●「眠れない」を診分ける
三島 和夫
不眠症状は精神疾患に起因するものだけに限らず,さまざまな睡眠障害に共通して認められる。そのため鑑別診断で最も大切なことは不眠症(原発性不眠症,精神疾患に起因する不眠)以外の睡眠障害を適切に鑑別診断することである。各種睡眠障害に特徴的な臨床症状を丁寧に聴取し,睡眠日誌を記載させ,必要に応じて夜間睡眠ポリグラフ試験や反復入眠潜時試験などを併用して,確定診断と重症度の判定を行う。
Key words:insomniac symptom, quality of life, primary insomnia, chronic insomnia, The International Classification of Sleep Disorders
●認知症における問題行動
東 眞吾 数井 裕光
認知症患者にしばしば認められる妄想,幻覚,興奮などの行動・心理症状を包括する概念としてBPSD(behavioral and psychological symptoms of dementia)という用語が使用されている。BPSD の発現には,脳の損傷による機能低下とその機能低下を有しながら日常生活に適応しようとする患者の行動とが関連している。それぞれのBPSD の発現機序がわかれば,その発現機序を考慮した対応法が選択できるので,BPSD を軽減させやすい。発現の機序が比較的よく考察されている症状として嫉妬妄想,徘徊と常同的周遊,人物誤認がある。本稿ではこの4 つの症状の発現機序とその機序に基づいて提案されている対応法を紹介した。また,奏功確率の高いBPSD の対応法を明らかにする目的で,我々が運営している「認知症ちえのわnet」を紹介した。
Key words:behavioral and psychological symptoms of dementia( BPSD), Alzheimer’s disease( AD), dementia with Lewy bodies( DLB), frontotemporal dementia( FTD)