●うつ病の寛解とQOL
稲田 健 馬場寛子 石郷岡純
近年,慢性疾患の評価においては,症状の重篤度を評価することに加えて,生活の質(quality of life:QOL)についての評価が求められている。うつ病も高い有病率を有する慢性再発性疾患であり,日常生活に関する多くの支障や制限を生じ,QOLを著しく低下させる。うつ病により低下したQOLは,うつ病を寛解状態まで治療したとき,一般人口と同程度まで回復する。また,治療が寛解に至らなかった場合には,うつ病の再燃・再発,慢性化などの問題を生じ,QOLは改善せず,患者の満足度も回復しない。したがって,QOLの観点からもうつ病の治療においては寛解を目指す必要がある。本稿では,うつ病治療において問題となるQOLの構成要素,評価尺度について検討し,うつ病治療における寛解とQOLに関する先行研究を概観した。
Key words :depression, remission, recovery, health―related quality of life
■総説 ●統合失調症患者の社会復帰とアドヒアランス向上
樋口輝彦
統合失調症治療の最終的な目標は患者の社会復帰にある。これを実現するためには,社会復帰のための受け皿の整備が重要であり,地域の中で障害を持つ人と持たない人が共生していくノーマライゼーションの考え方の定着も必要である。患者自身の社会復帰へのスキル獲得も重要であり,SSTに積極的に取り組む施設が増えてきている。医療者側の視点も,幻覚・妄想などの精神病症状だけではなく,陰性症状や認知機能障害による生活のしづらさを改善し,患者の活動性をいかに高めるかという方向に大きくシフトしてきている。社会復帰のためには,特に維持期における再発を防止することが重要であり,現在では,治療の成功率を高めるためには患者自身が主体的に治療に関わるアドヒアランスの向上が絶対に必要であるという考え方が主流になっている。アドヒアランスを高めるためには時間をかけた疾患教育が重要であるが,薬物療法においても服薬回数,副作用,剤形などの面におけるきめの細かい工夫が求められる。
Key words :schizophrenia, social rehabilitation, prevention of relapse, drug therapy, adherence
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