●宗教は自殺予防に資するのか―日本人と自殺―
島薗 進 堀江 宗正
自殺を厳しく禁止するイスラームやキリスト教の影響力が強い国では自殺率は低い。しかし,宗教の公的影響力が弱い社会では,私的信念としての宗教が自殺の誘因となる可能性がある。前半では,世界自殺レポートの自殺率データと世界価値観調査,国内の県民意識調査と都道府県別自殺率から,このことを示唆する(堀江)。後半では,国内の宗教者による取り組みを見て,「禁止」型ではない自殺予防のモデルの可能性を探る(島薗)。
Key words:suicide prevention, religion, care, Japanese society
●精神科臨床において知っておくべき自死遺族の心理とニーズ
白神 敬介 川島 大輔 川野 健治
自死遺族は,近しい人を自殺で亡くすという経験によって,喪失から生じる強い感情ないし情緒的な苦しみを感じることがある。なかには,メンタルヘルス問題や自殺の危険性が生じる場合もある。また,遺族の悲嘆に有効なケアとなると考えられている自死遺族支援グループに対して,参加者である自死遺族と,グループの運営に携わる支援者とでは一部異なるイメージをもっており,両者の考えは必ずしも一致するわけではない。そうした自死遺族に適切な支援を提供するためには,支援者が先回りすることなく,遺族の状況やニーズを丁寧に把握することが重要である。
Key words:suicide survivors, support group, self-help group, principles of mutual aid