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■特集 若年性認知症に対する精神科の役割
●若年性認知症とは?
新井 平伊
 若年性認知症は近年多くの注目を浴び社会問題としても捉えられてきているが、精神科医療における理解や対応に関する認知度は低い。ここでは、特集の導入として、「若年性」という用語の持つ問題点をまずは取り上げ、①医学用語②年齢区分③対応する英語訳について論じた。そして、若年性アルツハイマー病(AD)は、生物学的および心理社会的観点から老年期ADに比べて病態がより重く包括的アプローチが重要であることから、またその診断には気分障害や妄想性障害との鑑別が必要であることから、精神科医の担うべき領域であることを概説した。とくに、身体的に問題がない若年性認知症の場合には、精神科急性期病棟での入院対応も充分可能であることも併せて述べた。
Key words:presenile dementia, early─onset Alzheimer’s disease, younger patients with Alzheimer’s disease, psychiatric approach

●若年性認知症はどのくらいの患者数になるのか?
池嶋 千秋  朝田 隆
 65歳未満で発症した認知症患者について、有病率および基礎疾患に関する調査を行った。2006年4月1日から2007年12月31日までの間に、茨城県、愛媛県、熊本県、群馬県、富山県、徳島県徳島市、神奈川県横浜市港北区の7地域を対象とし、医療、保険・福祉、行政、および認知症患者が関連する可能性のあるすべての機関に対し2段階の郵送アンケート調査を行った。アンケートは13,046機関に配布され、11,633施設から回答を得た(1次・2次調査平均回収率83.8%)。年齢または疾患が調査の対象外であった者を除いた2,133例(男性1,302例、女性823例、不明8例)を解析の対象とした。18~64歳人口における10万人対推定有病率は47.6人(95% CI:45.5-49.7)であり、推定患者数は約3万8千人であった。認知症の基礎疾患は脳血管性認知症(39.8%)が最多であり、次いでアルツハイマー病(25.4%)、頭部外傷後遺症(7.7%)、前頭側頭葉変性症(3.7%)、アルコール関連性認知症(3.3%)、レビー小体型認知症・パーキンソン病(3.0%)であった。本調査の結果は、平成9年に報告された結果と類似していた。
Key words:early onset dementia (EOD), epidemiology, prevalence, Alzheimer disease, vascular dementia

●若年性認知症の診断の手順と告知の問題
新井 平伊
 若年性認知症の診断手順は、老年期認知症のそれと基本的に変わりなく、臨床データをもとに除外診断の過程を経て、アルツハイマー病診断に至る。しかし、若年性認知症ではうつ病や妄想性障害との併存の判断や鑑別診断がとくに重要となる。その上で、臨床的な諸検査結果を家族を含めてきちんと伝えることが必要で、告知は治療を始める第一歩である。また、諸検査により異常が見られなかった場合や軽度認知障害と判断される際の告知についても概説した。
Key words: younger patients with Alzheimer’s disease, presenile, early─onset, diagnosis, disclosure

●アルツハイマー病:初老期発症型と老年期発症型の相違
中村 重信
 初老期アルツハイマー病(AD)は1907年Alzheimerによって記載されたが、その後老年期発症のものを含めてADと呼ぶようになった。しかし、臨床的に初老期ADは老年期ADと異なるところが、多くの臨床家によって経験されていた。本文では以下の点を強調したい。1.初老期ADの頻度は低いが、遺伝子異常などによる多様性がみられる。2.初老期ADでは前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉などの巣症状がみられるが、前頭側頭葉変性症との異同が問題となる。3.失認、失行、失語、遂行障害などの認知機能障害のほか、徘徊、暴行や自動車事故などの行動障害、妄想、抑うつ、不安、焦燥、興奮、脱抑制などの心理症状、てんかんやミオクローヌスなどの神経症状がみられる。4.初老期ADは進行が急速で、老年期ADより死亡率が高い。5.ADの治療薬でも初老期ADと老年期ADで効果の異なることがある。6.ケアについても初老期ADと老年期ADでは異なったアプローチが必要である。以上の点を留意して、初老期ADの診療に当たることが望まれる。
Key words:Alzheimer’s disease, early─onset type, late─onset type, symptoms, thelapeutic efficacy

