●うつ病治療とresilience:慢性うつ病に対するCBASPの視点から――慢性うつ病の精神療法CBASPの理論と技法――
中野有美 古川壽亮
CBASP(Cognitive―Behavioral Analysis System of Psychotherapy:認知行動分析システム精神療法)は,慢性うつ病に特化した精神療法として,2000年5月にNew England Journal of Medicine誌に発表された驚異的な治療成績で一躍脚光を浴びるようになった。CBASPを考案したMcCulloughが臨床の場から抽出した慢性うつ病の精神病理は,Piaget学派の発達段階理論を用いて説明されている。その介入内容は,対処方法質問票を用いた“状況分析”(Situational Analysis:SA)と,これまで患者を誤って扱ってきたであろう重要他者の行動と治療者の促進的な行動とを明示的に比較・弁別させる“対人弁別訓練”(Interpersonal Discrimination Exercise:IDE)からなる。
Key words :CBASP, chronic depression, SA, IDE
●Resilienceの視点からみた慢性うつ病への認知行動療法(CBT)とその実践
仲本晴男
当センターで実践している慢性うつ病の認知行動療法(CBT)を,レジリアンスという視点から捉えなおした。治療構造としては作業療法を組み込んだうつ病デイケアとして位置づけ,CBTは集団療法として行い,プログラム上にも様々な工夫をこらすことによってレジリアンスを高めている。特に就労・復職支援に力を入れているが,CBTは休職に至る前の脆弱となったメンタルヘルスを強化するとともに,休職中の回復力の強化,復職後の再発予防という,うつ病における各病相期のレジリアンスを強化することができると考えられる。慢性うつ病に対するCBTがわが国に定着するためには,独自の歴史と文化を取り入れた市民にわかりやすいCBTの開発が必要ではないだろうか。
Key words :chronic depression, cognitive behavioral therapy:CBT, resilience, day care