアゼピン系薬剤の併用に関する記載に相違がみられた。第一選択の抗うつ薬の効果が不十分であった場合の対応として,多くのガイドラインで同一クラス間でのスイッチングあるいは異なるクラスの抗うつ薬へのスイッチング,または増強療法が選択肢として挙げられていた。第一選択薬が無効であった場合には増強療法ではなくスイッチングを推奨しているガイドラインが多くみられた。
Key words : major depressive disorder, antidepressant, clinical guideline, algorithm

●双極性障害の最新薬物治療ガイドライン
山田和男
 双極性障害の薬物治療ガイドラインは,躁病エピソード急性期,双極性うつ病急性期,気分エピソードの予防の3つに分けてまとめられているものが多い。また,ほとんどの薬物治療ガイドラインにおける薬剤の推奨順位は,エビデンス・レベルの高い報告の結果(質の高いエビデンス)を優先したものとなっている。本稿では,過去3年以内に国内外で公開された,厚生労働省研究班版,カナダ気分・不安治療ネットワークと国際気分障害学会版,英国精神薬理学会版,生物学的精神医学会世界連合版,精神医学講座担当者会議版,日本うつ病学会版の6つの双極性障害の薬物治療ガイドラインについて概説するとともに,これらの治療ガイドラインにおける第一推奨薬の比較を行った。治療ガイドラインを参考にして,実際に薬剤を処方する際には,わが国の適応症に十分に注意すべきである。また,利用する治療ガイドラインが最新版であるのか否かを確認しておく必要がある。
Key words : bipolar disorder, evidence, off label indication, treatment guideline

●パニック障害の最新薬物治療ガイドライン
越野好文
 最近,2つのパニック障害治療ガイドラインが公表された。1つは2009年のアメリカ精神医学会のパニック障害治療ガイドライン改訂版であり,他の1つは厚生労働省こころの健康科学事業「パニック障害研究班」が2008年に発表したものである。前者は1998年に初版が発表され,パニック障害治療のガイドラインを代表してきた。この度の改訂でさらに充実したものとなった。薬物療法に関してはセロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬が第一選択に格上げされ,モノアミン酸化酵素阻害薬が第一選択を外された。後者は,日本のプライマリケア医を主な対象として作成された最新の治療ガイドラインである。薬物療法に限定されることなく患者教育や認知行動療法についても配慮されている。薬物療法ではbenzodiazepineについて適切な使用を推奨している点が特徴である。
Key words : benzodiazepine, guideline, panic disorder, pharmacological treatment, SSRI

●全般性不安障害の最新薬物治療ガイドライン
辻 敬一郎  田島 治
 全般性不安障害(Generalized Anxiety Disorder : GAD)は,その概念自体に賛否両論ある中,GADに対する種々の薬物療法の有用性が認められてきており,いくつかの薬剤が海外においてGADの適応を取得している。また,21世紀になり,GADの薬物療法を含む治療ガイドラインやアルゴリズムが次々と登場してきている。経時的にみていくと,使用薬剤の選択肢が徐々に広がっている傾向はあるが,概してSSRIやSNRIを第1選択とし,必要に応じてベンゾジアゼピンを短期間に限り使用するという大筋の指針に大きな変化はみられていない。本稿では,薬物療法の有効性の裏付けとなるいくつかのGADの生物学的仮説と,今日海外でGADの適応を有する薬剤を紹介した上で,今日の主要なGAD薬物治療ガイドラインを紹介した。
Key words : generalized anxiety disorder (GAD), pharmacotherapy, guideline, algorism

●強迫性障害の最新薬物治療ガイドライン
松永寿人  林田和久
 現在,強迫性障害(OCD)に対する薬物療法では,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が,この適応を有し第一選択とされる。この有効性は,OCDに関するセロトニン系機能異常を主とした病態仮説の根拠とされてきた。しかしSSRIが全てのOCD患者に有効とは言えず,約40%では十分な反応が得られない。このようなSSRI抵抗性には,早発や保存症状の存在,チック,ないし統合失調型人格障害のcomorbidityなどが関わるとされる。近年SSRI抵抗性OCD患者には,適応外ではあるが非定型抗精神病薬の付加投与の有効性が検証されており,個々の患者が示す反応性や奏効する薬物療法の相違は,背景にある神経化学的病態の多様性を反映する可能性がある。最近では,OCDを大脳基底核の機能異常による認知的行動的抑制障害とする見方もなされ,ドーパミン系の関与が注目されている。現在のところ,OCDの薬物療法の標準化は十分ではないが,symptom dimensionなどを基準に,より合理的な薬物療法の適用が検討されている。
Key words : obsessive-compulsive disorder, selective serotonin reuptake inhibitor, pharmacotherapy, antipsychotic drug, augmentation