●気分障害と若年性認知症をどう診分けるか─アルツハイマー病を中心に─
長谷川典子  山本 泰司  前田 潔
 65歳未満で発症する若年性認知症が注目されるようになり、気分障害との鑑別を求められるが、両者の鑑別は容易ではない。若年であっても、認知機能の低下が認められれば認知症を疑い、特にその中でも頻度が高いアルツハイマー病(AD)との鑑別を考えなければならない。ADは記憶障害で発症することが多く、徐々に進行する。気分障害は、経過の中で認知症に移行する頻度が高く、うつ状態はADの前駆症状である場合もあり、気分障害と認知症をスペクトラムとして考えることもできる。若年性ADを疑えば、認知症専門医へ紹介し、頭部画像検査や神経心理検査の施行後、臨床診断が確定されることが理想であるが、実際は不可能な場合も多い。抗うつ薬や気分安定薬を投与して薬物への反応を観察しながら、施行可能な検査をし、認知機能障害が徐々に進行する場合は、早期から塩酸donepezilを投与すると、ADの進行遅延に寄与すると考えられる。
Key words:mood disorders, early onset dementia, Alzheimer’s disease, depression, bipolar disorder

●妄想性障害と若年性認知症をどう診分けるか─レビー小体病を中心に─
東 晋二  井関 栄三
 レビー小体病 (LBD)は、認知機能障害やパーキンソニズムに加えて、幻覚・妄想などの精神症状を呈することが多い。そのため妄想性障害などの精神疾患との鑑別が問題となることがあり、特に若年発症例では診断に苦慮することも多い。本稿では、LBDの精神症状について妄想性障害との鑑別に焦点を当てて解説した。精神症状の特徴をふまえるとともに、背景にある認知機能障害を明らかにし、画像検査や神経心理検査を組み合わせることで正確な診断が可能となり、適切な治療・介護に結びつくことを強調した。
Key words:dementia with Lewy bodies, Parkinson’s disease with dementia, Lewy body disease, psychiatric symptom, delusional disorder

●アルコール多飲と若年性認知症をどう診分けるか
船山 道隆  加藤元一郎
 過剰飲酒は、脳血管障害などの合併症に伴う認知症や、頻度は低いが一次性アルコール性認知症を引き起こすことがある。一方で、若年性認知症の中の前頭側頭葉変性症 (frontotemporal lobar degeneration:FTLD) では時にアルコール多飲を引き起こすことがある。一次性アルコール性認知症と前頭側頭葉変性症の2つの鑑別点は以下の通りである。過剰飲酒が前者では先行するのに対して、後者は病気の進行とともにアルコール多飲が現れる。萎縮部位は前者では前頭葉優位であるものの全般的になりやすく、一方で後者は前頭葉と側頭葉に限られる。経過は前者が動揺し、改善することもありうるのに対して、後者は緩徐に進行する。記憶障害、失見当、作話は前者では認めるが、後者では少なくとも病初期には伴わない。失語は前者では認めず、後者では認めることがある。常同行為は後者に多い。身体合併症は前者がアルコール関連身体疾患を伴い、後者はALSなどの運動ニューロン疾患を伴うことがある。病理所見は前者がWernicke─Korsakoff症候群ないしは不明であり、後者はピック小体、ユビキチン封入体であるTDP─43やFUS陽性封入体が特徴である。
Key words:alcoholism, alcoholic dementia, frontotemporal lobar degeneration, frontotemporal dementia, orbitofrontal cortex

●若年性認知症に対する薬物療法
矢田部裕介  橋本 衛  池田 学
 若年性認知症の原因疾患は老年期以上に多様であり、また根治の可能性のある認知症も数多く含まれているため、さまざまな治療的介入が必要となる。薬物療法もそのひとつであるが、若年性認知症に限定した薬物療法のエビデンスは少なく、老年期認知症患者を主たる対象として得られたエビデンスに基づいた治療法が臨床場面では実践されている現状がある。本稿では、若年性認知症の代表的疾患であるアルツハイマー病、前頭側頭葉変性症、血管性認知症の薬物療法について紹介したが、これらの知見を若年性認知症患者に応用する際には注意が必要である。また、認知症治療の主体はあくまでケアを中心とした非薬物療法であり、ケアでうまくいかない場合に薬物療法を検討するという原則を忘れてはならない。
Key words:early─onset dementia, Alzheimer disease, vascular dementia, frontotemporal lobar degeneration, pharmacotherapy

