思い出
今年もまた、何もしないうちに、1月は行って、
2月は逃げるように間もなく終わりそうで、
この調子では、あっという間に3月は去る、
ということになるのでしょうか。
今年になって、辛い悲報が3つ届きました。今月になって、大学時代のクラスメートが一人肺がんで亡くなりました。昨年末に、島悟先生がお亡くなりになり、先月は、大原健士郎先生の訃報を新聞紙上で知りました。忙しさのなかで、思いだすこともなかったいろいろな思い出が次々と浮かんできます。
時は今から34年ほど前、今は亡き加藤正明先生からご連絡をいただきました。メールがない時代ですので、お電話をいただいたのだと思います。編集会議をするので来るように、ということで、ご指定の場所に緊張して赴くと、加藤先生がにこにこ顔で大原健士郎先生、宮本忠雄先生、佐藤壱三先生をご紹介くださいました。当時の精神医学界の中で超著名な先生方の前で、緊張しまくって、何を話したのか覚えていないのですが、新しい雑誌を出そうという相談でした。星和書店は、まだ出版を始めたばかりで、雑誌のノウハウは持っていないだろうから、と細かいことまで教えてくださいました。また、お金もないだろうからということで、先生方が手弁当で編集作業をするからと言われ、大変恐縮したのを覚えています。こうして「社会精神医学」が1978年に星和書店から刊行開始となりました。先生方の温かいご協力、ときに厳しいご指導があって、星和書店はつぶれることなく、社会精神医学は部数を伸ばし、1981年にはこの雑誌の編集委員が中心になって、日本社会精神医学会が設立されました。
その間、大原先生には、沢山のことを教えていただきました。ほめられたことも、いえ、ほめられたことはなかったかもしれません。ご意見をいただいたこと、怒られたこと、は沢山あります。これが本当にありがたかったです。先生は、常に精神医学のことを考えていられました。食事をしながら、一杯飲みながら(先生はお酒を召しあがらないので私だけ図々しくいただいていました)お話しましたが、精神医学に関する以外の雑談と言うのはありませんでした。常に精神医学に関するお話を、2時間でも3時間でも、私どものような若輩にしてくださいました。
先生の御冥福を心からお祈り申し上げます。
若いうちは、人生が永遠であるかのように、思っていたのかもしれません。もちろん、人生は短い、と悲観的に考えないほうがいいのですが、かぎりある人生を大事に有意義に過ごしたいものです。多くの精神医学の御先輩から学んだことをもとに、精神医学の発展のために、患者さんの役立つ本をつくるために、ますます学び努力して行きたいものですね。一日、一日を振り返り、自分は人のために何かできたのか、いい本をつくるための努力はできたのか、と問いながら、今この時を大事にしていきたいと思います。それは、決して忙しくすることではなく、やらなくてもいいことをそぎ落としていくと、結構、時間が生まれると思います。空いた時間を利用して、当社の本を読んでくれた人に役にたったよ、幸せになれたよ、と言ってもらえるような編集作業ができるよう努力したいと思います。周りの人の幸せのために何か貢献できるのではないかと考え、それに向けて努力してみたいと思います。これが、今までご指導をいただいた先生方の大恩に報いることかと、強く強く思う今日この頃です。
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