■短報 ●Paroxetineの退薬で二重身が出現した1例
高田知二 高岡 健 内田あおい 小島久典
Paroxetineは2000年11月に発売以来,その効果と安全性が強調され,精神科医のみならず,他科の医師からも処方され発売量が伸びている。これまでもその退薬症状については様々な報告がなされているが,二重身を呈したものは現在のところ見受けられない。初診時45歳の女性患者は,パニック障害,身体表現性障害の診断でparoxetine20mg/日を8ヵ月余り服薬していたところ,自らの判断で中断することにより二重身が出現した。その体験は,自分の身体がそこにあると実感したまま,その身体から離れて「お花畑の上を飛んでいく」というものであった。夢幻様状態を呈する中,実体的意識性により見えない二重身を体験するといった場面型の要素を有する鏡像型の二重身と考えられた。Paroxetineの退薬によって,意識変容を背景に二重身という稀な精神症状をきたすことがあることには注意すべきである。
Key words :selective serotonin reuptake inhibitor(SSRI), paroxetine, withdrawal, double, dream―like state
●当院における統合失調症患者に対する初回治療時の抗精神病薬選択の現状
片桐秀晃 高橋輝道 三上一郎 澤 雅世 馬場麻好 中原光史 村岡満太郎
統合失調症治療のアルゴリズムがさまざま提唱されているが,抗精神病薬の選択の実態についての報告は少ない。そこで当院での統合失調症患者における初回治療時の抗精神病薬選択の現状を報告した。対象は2002年1月から2006年12月に当院で初回治療をおこなった統合失調症患者67人であった。初回治療時の薬物選択は単剤でrisperidone47人,olanzapine13人,perospirone1人,haloperidol注射製剤5人,未投与1人であった。初回治療時の抗精神病薬単剤で6ヵ月間治療できたのは21人(31.3%)であった。脱落後の薬物選択の概要は,risperidone脱落例29名中6人がperospironeへの変更または追加,olanzapine脱落例10人中5人がrisperidoneへの変更または追加,haloperidol注射製剤脱落例5人中3人がrisperidoneへの変更であった。限界のある調査だが抗精神病薬選択の現状についての1つの資料となればと考えて報告した。
Key words :choice of antipsychotics, first time treatment, schizophrenia
■総説 ●海外データから考察するOsmotic Controlled―Release Oral System Methylphenidateのプロフィール
松本英夫
注意欠陥/多動性障害(AD/HD)は小児に高頻度にみられる精神障害である。AD/HDの薬物治療では有効性や安全性に関するエビデンスが豊富な中枢刺激薬であるmethylphenidate(MPH)が広く使われている。しかしMPH速放錠(MPH―IR)は作用時間が3〜4時間と短く,1日に複数回服薬する必要があり,アドヒアランスの低さが問題である。そこでアドヒアランスを改善するために開発されたOROS(Osmotic Controlled―Release Oral System)MPHは,急性耐性獲得を回避するためのascendingな薬物動態に基づき12時間の持続的効果を生じるMPH徐放錠である。海外の臨床試験の結果によれば,その効果はMPH―IRと同等以上で,副作用プロフィールもほぼ同じである。さらにOROS MPHは,その薬物動態特性より急激にドパミン神経活性の亢進を引き起こさないことからMPH―IRに比べて依存リスクは小さいと考えられる。
Key words :attention‐deficit/hyperactivity disorder (ADHD), methylphenidate (MPH), Osmotic Controlled―Release Oral System (OROS), dopamine, dependence
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