●若年性認知症に対する非薬物療法
田渕 肇  鹿島 晴雄
 認知症に対する治療としては、塩酸donepezilがアルツハイマー病の中核症状を遅らせることがよく知られており、適応外使用であるがレビー小体病や血管性認知症に対する有効性も認められている。一方で認知症への非薬物療法については、はっきりとした効果が認められている介入方法が少なく、さらに若年性認知症に対する非薬物療法に関しては、未だ報告に乏しい。しかしながら、このことは認知症に対する非薬物療法が無効であることと同等ではなく、集団に対する均質的な介入が難しいことや、効果のエビデンスを得るのが難しいということを考慮しなければならない。若年性認知症の非薬物療法を考えるときには、若年であることによる社会的な背景、それぞれの患者の症状の特徴、さらには介護する家族のことも踏まえた、個人を対象とした関わりが重要である。根治療法が確立されていない認知症治療の現状を考えると、非薬物療法は重要な治療手段となりうる。
Key words:early onset dementia, presenile dementia, non─pharmacological therapy

●若年性認知症への産業医としての対応とリハビリテーション
荒井 稔  田谷 勝夫
 若年性認知症の病態生理等が次第に明らかになり、医学的診断・治療がより確実になされることによって、職域での就労継続が課題となっている。小論では、就労している最初期アルツハイマー型認知症と診断された症例に対し、産業医が診察し、その結果をふまえて関与し、紹介された専門医のSPECT等を用いた診断と抗認知症薬による治療がなされ、認知機能障害が就労可能な程度に維持された症例を紹介した。この症例から得られた就業継続対策等について「労働者の心の健康の保持増進に関する指針」における「四つのケア」についての留意点などを指摘した。また、現時点での若年性認知症についての疫学的研究や実際の事例なども紹介し、一定程度まで進行した場合には就労が困難になることをふまえ、本人の持つ病識を導きの糸として早期発見・早期治療の必要性を主張した。さらに、現在のリハビリテーションの方向性に検討を加え、社会生活および日常生活支援のために利用できる社会的資源について紹介した。
Key words:early─onset dementia, Alzheimer─type dementia, workplace, industrial physician, rehabilitation

●若年認知症に対する社会資源・制度の積極利用
宮永 和夫
 若年認知症のステージ別に利用可能な社会制度についてまとめた。初期段階では、傷病手当金、障害年金、障害者手帳(精神および身体)、障害者自立支援医療、中期には介護保険、後期には成年後見制度や権利擁護事業などがあり、それぞれの内容を説明した。これらの制度については、SWやMSWなどに任せるのでなく、医師自身が詳細を理解し、患者や家族のために活用すべきことを述べた。
Key words:young─onset dementia, health and welfare services for the elderly, services and supports for persons with disabilities act, transition support for employment, support for continuous employment

●若年性認知症の家族への支援
松下 太
 若年性認知症は、社会的役割の大きい時期での発症であるため、老年期の認知症に比べ家族への影響がより大きい。家族が抱える問題として、診断などの医療的問題、就労困難や若年性認知症の人が利用できる社会資源の少なさから派生する経済的問題、子どもや他の家族に与える心理的問題について取り上げ、家族を支援するために大変有効とされる家族会について、その意義や歴史、実際の活動を紹介した。また、家族支援の課題として、家族一人ひとりに、あるいは病気の進行に応じた対応の必要性、医療機関と家族を繋ぐ役割、本人の就労支援や若年性認知症の人が利用できる社会資源の開発、より身近な存在としての家族会のあり方についても持論を述べた。
Key words:early onset dementia, families support, families association

●若年性認知症のための施策
遠藤 英俊  佐竹 昭介  三浦 久幸
 若年性認知症に対する理解の促進や早期診断、医療、介護の充実はもとより、雇用継続や就労の支援、障害者手帳の早期取得や障害基礎年金の受給などに対する支援を行うことが喫緊の課題となっている。国は介護保険導入時に「初老期認知症」が特定疾病の一つとして介護保険サービスの利用が可能とした。また2008年厚生労働省は「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」において、今後の認知症対策をさらに効果的に推進し、「たとえ認知症になっても安心して生活できる社会を早期に構築する」ことを目標とした。特に若年性認知症施策は重点化され、短期的にはコールセンターの設置、連携担当者によるオーダーメードの支援を行うこと、就労支援ネットワークの構築、ケアのモデル事業の実施、国民に対する広報啓発、中長期的には介護サービスの評価、就労継続に関する研究が重点対策として、取り上げられた。
Key words:juvenile dementia, long term care insurance, emergency project of health policy for dementia in Japan