●PTSDの薬物療法に関する各種ガイドライン
前田正治  大江美佐里  松岡美智子
 数多くあるPTSD薬物治療ガイドラインの中で,8つの代表的なものを取り上げてそれぞれ概観した。ガイドラインの目的や作成手法,対象とする利用者,ステークホルダーなどによる推奨の相違がある中で,SSRIを第一選択薬としている点は各種ガイドラインにほぼ共通している。その一方で重症例や併存例,若年例に対しては,他薬の追加・変更も検討されなければならないし,心理社会的治療との併用,あるいは優先度もまた考えなければならない。利用者は各種ガイドラインの持つ特徴や有効性と同時に,それらの限界もよく知っておく必要がある。そして今後もエビデンスに基づくガイドラインの重要性は揺らぐことはないにしても,より臨床に即した実践的なガイドラインの作成が望まれる。
Key words : PTSD, pharmacotherapy, guideline, treatment

●注意欠如・多動性障害(ADHD)の最新薬物治療ガイドライン
遠藤太郎  染矢俊幸
 注意欠如・多動性障害(ADHD)は,不注意,多動,衝動性の主症状が幼児期より顕在化する発達障害の一群である。ADHDの治療では,欧米では古くよりmethylphenidate(MPH)やamphetamineなどの中枢刺激薬を中心とした薬物療法が行われてきており,現在我が国でも,中枢刺激薬のMPH徐放剤(コンサータ®)と非中枢刺激薬である選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬atomoxetine(ストラテラ®)の2剤が,ADHDに保険適応のある治療薬として使用可能である。これまでに発表されている欧米における最新のADHD薬物治療ガイドラインでは,いずれも中枢刺激薬が薬物治療の第一選択薬として位置づけられているのに対し,我が国のガイドラインでは,薬物療法は心理社会的介入などを含めた包括的治療の選択肢の1つとして位置づけられており,さらに中枢刺激薬のMPH徐放剤と非中枢刺激薬のatomoxetineが第一選択薬として同格に位置づけられていることが特色となっている。最近のメタ解析では,中枢刺激薬とatomoxetineのADHDに対する効果は同等であると報告されており,欧米のガイドラインもこのようなエビデンスを受けて,今後改訂されていくことが予想される。我が国独自のガイドラインを作成・改訂して行くにあたり,日本人のADHDを対象とした臨床研究が圧倒的に不足しており,今後,我が国における臨床経験とエビデンスを積み重ねていくことが急務の課題である。
Key words : attention-deficit/hyperactivity disorder (ADHD), guideline, algorithm, methyl- phenidate, atomoxetine

原著論文
●慢性統合失調症圏患者の治療におけるaripiprazoleの至適用量に関する研究
藤元君夫  山口成良  松原三郎
 非定型抗精神病薬aripiprazoleは従来のantagonistと異なりpartial agonistとして作用し,その至適用量は十分には確立されていない。そこで2006年6月から2010年5月までの4年間に当院外来でaripiprazoleが処方された統合失調症圏患者239名の,2010年9月30日までの薬剤継続率と薬剤用量を調査することによりその至適用量を検討した。全体での薬剤継続率は31.2%,再入院率は35.7%,平均維持用量は14.6±8.2mgであった。用量別で比較すると,薬剤継続率は用量15mg以上の患者群111名で45.4%,用量12mgの患者群48名で36.8%(P<0.003),用量9mg以下の患者群80名で10.7%(P<0.03)と有意差がみられた。なお用量15mg以上の患者群で,開始用量12mg以上と9mg以下では薬剤継続率に有意差はみられなかった。したがって,aripiprazoleの至適用量は,維持用量として12mgでは十分ではなく,15mg以上が求められることが示唆された。
Key words : aripiprazole, atypical antipsychotic drug, optimal dose, drug continuation rate, schizophrenia spectrum

●高齢者うつ病にmirtazapine使用後,せん妄を来した4例
井上真一郎  岡部伸幸  矢野智宣  中村真之  牧 安紀  岡久祐子  髙木 学  児玉匡史  松本洋輔  寺田整司  内富庸介
 Mirtazapine(MIR)は,Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant(NaSSA)と呼ばれる新規抗うつ薬である。今回,我々はMIRによるせん妄が強く疑われた4例を経験した。全例,身体疾患の治療を目的として入院中の高齢女性であり,不眠を伴ううつ状態に対してMIR 15mg/日が処方された。4例中3例では,MIR内服開始から3日以内にせん妄が出現した。中止後の経過は良好であり,4例全例において速やかにせん妄は改善した。せん妄が惹起された機序としては,前頭前野におけるドーパミン量の増大が関与している可能性を指摘した。身体合併症を有する高齢患者にMIRを使用する場合には,十分な注意が必要である。
Key words : mirtazapine, NaSSA, delirium, dopamine, elderly

