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星和書店 こころのマガジン
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セルフ・コンパッションのやさしい実践ワークブック

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2週間で、つらい気持ちを穏やかで喜びに満ちたものに変化させる心のトレーニング

具体的な事例やエクササイズの紹介に始まり,「過去の傷を癒す」「喜びを育む」などのトレーニングセッションを、フローチャートや数多くの実践例を交えて解説。 アメリカで大流行している,この“幸せを身につける方法”を明日から実践しよう!

ティム・デズモンド 著
中島美鈴 訳


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精神科リハビリテーション:スキルアップのための11講

精神科リハビリテーション:
スキルアップのための11講

見慣れているやり方を手放すと見えてくるものがある:るえか式デイケア・リハビリテーション

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家族ができる摂食障害の回復支援

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家族による家族のための回復支援ブック

摂食障害で苦しむわが子のために家族は何ができるのか。家族が体験から学んだ,回復と成長を応援するための知恵と工夫が詰まった一冊。摂食障害家族会ポコ・ア・ポコ20年の歴史から生まれた「読む家族会」。

摂食障害家族の会ポコ・ア・ポコ 鈴木 高男 著

本体価格 1,200 円 + 税

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精神科治療学

月刊 精神科治療学 第33巻10号

《今月の特集》

認知症の診断と治療入門

認知症医療の現場で必ず役立つ特集。

認知症医療において精神科医への期待はきわめて大きい。本特集には認知症の診断と治療や繰り返される制度改革の最新知識が豊富に収録されている。さらにチーム医療、当事者への精神療法、告知後の心理的サポート、抗認知症薬中止のタイミングなど、精神科医が中心となる課題も取り上げた。

本体価格 2,880 円 + 税

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臨床精神薬理

月刊 臨床精神薬理 第21巻11号

《今月の特集》

Clozapine登場で精神医療は変わったか?

治療抵抗性統合失調症の治療薬clozapineの登場で精神科医療はどう変わったのか

Clozapineの有用性に関する最新情報をアップデートし、clozapine使用規制の特徴を諸外国と比較、クロザリル適正使用委員会の役割や地域におけるclozapineネットワーク、ガイドラインにおけるclozapineの位置付け、副作用である無顆粒球症の遺伝的リスク因子、基礎薬理学からみた知見、「重度かつ慢性」概念とclozapineの関係について、それぞれ各方面の専門家が解説した。

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精神科臨床サービス

季刊 精神科臨床サービス 第18巻4号

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アウトリーチの基本技術 II

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本特集では、精神科医、看護師、精神保健福祉士、心理士などが現場で担っている役割を各職種ごとに解説した他、アウトリーチの始め方、研修方法など、現場で役立つ知識を紹介。精神障害者に安心できる地域での暮らしを提供するための情報が満載の特集。

本体価格 2,200 円 + 税

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今月のコラム

Anorexiaは自動車とともに始まった?

西園マーハ文

「思春期は蒸気機関車とともに始まった」というフレーズがあります。最初この言葉を聞いた時、私は、産業革命が始まり蒸気機関車を作る時代になると、技術面で学ぶことが増えて、大人になる前段階で学校に行ったりしなくてはいけなくなったということだろうと思いました。しかし、この表現の出典である英国の心理学者マスグローブの本を確認すると、「蒸気機関車と思春期は同じ時期に作られ、それぞれのarchitect(建造者)は、前者はワットで1765年、後者はルソーで1762年」という表現になっていました。1762年は『エミール』が出版された年です。思春期の実態というより、概念が作られたことを重視し、また、普通は並べない2つの物を並置することにより、それらの物、その時代の意味を知るという興味深い発想です。日本史年表と世界史年表を並べて、「この2つが同時代に!」という驚きを誘う趣向の本を見たことがありますが、それと似た面白さです。