■研究報告
●全身性エリテマトーデスによる抑うつ(気分障害)から自殺に至った1例
原嶋華乃子  小林 聡幸  釜田 康行  菊地千一郎  加藤 敏
 全身性エリテマトーデス(SLE)の神経精神合併症(NPSLE)で自殺既遂に至る例は少ないといわれている。内科のSLEの活動性評価尺度でも抑うつの扱いは軽い。10歳台前半に罹患した混合性結合組織病が30歳台半ばにSLEに進展し、NPSLEによる抑うつから自殺既遂した女性例を報告した。抑うつがいったん軽快したのち、30歳台後半で再発してから、自己免疫性肝炎の合併や、修正型電気けいれん療法(mECT)時の麻酔科的合併症などで、治療に難渋した。最終的にmECTで抑うつが軽快しつつあったが、外泊中に自殺既遂した。本例の自殺に至る経過を検討すると、NPSLEの診断、とりわけ、SLEに伴う抑うつ症状の病態把握と治療が困難なことなど、内科医との意見の相違、合併症の発生などNPSLE治療にまつわるいくつかの問題が改めて浮き彫りになった。本症例では実際に内科医と話し合い、NPSLEであることを証明する客観的指標がない現況では、SLEそのものも、ステロイドの使用も、慢性疾患に罹患していること自体も加重的に作用すると考え、早期に免疫抑制剤の使用を試みるなどの治療を行うことが必要と考えられた。
Key words:systemic lupus erythematosus, central nervous system, depression, suicide, immunosuppressive agents

●うつ病休職者を対象とした集団認知行動療法の効果検討
田島 美幸  岡田 佳詠  中村 聡美  音羽 健司  沼 初枝  大野 裕  秋山 剛
 職場復帰のための集団認知行動療法に参加したうつ病休職者55名について、介入前後で抑うつ症状(BDI─Ⅱ)、非機能的認知(DAS24─J)、自尊感情(SE)、認知や行動の変容に関する知識、復職に対する意識の変化等について検討した。7セッション(週1回、80分)を1クールとして、休職が長期化する焦燥感や復職に関する不安感等をテーマに認知行動療法の技法を用いた介入を行った。その結果、介入前後ではBDI─Ⅱ、DAS24─J、SEともに有意に改善された。また、復職に対する意識を問う3項目では「復職に関する不安や悩みを他の人に話す機会を持っている」で得点が有意に上昇し、「復職のことを考えると気持ちが焦る」で得点が有意に低下した。本結果から、うつ病休職者を対象とした復職支援プログラムに認知行動療法的なアプローチを導入することで、うつ症状の緩和や復職への不安感や焦りが軽減される可能性が示唆された。
Key words:Cognitive Behavioral Group Therapy, depression, return to work

■臨床経験
●Aripiprazoleの投与が有効であった強迫性障害の3症例─精神症候学の視点からの考察─
川上 正憲  中村 敬  中山 和彦
 Aripiprazole(APZ)の投与が有効であった強迫性障害(OCD)の3症例を提示し、精神症候学の視点からの考察を行った。APZ単剤で効果が認められたのは1例、SSRI(paroxetine)との併用療法で効果が認められたのは2例であった。これら3症例をPigottらが提唱するOCDの分類に基づいて考察を行った。このうちAPZ単剤で効果が認められた1症例は「不完全・習慣スペクトラム群」に該当した。その他の2症例(SSRIとの併用療法)は「危険に対する評価の変異した群」に該当した。なお、3症例すべてにおいて、入院症例ではOCDに対する入院森田療法、外来症例ではOCDに対する外来森田療法を行った。
Key words:obsessive─compulsive disorder, aripiprazole, augmentation, psychiatric symptomatology, Morita Therapy

