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星和書店
今月の新刊 next

動機づけ面接法実践入門

動機づけ面接法実践入門

すべてのヘルスケア臨床の場に活用したい、
患者自身の「動機」を引き出す面接法

ステファン・ロルニック、ウィリアム・R・ミラー、クリストファー・C・バトラー 著
後藤 恵 監訳
後藤 恵、荒井まゆみ 訳

A5判 並製 324頁  ISBN978-4-7911-0737-7〔2010〕
定価 3,045円(本体2,900円)

動機づけ面接法は、依存症の治療・慢性疾患の管理・予防医学など、患者自身の「行動の変化」が鍵となる分野でめざましい効果をあげる。本書では、日常のヘルスケア業務で用いられる一般的なコミュニケーション形式を検討しつつ、豊富な事例で動機づけ面接法の中核的技術を詳説する。カウンセリングに習熟していない医療スタッフにも概要を理解しやすく、日常的に対応しているヘルスケアの臨床場面に即時に応用できる実践的解説書。

統合失調症回復への糸口

統合失調症回復への糸口

何が回復への契機となるのか

菊池 慎一
四六判 上製 288頁  
ISBN978-4-7911-0738-4〔2010〕
定価 2,940 円(本体2,8000円)

大樹の健康状態を知ろうとするとき、大きな幹ではなく、端っこの枝ぶりや葉の色合いの微妙な変化に着目するように、臨床現場でも、一見枝葉にみえるような些細なことへの気づきが、その後の治療展開に大きくつながることも稀ではない。枝葉末節の状態は、実は地下に隠れて大樹を支え続ける根の様子を伝えるものである。カルテ記載、収集癖、草野球…、素朴な疑問や気づきを丹念に検討することによって、一人ひとりにきめ細かに支援し、回復につなげていくための小さなヒント集。

  雑誌の最新号 next

精神科治療学
定価 3,024
月刊 精神科治療学 第25巻5号

特集: 今日の精神科臨床で出会うアディクション

アディクションの病理の本質は「やめることができない」点にある。ここに明確に焦点を当てて治療に当たらないかぎり、「人格」「成熟」の問題と捉えてしまい、いつまでも苦手意識をもつことになる。薬物療法一本やりの治療とは異なる「薬をやめる」 ことに主眼を置いたアディクション臨床は、精神科医としての「引き出し」を確実に増やし、当事者から学ぶ姿勢は臨床感覚の死角を減らす。アディクション臨床の珠玉の治療経験がここに結集。

臨床精神薬理
定価 3,045
月刊 臨床精神薬理 第13巻6号

特集:衝動性の生物学的基盤と精神薬理

衝動性は、セロトニン神経系との関連が示唆され、近年ではノルアドレナリン神経系との関連も指摘されている。また、衝動性は、精神医学における最大の課題の一つである自殺と密接に関連していると考えられる。本特集では、「衝動性」の生物学的基盤に関する様々な研究アプローチを紹介するとともに、臨床場面におけるマネージメントの実際について取り上げた。

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こころのマガジン

巨匠逝く

 また、悲しい知らせが届きました。イギリスのD.H.クラーク先生が、4月29日に亡くなられました。先生は、40年ほど前に、日本の精神科医療の状況を視察され、こうすべきであるという貴重な改善案をだされました。一般的には、「クラーク勧告」と言われました。
 その後も時々ご来日され、その何回目かのご来日の折、2日間ほど先生のお伴をするという機会に恵まれました。最近、昔の記憶が鮮明に浮かんでこないので、それが何時だったかは、忘れました。30年ほど前のことです。
 当時は、日本でも精神病院の開放化が大きな問題となっていました。当社からも三枚橋病院の「開かれている病棟」や、千葉病院の「精神病院 その医療の現状と限界」が出版され、開放化の熱気が高まってきた頃でした。そのような折、クラーク先生がご来日され、いくつかの御講演をされておりました。どういう経緯かは覚えていないのですが、クラーク先生が千葉病院にご講演に来られることになりました。出版のこともあり、頻繁に千葉病院にお邪魔していましたので、通訳をせよ、というご下命を賜りました。それまでも、アメリカから著名な先生方をお呼びし、その通訳もしておりましたので、まあ何とかなるかな、と気楽に考えておりました。千葉病院でのご講演の何日か前に、クラーク先生のお話しを少し聞く機会がございました。それをお聞きして、かなりあわてました。今まで聞きなれていた英語の発音とは、かなり違っていて、すっと耳に入ってきません。私が通っていた大学には、イタリヤ人やフランス人の神父様がいて、英語で講義をするので、外国なまりの英語にも慣れてはいたのですが、クラーク先生の話される英語は、初めての経験でした。
 当時は、今のように気軽に外国旅行をするというわけにもいきませんでした。ロンドンに初めて行った時も、最初は、かなり面喰いました。タクシーに乗って、料金を払うとき、「アイトパウンド」と言われて、一瞬何を言われているのか分かりませんでした。最近では、イギリス式発音もかなり浸透してきていますが。
 これは大変、ということで、クラーク先生にお願いして、ご講演の前の日の一日、先生のそばにおいていただきました。夜も先生とご一緒に友達の経営しているフランス料理店でワインを飲みながら、先生のお話しを必死にお聞きいたしました。この夕食がまたとても楽しく、店のシェフや調理スタッフも出てきて、クラーク先生のユーモアのある話に一同大笑いした覚えがあります。フランス料理のシェフですので、フランス語で何か言うと、それにクラーク先生が英語で答えて、お互い分かってはいないだろうと思われるのですが、結構通じていたのでした。
 さてご講演の日の朝、クラーク先生にお会いすると、何と、先生の言うことがよくわかるようになっていました。先生が何をお話しになったか、あまり記憶が無いのですが、2〜3時間ほどお話しいただいたと思います。 先生の熱弁もうまく千葉病院の職員の皆様にお伝えすることができ、また日本の先生方のご質問もクラーク先生にうまくお伝えすることができ、我ながらうまく通訳ができたとほっといたしました。うれしいことに、そのあと、クラーク先生にとてもほめていただきました。 確かこのご講演のとき、今では有名な精神科医として大活躍されている何人かの先生方が、まだ精神科医になりたての時で、このクラーク先生の御講演をお聞きになられていたのを思い出します。記憶が薄れるほど過去のことではあるのですが、つい先日のことのように感じます。クラーク先生の声、あの独特のアクセントが、はっきりと、ヴィヴィッドに耳に残っています。
 「クラーク勧告」は、時の政府によって取り上げられることはなかったのですが、クラーク先生のお話しをお聞きになられた先生方の心の中に、しっかりと種をまいて行かれました。30年以上を経て、患者さんのためになる地域に開かれた新しい精神科医療体制を目指して、活動が始まりました。やっと芽を出してきたところですが、素敵な花が咲き、クラーク先生に献花出来る日が来ることを願ってやみません。私どもも、その日のために、精一杯、出版の努力を続けてまいりたいと思っております。
 合掌

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