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星和書店
今月の新刊 next

精神科臨床の星影

精神科臨床の星影

柔らかい感性で綴る芳醇な臨床世界

杉林 稔 著
四六判 上製 240頁  ISBN978-4-7911-0741-4〔2010〕
定価 3,780円(本体3,600円)

惜しくも早世した若き精神科医、安克昌と樽味伸。著者は二人の面影を追い続ける。震災以降、外傷性精神障害の治療にのめり込んだ安の「魂のふるえ」。素朴で平易な言葉を慈しむように使った樽味の深い優しさ。さらに中井久夫、神田橋條治、宮沢賢治にまで射程を広げ、臨床家の生と死、臨床の言葉についての思慮深い考察が、柔らかい感性によって綴られる。野心的仕掛けによって芳醇な臨床世界を開示することに成功した好著。

パーソナリティ障害 治る人、治らない人

パーソナリティ障害 治る人、治らない人

豊富な臨床経験と知識からパーソナリティ障害の治療可能性・不可能性を追究した画期的テキスト!

マイケル・H・ストーン 著
井上果子 監訳 井上果子、田村和子、黒澤麻美 訳
A5判 並製 456頁  
ISBN978-4-7911-0742-1〔2010〕
定価 4,095 円(本体3,900円)

「すべてのパーソナリティ障害が治療可能とは限らない。治せないパーソナリティ障害もある」――治療の成功可能性が高い患者とはどのような患者か?どの精神療法がパーソナリティ障害の適応可能性に改善をもたらすのか?
著者のマイケル・ストーン博士は長年にわたり、多くのパーソナリティ障害の研究・治療に携わっている。本書は、著者が自らの経験と豊富な知識から体系的に多くの事例を交えて提唱する画期的な書である。

パーソナリティ障害 治る人、治らない人

エキスパートによる
強迫性障害(OCD)治療ブック

強迫性障害はここまで治る!
OCDの理解、治療の最前線を余すところなく紹介!

編集代表:上島国利
企画・編集:松永寿人、多賀千明、中川彰子、飯倉康郎、宍倉久里江
編集協力:OCD研究会
A5判 並製 252頁  
ISBN978-4-7911-0736-0〔2010〕
定価 2,940 円(本体2,800円)

わが国のエキスパートがOCDの基礎知識や治療法を余すところなく紹介した待望の書。有効性が実証されている治療アプローチが具体的、実践的に解説されているため臨床で活用しやすい。資料としてY-BOCS日本語版、自己記入式Y-BOCS日本語版、Dimensional Y-BOCS日本語版も添付。強迫性障害治療における必携の一冊。OCDはここまで治せる!

  雑誌の最新号 next

精神科治療学
定価 3,024
月刊 精神科治療学 第25巻7号

特集: ADHD臨床の新展開 II

ADHDの最新治療を前号に引き続き特集。今号では,ADHD治療薬が臨床現場に及ぼした影響,治療アルゴリズム,薬物療法の効果と限界,薬物療法の実際など,ADHDの薬物療法の現状と課題を取り上げる。また,小児科領域や成人ADHDの治療,さらにSST,行動療法,サマートリートメントプログラム,ペアレントトレーニング,特別支援教育,情緒通級との連携,地域におけるケアシステム,就労上の支援など,心理社会的支援について取り上げる。加えて ADHDを取り巻く当事者の状況も紹介。精神科医療のみならず,教育現場や産業精神保健分野においても役立つ特集。

臨床精神薬理
定価 3,045
月刊 臨床精神薬理 第13巻8号

特集:広がる双極性障害の概念と抗うつ薬を巡る問題

気分障害で治療中の患者が100万人を超えている。双極性障害の概念の拡大は臨床現場に混乱をもたらし、抗うつ薬投与の是非が問われる。本特集では、双極性障害の診断や概念を見直し、抗うつ薬による躁転や遷延化、activation syndrome、自殺との関連など、臨床実践の上で重要なノウハウを提供する!

精神科臨床サービス
定価 2,310
季刊 精神科臨床サービス 第10巻3号

特集:家族のリカバリーをどう支援するか

「援助者としての家族」支援から、「生活者としての家族」支援、そして家族自身のリカバリー支援へ――。本特集では、家族の側から、精神障害をもつ人と暮らす家族の実態と、真に求められている支援への期待が語られ、家族会を中心とした支えあいの活動が報告される。専門職の側からは、それぞれの現場における家族支援の実践と、関係作りから心理教育にいたるまでの基本技術が提供される。家族・当事者・専門職が一堂に会し、今求められる家族支援を多面的に検討する。