●耳管開放症と両側慢性硬膜下血腫を合併した脳脊髄液減少症の1例
加藤 悦史  千田 真典  星野 有美  榎本 由華  松尾 直樹  犬飼 千景  兼本 浩祐
 体位性頭痛にて発症し耳管開放症と両側慢性硬膜下血腫を合併した脳脊髄液減少症の1例を報告する。頭痛にて内科に通院し、耳鳴、難聴にて耳鼻科に通院していたが、日中の眠気、抑うつ気分、全身倦怠感を呈し、うつ病の疑いにて当科紹介となった。悲哀感が感じられず簡易検査で記銘力障害が目立ち、うつ病としては非定型な病像から緊急で頭部MRIを撮影したところ両側慢性硬膜下血腫が判明した。脳神経外科にて血腫除去術が施行され、その後の精査で脳脊髄液減少症と診断された。体位性頭痛、耳管開放症、慢性硬膜下血腫は脳脊髄液減少症に続発して起こったものと考えられ、それぞれの科にて別々の診断がなされている場合でも全体として複合的に関連がある場合があり、他科との連携の重要性を改めて強調するとともに症候学的考察を加えた。
Key words:cerebrospinal fluid hypovolemia, bilateral subdural hematoma, patulous eustachian tube, depression

●児童相談所における精神科医の役割に関する一考察─注意欠如・多動性障害と素行障害を持つ一男児に対する児童相談所の支援を振り返って─
山本 朗  水崎 佳恵  小野 善郎
 児童相談所(児相)は、18歳未満の子どもの相談に対応する児童福祉機関である。相談内容は発達、非行、虐待等の多岐にわたる。近年、児相の関与する子どもの精神保健ニーズが高いことが知られ、児相における精神保健の視点の重要性が指摘されている。本稿では、非行相談で児相の介入が始まった一男児に対する支援過程を振り返り、児相の精神科医の役割を考察する。男児は注意欠如・多動性障害と素行障害を持ち、児相の多職種の援助・治療を受けることで状態が改善した。精神科医は、スタッフに対し精神保健と精神科医療の視点で助言・指導を行った。日本の児相は児童福祉サービスの中に精神保健についての評価や支援も組み込み、精神科医がスタッフとして関わるユニークなシステムを有することから、子どもの地域精神保健にも重要な役割を果たす可能性を持っている。児相の精神科医には精神科チーム医療の中で診断者と助言・指導者としての重要な役割がある。
Key words:attention─deficit/hyperactivity disorder, conduct disorder, Child Welfare Center, psychiatrist

●Lithium関連副甲状腺機能亢進症による意識障害を呈した双極性感情障害の1例
中山 寛人
 Lithium開始後に高Ca血症に由来すると考えられる意識障害を繰り返し、精査にて副甲状腺機能亢進症の存在が明らかとなった双極性感情障害の75歳男性例を報告した。経過中、intact PTH高値、頸部エコーで左上極に副甲状腺腫大を認め、外科的に摘出された。病理組織学的には腺腫であった。術後1ヵ月後にlithiumを中止し、sodium valproateで経過をみているが、血清Caとintact PTHはともに正常化し、現在のところ情動は安定し精神症状はみられない。1973年lithium関連副甲状腺機能亢進症(lithium─associated hyperparathyroidism、以下LAH)が報告されており、本例のlithium内服と副甲状腺病変は関連する可能性がある。元々血清Ca濃度がやや高値であり、潜在していた副甲状腺病変がlithium開始で顕在化したのではないか、と推測する。本例の精神症状に部分的にLAHが修飾していた可能性はあるが、双極性感情障害の存在も念頭に置き、今後慎重に経過をみていく必要があると考える。
Key words:hyperparathyroidism, hypercalcemia, lithium, bipolar disorder

●不安を前景にした大うつ病性障害に対しparoxetineとtandospironeの増強療法が奏効した2症例
加藤 晃司  安藤 英祐  山田 桂吾  品田 正幸 竹内 知夫  松本 英夫
 Tandospirone(TDS)は5─HT1A受容体アゴニスト作用を持つアザピロン誘導体に属する抗不安薬である。TDSは本邦では神経症や心身症の抑うつ気分や不安に対する適応がある。また、最近の研究では大うつ病性障害(major depressive disorder:MDD)に対するTDSの増強療法の有効性やselective serotonin reuptake inhibitors(SSRI)治療抵抗性の不安障害に対するTDSの増強療法による抗不安効果増強の有効性についての報告がある。今回我々はparoxetine(PRX)に治療抵抗性の不安を前景としたMDDに対してTDSを追加したところ、不安症状と同時に抑うつ気分も著明に改善した2症例を経験した。本邦での不安を前景としたMDDに対するPRXとTDSの併用の有効性にかんする報告はなく、今後はさらなる症例の蓄積が必要である。
Key words:tandospirone, paroxetine, augmentation, major depressive disorder, treatment resistant depression


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