●統合失調症の外来維持治療下におけるolanzapine口腔内崩壊錠の切り替え導入――その有効性と安全性について――
窪田幸久
本研究の目的は統合失調症患者を対象としたolanzapine口腔内崩壊錠による外来維持治療下での有効性と安全性を検討するものである。近年,新規抗精神病薬による薬物治療の選択肢が広がり,外来通院治療に新たな可能性が開けている。当院ではこれまでrisperidoneを第一選択肢として薬物治療にあたってきたが,治療を継続する中で治療抵抗性の症例や,認知機能・QOLの観点から,また服薬継続に関する薬剤の飲み心地やアドヒアランスの低下等から治療効果に不満を持つ事例が散見されてきた。こうした症例を対象にolanzapine口腔内崩壊錠を用いることで,ICD―10によって統合失調症と診断された18例を24週にわたり以下の評価項目について検討した。精神症状についてPANSSを主要評価に,副次評価としてDAI―10,EuroQOL,GAF各評価も実施した。安全性については血液検査などの臨床検査,錐体外路症状についてはDIEPSSを用いた。結果,olanzapine口腔内崩壊錠に切り替え4週後,8週後,12週後とPANSS評点については経時的に有意な改善をみた。24週まで観察した治療継続性に関しては18例中12例(66.7%)が中止脱落無く継続した。一方で体重に関しては1例を除いて全例で体重増加が認められ,12週後で平均2.9kgと有意に増加した。1例では6kgの体重増加で中止扱いとなった。また,副次評価であるDAI―10,EuroQOL,GAF評価においても経時的に有意な改善も認められた。Olanzapine口腔内崩壊錠による薬剤の飲み心地や維持治療に重要なアドヒアランス向上の可能性も示唆された。
Key words :olanzapine orally disintegrating tablets, switching, efficacy and safety, adherence, QOL
●統合失調症急性期症状に対するolanzapineの安全性と有効性――Olanzapineの開始時1日投与量の違いに基づく検討――
倉持素樹 小野久江 藤越慎治 時本敏充 西馬信一 高橋道宏
1,123例の急性期統合失調症に対するolanzapineの一般診療下における安全性・有効性を検討するため特定使用成績調査を行った。Olanzapine投与後,錐体外路症状や過鎮静の発現は低かった。体重は平均0.83±2.58kg増加し,4.8%に血糖型の悪化を認めた。また総コレステロールの上昇が10.24%,トリグリセリドの上昇が11.03%で認められ,忍容性にも大きな問題はなかった。また,陽性症状は改善し,olanzapineの開始時1日平均投与量が多いほど,olanzapine以外の抗精神病薬の開始時1日投与量が少ないほど,6週後の症状の改善が大きかった。Olanzapine開始時投与量別の解析では,陽性症状が重い症例ほど開始時から高用量のolanzapineが使用され,6週間後の陽性症状は開始時用量の違いによらず同程度であった。錐体外路症状や過鎮静の発現に大きな違いはなく,体重・血糖・脂質の変化も違いは認めなかった。以上より,急性期統合失調症に対し臨床経過や症状にあわせて十分量のolanzapineを投与し,かつolanzapine以外の薬剤投与を見直すことは,陽性症状を改善し,錐体外路症状を悪化させない忍容性の優れた治療となる可能性が示唆された。
Key words :schizophrenia, olanzapine, acute phase, dosage, observational study