●統合失調症急性期治療におけるolanzapine口腔内崩壊錠の可能性
吉川憲人
耕人会札幌太田病院では地域連携および院内チームプレーを方針のひとつとしており,急性期統合失調症の治療においても維持期を念頭に早期から多職種の関与を心がけている。今回olanzapine口腔内崩壊錠を用いて,ICD―10で診断された統合失調症の急性期症状を示す外来患者および医療保護を含む入院患者50例(男性29例,女性21例)に対する6週間投与の治療効果および服薬コンプライアンスを評価した。有効性に関しては,olanzapineを20mgまで増量しても効果が不十分であった3例が投与を中止したが,全体的にはBPRSで評価した陽性症状および興奮症状が有意に改善し,ACESでも過鎮静は認められず,また,92%の患者が服薬に積極的になった。投与方法としてolanzapineの単剤治療を試みたが,のべ28例にquetiapineやrisperidone内用液などの抗精神病薬が併用され,うち2例では緊急避難的にhaloperidolが点滴静注された。抗パーキンソン薬は9例に併用された。安全性に関しては,問題となるような新たな錐体外路系副作用はなく,全体として体重増加も少なく,血糖値に関する問題も認められなかった。今回の結果から,olanzapine口腔内崩壊錠は,精神運動興奮が活発な患者にも非侵襲的な投与が可能であり,アドヒアランスの改善も期待できることが示された。そして,治療初期から多くのスタッフの関与が容易になるため,olanzapine口腔内崩壊錠は,継続したチーム医療を構築する上で有用な薬剤,剤型であると考えられた。ただし,服薬しやすい剤型とはいえ,特にコンプライアンス不良例においては投与前の十分な説明とインフォームドコンセントが重要である。
Key words :acute phase schizophrenia, olanzapine, orally disintegrating tablet, team medicine
●Olanzapineによる急性期治療後のoutcomeに関する検討――治療継続からみたolanzapineのtreatment effectiveness――
杉山克樹 中田信浩 松木武敏 藤井真春 重本 拓
急性期治療をolanzapineによって治療された46例のうち,12週間の観察期間途中で症状軽快のため転院となった2例を除く44例で約3年後に追跡調査を行い,olanzapine治療継続の有無,精神症状および社会活動参加状況等を検討した。追跡調査までの平均期間は,2.7±0.5年で,44例中25例(56.8%)はolanzapine治療を継続していた。患者の自己判断による服薬中止の6例を含め,中止理由として最も多かったのは,患者の自己都合・自己判断で,統合失調症の長期治療の継続の困難さが示されるとともに,効果不十分,または副作用等で他剤へ変更となった症例は6例であり,服薬継続という観点からolanzapineの治療有用性が示される結果であった。また,olanzapine治療継続の25例のうち入院中の症例は2例(退院拒否)で,追跡調査期間中に再入院をきたした5例も含め23例は外来通院中で,うち12例では,積極的な社会参加がされており,維持期を見据えたolanzapineによる急性期からの治療の有用性が示唆された。入院中の2例を含め,急性期観察期間終了後から今回の追跡調査時までの約3年間に再入院歴のある症例は7例であった。
Key words :long―term outcome, treatment effectiveness, remission, olanzapine, social participation