●抗精神病薬服用中の統合失調症患者におけるQTc延長について
藤野純也  谷口典男  筧久仁子  伊野美佳  宮本雅彦  井上 聡  竹村有由  十倉隆史  田伏 薫
 QTc延長は,torsade de pointes型心室頻拍を経て突然死に至りうる心電図変化で,抗精神病薬の留意すべき副作用の1つであるが,我が国で抗精神病薬投与とQTc延長との関係の報告は稀である。我々は,浅香山病院の慢性期病棟に入院中の統合失調症および統合失調感情障害の患者において2009年4~6月の間に施行された心電図と抗精神病薬の投与量,剤数,他の危険因子などとの関係を後方視的に調査した。結果,解析対象357例において,抗精神病薬単剤で加療されている群のQTc間隔は417.3±24.2msで,2剤併用群(424.8±20.8ms),3剤以上併用群(426.9±20.7ms)と比べて短かった。また,chlorpromazineとlevomepromazineのQTc延長(≧440ms)のodds比が1.59(p=0.08),1.69(p=0.06)と高い傾向にあった。抗精神病薬が多剤大量投与となっている患者や他の危険因子を有する患者では,特に心電図を定期的にフォローアップする必要性を再確認し,心臓突然死のリスクを減らすためにも抗精神病薬多剤大量療法から単剤治療へと試みることが重要であることが示唆された。
Key words : QT prolongation, antipsychotics, polypharmacy, monotherapy, schizophrenia

●Blonanserinの服薬中止率と投与後安定/寛解率――統合失調症患者を対象とした長期投与試験のpost-hoc解析――
石郷岡 純  中村 洋
 2008年4月に国内で市販された第二世代抗精神病薬のblonanserin(BNS)はドパミンD2及びセロトニン5-HT2A受容体に強力で選択的な遮断作用を示し,アドレナリンα1,セロトニン5-HT2c,ヒスタミンH1,ムスカリンM1受容体への親和性は弱い。近年,海外で実施された大規模なナチュラリスティック長期投与試験では,「治療中止率」をはじめとしたイベントの有無を評価指標としており,既存の第一/第二世代の抗精神病薬について新たな知見が得られている。国内で実施したBNSのナチュラリスティックに近い長期投与試験について,「服薬中止率」及び「投与後安定/寛解率」のpost-hoc解析から,BNSはeffectivenessの向上が期待できる薬剤であると推察された。
Key words : blonanserin, dopamine-serotonin antagonist, schizophrenia, discontinuation rate, remission, effectiveness

症例報告
●統合失調症急性期におけるblonanserin・バルプロ酸併用療法の経験
國井泰人  丹羽真一
 Blonanserinが上市されて約3年が経過した現在,その臨床評価が定まりつつある。これまでの種々の報告から,blonanserinは優れた抗幻覚・妄想作用を有することに加え,鎮静作用が弱いことが示唆されている。この特徴は維持期におけるアドヒアランスの向上という意味では有効である一方で,急性期においては興奮や易刺激性といった症状の制御が不十分となる弱点があるため,併用薬の使用法が重要となる。そこで今回,blonanserinとバルプロ酸の併用が奏効した急性期の統合失調症2例を経験したので報告し,統合失調症急性期におけるblonanserinによる治療時のバルプロ酸併用の意義について考察した。
Key words : schizophrenia, blonanserin, sodium valproate, mood stabilizer, combination therapy

●Aripiprazoleにより局所脳血流および認知機能の改善を認めた単純型統合失調症の1例――「発症危険精神状態」との関係に着目して――
林 剛丞  鈴木雄太郎  新藤雅延  染矢俊幸
 統合失調症治療において,初回エピソード顕在化以前の前駆期からの治療介入を推奨する意見もあるが,この前駆期を前方視的に診断しようと作成された発症危険精神状態(at risk mental state)という診断基準も偽陽性率が高く,感情鈍麻や意欲低下などの陰性症状を主体に経過する単純型統合失調症のような病態についてはほぼ診断不可能であるという問題がある。一方,統合失調症の発病前より進行性に脳の構造および機能的変化が出現するという報告があり,こうした脳画像所見は前駆期および単純型統合失調症の生物学的マーカーとなる可能性がある。我々は,陰性症状と社会機能低下に加えて弱い精神病様症状を呈し,単純型統合失調症および発症危険精神状態と診断された24歳女性に対してaripiprazoleを投与したところ,陰性症状に加えて,認知機能および局所脳血流低下が改善した症例を経験したので報告する。
Key words : ARMS, simple schizophrenia, BACS-J, SPECT, prodrome

短報
●Duloxetineの増量によりセロトニン症候群と思われる症状をきたした反復性うつ病性障害の1症例
森 清  岡 五百理
 Duloxetine(DXT)の増量によりセロトニン症候群をきたした反復性うつ病性障害の症例を報告した。患者は50歳女性で,9年前からうつ病相を繰り返している。今回は断薬からうつ症状が再燃し昏迷状態となって当院に入院となった。DXTを20mgから開始し1週間後に40mgに増量したところ,錯乱状態となり,発汗,発熱,ミオクローヌスが出現,臨床症状からセロトニン症候群と診断した。その後DXTの中止により症状は改善,電気けいれん療法を導入しうつ症状は速やかに改善した。本症例は昏迷状態での入院であったため,精神症状の増悪との鑑別に苦慮しセロトニン症候群の発見が遅れたという経緯があった。また悪性症候群との鑑別,および診断の観点から若干の考察を行った。
Key words : serotonin syndrome, duloxetine, recurrent depressive disorder


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