●認知機能障害の病態機序――画像診断・神経生理検査からの評価――
武井邦夫 山末英典 笠井清登
認知機能障害の脳病態を把握するためのツールとしては神経画像・神経生理検査が広く用いられている。本章ではまず統合失調症の認知機能障害を神経画像・神経生理検査から評価することの意義について,認知機能障害の責任部位の同定に加え,統合失調症のエンドフェノタイプとしての観点から述べる。後半では,認知機能障害と神経画像との関係について,最近注目されている拡散テンソル画像(diffusion
tensor imaging;DTI)を例にとって概説する。統合失調症は単一の脳部位の障害ではなく,複数の脳部位間の機能的な統合不全が本態であると考えられている。この機能的なconnectivity障害の基盤としては,白質神経線維束の構造異常が推定されており,白質の統合性を評価するツールとしてDTIが用いられている。DTIにより統合失調症での異常が報告されている脳梁,帯状束,鉤状束,脳弓などの神経線維束について,認知機能障害との関係を概観した。
Key words :schizophrenia, cognitive dysfunction, diffusion tensor imaging, white matter, fornix
●認知機能評価バッテリーについて
椎名明大
認知機能を評価するための神経心理検査は多数存在するが,統合失調症患者の認知機能障害を適切に査定するために標準化された評価バッテリーは未だ確立されたとはいえない状況にある。本稿においては,認知機能の分類(作動記憶,注意機能,実行機能等)とそれぞれの要素における代表的な神経心理検査について簡潔に述べる。また,統合失調症患者に対する認知機能評価バッテリーの考え方を説明し,その具体例として,Behavioural
Assessment of the Dysexecutive Syndrome(BADS),Brief Assessment of Cognition in
Schizophrenia(BACS),Cambridge Neuropsychological Test Automated Battery(CANTAB)等について紹介する。
Key words :cognitive function, test battery, Behavioural Assessment of the Dysexecutive Syndrome (BADS), Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia (BACS), Cambridge Neuropsychological Test Automated Battery (CANTAB)