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こころのマガジン

ブックフェアとは言えない日本のブックフェア

 楽天、ヤフーショッピング、アマゾンなど、ネット上でショッピングができるので、便利になりました。ただ一度利用すると、その会社からどんどん案内がきます。その中の一つに「完全赤字、採算度外視、最安値」という文字が目立つ広告があり、確かに安いので一度購入しました。それから毎日と言うほど広告案内が送られてくるのですが、どれもすべて「完全赤字、採算度外視」なんです。このお店、すべてを完全赤字で販売していたら、つぶれてしまうと思うのですが。それにしても威勢がいいお店で、一日に5本くらいご案内が来て、すべて「完全赤字」なんですね。確かに「完全赤字」と言う文字は、目立つように大きな赤色の文字で書かれています。
 ネット上の情報は、誰もチェックしていないんですね。怪しい情報も沢山あります。出版物も、ネット上で販売されていますが、再販製品のため、上記のような派手な安売りは見当たりません。これが、電子書籍として販売されるとなると、再販物ということになるのでしょうか。不明です。
 電子書籍になると、著者が出版社に頼らず直接販売するようになるだろうという出版社不要論があります。ただ、こうなるとチェック機能が全くないことになります。例えば学術誌に掲載される論文。受理日が印刷されているように、投稿されてきた論文は査読を経て、出版社の編集者の校閲のあとに、印刷されます。ブログや個人のホームページにただ文章を書いて載せたとしても、これは査読を経て受理された論文ということにはなりません。 どんなこと、インチキであれ正しいことであれ、なんでも書いてネット上に載せることはできます。これは、出版社の編集者の手を経て出版されたものとは違います。出版社は、執筆者からいただいた原稿をそのまま印刷するのではないんです。著者とやり取りをしながら、何度も編集作業を行っています。今まで出版されてきた名著といわれる作品も、著者と担当編集者とのやり取りの中から生まれてきた、と言ってもいいと思います。ここがとても大事なことだと思います。
 先日、東京国際ブックフェアなるものが東京ビッグサイトで開かれました。これは、17年前ほどからイベント会社が毎年行っているフェアですが、海外のブックフェアと比べると、最初からかなり見劣りがしていました。毎年、世界中で多くのブックフェアが行われますが、世界最大のものは、毎年10月にフランクフルトで行われるフランクフルト・ブックフェアです。これには、世界各国の出版社が展示ブースを出しています。その数、どのくらいでしょうか。スペース的にも東京ビッグサイトの5、6倍はあるでしょうか。このブックフェアの中心は、版権ビジネスです。各出版社が、展示ブースを設営し、お互いに翻訳権の売買をおこなうのですが、やはり英語圏の出版社が、他国の出版社に翻訳権を販売するということが中心になります。
 このフェアの時期、フランクフルトのホテルは、稼ぎ時です。宿泊費も、2倍、3倍に跳ね上がります。私が初めてフランクフルト・ブックフェアに行ったのは、30年以上も昔のことですが、その当時は宿泊施設もきわめて少なく、フェアに参加する人たちは、フェアが終わると次の年の部屋の予約をして帰るという状況だったようです。そんなこととは露知らず、私はホテルの予約などせずにフランクフルト空港に降り立ちました。空港のホテル案内に行って談判するのですが、なかなか宿泊するところがみつかりません。あちこち電話をしてもらうと(この頃はインターネットなどありません)、やっと小さな民宿の屋根裏部屋が空いていました。もうどこでもいいという状況でしたので、早速、屋根裏部屋へ出かけました。この民宿は、確か5階ほどの建物だったように記憶しているのですが、その5階のフロアからはしごで天井裏に上がっていくのです。上がってみると、まっすぐ立てないような天井が低い部屋にベッドが置いてあります。まるでカプセルホテルのような狭さです。これで、その当時の日本の一流ホテルの宿泊代がかかった覚えがあります。
 さて、日本のブックフェアですが、出版社がなかなか出展しないということもあり、印刷機械や製本機器、IT機器などを販売する会社が多く出展しています。今年は、唖然とするくらい電子媒体の会社が大々的に出展し、まるでモーターショーのコンパニオンのような女性が、マイク片手に大音量で電子配信システムについて説明していました。
 これは、もう、ブックフェアではないですね。何しろ、出版社の本の展示スペースより、こういう機器関係のスペースの方がずっと幅を利かせていました。一体誰にこのブックフェアに来てほしいと、主催者は思っているのでしょうか。出版社の出ていないブックフェアに、読者は来てくれるのでしょうか。読者が来ないブックフェアに出版社は出展しない→だからスペースを埋めるために機械屋さんに出てもらう→そうするとさらに読者が集まらず出版社も展示しない、という悪循環のようです。確かにコンパニオンが説明しているブースには、読者ではなく、業界の人たちが沢山押し寄せ、一見、大盛況のようでした。出版社の展示スペースは、ガラ〜ンとしていました。iPadが発売されてから、異業種からの参入もあり、大狂想曲さながらです。
 ここ数年、出版不況と言われていますが、電子配信は、打ち出の小槌になりうるのでしょうか。本が売れないから、電子出版なのでしょうか。いえいえ、今まで電子出版がなくても本が売れていないのですから、電子出版うんぬんと書籍の販売不振は、あまり関係ないと思います。この現実を吟味しないで、電子出版に期待をかけすぎているのではないでしょうか。今この流れに乗らないと将来まずいことになりはしないかという未来への不安や、出版物の販売不振がここ数年続いていることへの不安など、過去や未来の雑音に振り回されているのでしょう。
 人間も、動物も、今この時に生きているのですが、今この時を意識しないで、過去の心配事や未来のことに意識が向いていることが多いです。食事をしているのに、考え事をしていて何を食べたか、どんな味がしたか、ちっとも覚えていない、ということがあります。当社で出版させていただいた「怖れを手放す」の帯に、「怖れを作りだすのは、過去や未来から聞こえてくる雑音です。過去のデータベースも未来も手放して、今この瞬間の音を聴く」という言葉が載っています。「クライエントが今は何時もここにあると気付くように援助してください。結局、私たちは現在に住んでいます。ただ意識しないとそこにいることができないんです」とHayes先生も言っておられます。
 さて、私も練習、練習。5分間でも、今この時だけに意識を向けてみたいと思います。

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