●Levetiracetamの薬物動態
渡邊さつき 松浦雅人
Levetiracetamは成人部分てんかんの部分発作に対する併用療法の適応で発売予定(2010年7月現在)の新規抗てんかん薬である。Levetiracetamを経口投与すると、血中濃度は用量依存性に直線的に増加し、投与1.3時間後に最大血中濃度となる。半減期は6~8時間で、1日2回の投与を行うと24~48時間で定常状態となる。海外では小児への投与量は成人の130~140%とし、高齢者では腎機能に応じて減量することが推奨されている。腎機能障害がある場合は、クレアチニンクリアランスを見ながら投与量を調節する。Levetiracetamは約6割が血中のカルボキシラーゼにより代謝されL057となり、尿中に排泄される。蛋白結合率が低く肝酵素による代謝を受けないため、薬物相互作用はほとんどない。これらの特徴からlevetiracetamは臨床的に使用しやすい薬剤であると考えられ、今後のてんかん治療への貢献が期待される。
Key words : levetiracetam, antiepileptic drug, pharmacokinetics, drug interaction
■原著論文 ●統合失調症の外来初発症例に対するolanzapine口腔内崩壊錠の導入――その有効性と安全性について――
窪田幸久
本研究の目的は、統合失調症の初回発症患者を対象としたolanzapine口腔内崩壊錠による外来維持治療下での有効性と安全性を検討するものである。今回評価対象とした14症例は、外来患者のうち経過観察の後、ICD-10でF20と確定診断を下した初発統合失調症患者であった。評価開始時点では、興奮、幻覚・妄想といった急性転化を伴わない症例が主体で、意欲低下や疎通性不良、社会的な引きこもりが強いといった陰性症状を主訴とする症例群であり、12週にわたり以下の評価項目について検討した。精神症状についてはPANSSを主要評価に、副次評価としてDAI-10、Euro-QOL、GAF各評価も実施した。安全性については血液検査などの臨床検査、錐体外路症状についてはDIEPSSを用いた。結果、有効性に関しては、olanzapine口腔内崩壊錠導入後の4週後、8週後、12週後とPANSS評点については経時的に有意な改善を見た。また、開始後48週まで観察した治療継続性に関しては、14例中11例(78.6%)が中止脱落なく継続した。安全性の面からは、錐体外路症状は全例とも認めず、体重増加から1例が中止脱落となった。統合失調症の確定診断前、いわゆる前駆期、前駆症状とアットリスク精神状態における薬物治療のあり方についても考察を加えた。
Key words : schizophrenia, early intervention, olanzapine orally disintegrating tablets, first episode, at-risk mental state