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星和書店
こころのマガジン
Vol.49 2007.2
  • 三省堂書店神田本店6F医学書コーナーにて 2月中旬まで行われていた弊社の“精神医学 ミニフェア”が好評のため、期間を延長して 開催中です。お近くにお越しの際はぜひ お立ち寄り下さい。
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精神科における予診・初診・初期治療
定価2,100円
四六判 並製
180頁
精神科における予診・初診・初期治療 笠原 嘉  名著、大幅に加筆訂正され、 待望の復刊!
外来診察用手引きとして多くの人に 読まれてきた名著が、大幅に加筆訂正され復刊。 著者流の診察における配慮やコツが、具体的に 平易な言葉で述べられている。「客観的」 手法が優勢である今日、それに偏らず、診察で 人間の全体をとらえ、治療に繋ぐ作法を わかりやすく説いてくれる類のない書。

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精神科治療学
定価3,024円
月刊 精神科治療学 第22巻2号
【特集】 今日の仕事・ 職場への精神科医の関わり II
前号に続き,仕事・職場と精神科医との 関わりについて特集。長期休務者・ 反復欠勤者・事故頻発者への対応, パワ・ハラ,睡眠障害・アルコール・ 発達障害が就労に与える影響と対応 等を取り上げた。日ごろ多くの勤労 者を診療している精神科医の臨床に 示唆や指針を与える特集。
臨床精神薬理
定価3,045円
月刊 臨床精神薬理 第10巻3号
【特集】 メタボリック・シンドロームと 精神科薬物療法
メタボリックシンドローム の病態と治療的介入を展望し、 精神科薬物治療に おける糖代謝異常、 脂質代謝異常、 高血圧の評価と対応、 精神疾患と メタボリックシンドロームとの関連、 心理教育や薬物相互作用といった 最新の知見を紹介!

不安を克服する

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苦労する「くろうと」  知ろうとしない「しろうと」

先日、あるある大辞典、 とかいうテレビ番組が、 あやまった情報を意図的に放送した ということで、 大きな問題になっています。 視聴率アップのためでしょうか、 正しい情報よりも、人目 を引く情報をでっちあげようとした のでしょう。視聴率アップの手段を 考えるという点では、「くろうと」 でしょうが、この分野の内容には 「しろうと」だったのでしょう。 玄人は、いんちき情報は流せない ものです。先週、本屋さんで棚を 眺めていると、病気にならない ためにというテーマの本が何冊か 出ていて、 聞いてみるとベストセラーだそうです。 その1冊を手にとって、立ち読み (すいません)させていただきました。 読んで唖然として、 買ってしまいました。 きっと、この本の編集者は、 素人にちがいない、 編集の玄人だったら、 こんな情報をそのまま載せて 平気なはずはない、と思いました。 一つの例ですが、精神科医にかかると 患者は悪化するし、精神科の薬は、 最も危険な薬だ、 と書かれているのです。 何のエビデンスも、文献もあげていません。 他の分野について書いてあることには、 私は専門でないので、正しいかどうかは 分かりませんが、一事が万事と思われても 仕方ないと思います。この本の編集者は、 きっと内容を調べてはいないでしょう。 この分野に関して、きっと「しろうと」 だと思います。うけそうだから、 面白そうだから、売れそうだから、 ということで出版したのでしょう。 素人ビジネスが、めにつきます。

最近、若い人の言語能力、表現能力が低下 しているといわれています。 携帯電話のメール、ブログ、 などの影響かな?そんなことを考えていた時、 取引先の紙商の営業の方が、フリーペーパー なるものをいくつかもってきてくれました。 駅にこういう無料の雑誌がたくさん置いて あるというのです。60万部ほど印刷されて いるものもあるというのです。無料ですから 収入は、広告によるわけです。部数をたくさん 出せば広告収入が増えるのですから、 テレビの視聴率アップと同じ弊害がでてくる のではないでしょうか。電車の中で読んだら 捨てるという、読み捨てです。毎回たくさん 刷られては、捨てられて、紙がどんどん 使われます。資源の無駄ですね。 Co2削減が声高に叫ばれている現在、 こういうビジネスを考える人たちは、 何を考えているのでしょうか。

必要とされるものを作るというのではなく、 なくても良いもの、いや、なければ良いもの、 を儲かるぞと考え出してくる人たちが、 増えているのかもしれません。 それがビジネスなのでしょうか。 携帯に発信されるコミック、フリーペーパー、 携帯電話のメール言葉のようなブログ、 などに人気が集まっているようです。 文章がほとんどない、話し言葉だけのブログが、 受けているといって、出版社各社が売れそうな ブログを血眼になってチェックしています。 出せば、ベストセラーになるものも多いそうです。 才能を発掘する、新人作家を見つける、 ということではないようです。 言語で表現する技能を身につけないと、 自分の感情などを言語で表現できず、 そのため衝動的な行動で感情を表現したり、 身体に症状が現れたりするのではないかとも 思われています。ここのところ、いとも簡単に 人を殺してしまう事件が起こっています。 ミステリー小説のような 緻密な計算をされた 事件ではありません。

言葉を主手段にしている出版社の中には、 フリーペーパーや、携帯ネタからの出版に熱心な ところがあるようです。きっと素人の編集者が ふえてきたのでしょう。一家言ある玄人編集者には、 出来ないことです。

儲かることは何でもやれ、手段があまりよくない からと他のところがやらないことをやって儲けろ、 という企業体質をもつ企業が、出版社の持つ編集、 印刷、宣伝、情報収集などのノウハウを利用して ビジネスを行っています。不二家の事件以上に 社会に害を及ぼしていると考えられる会社が、 何の注意も受けるどころか、創造的ビジネスを 行っていると賞賛されています。 儲からない会社が何を言うか、 といわれてしまえばそれまでですが。

出版社は、くろうとでありたい、 私は思っています。 自分の出す出版分野について、日々、 研鑽し、真摯に勉強し、そこから企画を たてていきたいと思っています。 スポーツは、本当に、くろうと集団です。 ただの玄人ではなく、苦労と、といえるほど、 日々、血のにじむような訓練、努力をし、 それでも本戦では、成果がでないことがあります。 成果がでなくても練習をつづけます。 努力することが好きで、努力していくうちに、 成果がでることもあります。結果を出すといっても、 結果はでないものです。結果をもとめると、 結果はでない、ただただ努力のみ、 ということでしょうか。 オリンピックといわずいろいろなスポーツを 観戦することで、私たちは、本当に大きな感動 をあたえてもらえます。マラソンランナーたちは、 なぜあれほど大きな感動を私たちに与えてくれる のでしょうか。それまでにいたる想像を絶するような 努力を、人々は心から賞賛し、 敬意を払っているからでしょう。 私ども星和書店も、 精神医学関連出版の玄人でありたいと思っています。

「はじめに言葉があった、 言葉は神とともにあった。 言葉は神であった」
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