●症状緩和のためのコミュニケーションスキル
木下寛也
近年、緩和ケアチームを中心に精神科医ががん医療に関与を求められる機会が増している。そこで、がん患者およびその患者と関わる際のコミュニケーションの基本について、がん告知に関するコミュニケーション法「SHAREプロトコール」を参考に示した。コミュニケーションの目的としては、1)患者・家族との関係性の構築、2)患者の包括的症状評価、3)診断・治療の説明を中心に解説した。評価においては、今後さらに問題になる高齢がん患者に関する認知機能の評価、認知障害患者における疼痛の評価の例を呈示した。また、がん患者の家族へのコミュニケーションについては、1)患者の代弁者としての家族、2)家族自身の問題に焦点を当てる、3)家族間の問題に焦点を当てるなどについて解説するとともに、終末期の問題については、わが国における「望ましい死」の概念を呈示した。
Key words : communication, patient distress, family member distress, comprehensive assessment
●がん患者における不眠
木村元紀 松島英介
がん患者は、がんそのもの、また治療や社会的な状況から睡眠障害に悩まされることが多い。しかし、これまであまり注視されてこなかった。本稿では、がん患者の睡眠障害についての概論を述べる。
Key words : sleep disorder, patients with cancer
■原著論文 ●Aripiprazole単剤による6ヵ月以上長期継続投与33例の有用性の検討
吉川憲人
Aripiprazole単剤にて6ヵ月以上長期継続投与できた33例の有用性を検討した。33例のaripiprazole平均投与期間は18.5ヵ月であり、平均開始用量は12.1mg/日、平均最大投与量は21.6mg/日であった。33例中、具体的な就労・学業への復帰および就労への取り組みが17例(51.5%)、社会復帰プログラムに参加が7例(21.2%)、明らかな日常生活機能の改善が7例(21.2%)にみられ、合計31例(93.9%)において具体的な日常生活・社会生活機能の改善を確認した。また、14例(42.4%)において、前治療薬による副作用が消失もしくは軽減していた。さらに、aripiprazole投与後、幻覚・妄想のみならず表情変化欠如・自発的動きの減少・会話量の貧困・会話の内容・身だしなみと清潔度なども投与6ヵ月以内に57.6%~75.8%の範囲で明らかな改善を示していた。Aripiprazoleは、長期投与に至れば社会復帰や日常生活機能改善を目指す上で有用な薬剤と考えられた。
Key words : effectiveness, aripiprazole, monotherapy, schizophrenia, long-term, daily life function
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