この観点でanorexia nervosaに何か並べるものはないだろうか、と思っていた時、1870年代くらいから、車の個人所有が始まったというような記述に遭遇しました。William Gullがanorexia nervosaという疾患の記述を始めたのが1868年以降です。Anorexia nervosaは自動車とともに始まった、というのは良い並置法ではないだろうかと思いつきました(西園2015)。ここでは、車carではなく、自分で動くという意味のautomobileという言葉の方を使っておきたいと思います。なぜなら、時刻表などを気にせず、自分が行きたいときに行きたいところに行く、という個人の願望がかなえられるのが自動車で、このことが拒食症の始まりと並べるのにふさわしいのではないかと思うからです。自分の身体を使わなくてもどこにでも行けるというのは、身体感覚が薄らいでいく時代の始まりとも言えるでしょう。また、自動車と広告業界は密接な関係があり、広告を見て「あの車が欲しい」という願望が煽られるのは、ファッションモデルの影響を受ける拒食症およびその予備軍の心性と類似性があるようにも思われます。また、今、拒食症の多い国でクルマ社会でない国はないとも言えます。もちろん、anorexiaに他の言葉を並置することもできます。何か言葉を並べて、この病気の意外な側面を探してみるのも良いかもしれません。

次に、bulimia nervosaには何を並べるかを考えてみました。Bulimiaという言葉が医学雑誌で初めて取り上げられたのは、1979年Russellによる“Bulimia nervosa: An ominous variant of anorexia nervosa”(神経性過食症:神経性やせ症の不吉な異型)という論文です。Ominousという、医学論文としてはいささか不穏な言葉が使われていることもあって、よく知られています。1979年の出来事を検索すると、なぜか一番目に「第一回大学共通一次試験」が出てきました。この年の受験生だった私は、飛行機の航路の真下にあって時折建物全体が振動する試験会場で、慣れないマークシートを塗りつぶした日のことを突然思い出しました。でも、共通一次試験と並べているのは、日本の患者さんには興味深い並置法ですが、世界的現象であるbulimiaと日本の共通一次試験を並べるのは、いまひとつインパクトが小さいかもしれません。そこで、この時期の世界の出来事を探すと、この時期にパーソナルコンピュータが普及し始めたような記事がありました。「Bulimiaはパソコンとともに始まった」というのは良い並置法ではないでしょうか。個人の生活のデジタル化が始まり、情報は削除したりリセットしたりするものになりました。デジタル体重計で体重を細かく量り、100gでも増えたら吐いてその場でリセット、というようなメンタリティーは、アナログ時代にはなじまない考えだったのではないでしょうか。いささか、こじつけ的ではありますが、コンピュータが普及していなければ、コンビニなどもなかっただろうと考えると、パソコンのない社会の過食症は考えにくい気もします。

私が共通一次を受けた会場は、試験を約10年さかのぼる1968年には、建築中の「大型電算機センター」に米軍の飛行機が墜落したという事件が起きた場所でもあります。「電算機」なるものは特別の場所に置かれていた時代だったのが、コンピュータが拡散したからこそ、マークシート試験も可能になったわけでしょうから、共通一次試験も、デジタル時代の到来を表す現象であったのでしょう。

「自動」に「パーソナル」、摂食障害は、個人主義の追求の行き止まり地点のような疾患なのかもしれません。病気の発生を面白がるのは不謹慎のようではありますが、マスグローブの手法を使って皆さんも疾患の意味を探ってみてください。

 参考:
 ・Musgrove F: Youth and social order. Indiana University Press Bloomington,1965
 ・Russel G:Bulimia nervosa: An ominous variant of anorexia nervosa. Psychol Med 9 : 429-48,1979
 ・西園マーハ文: 摂食障害と思春期. 子ども学 3:42-54,2015

西園マーハ文(にしぞの まーは あや)

福岡県出身。1985年,九州大学医学部卒業。その後,慶應義塾大学精神神経科で研修,同大学大学院修了。1986年,英国エジンバラ大学卒後研修コースに在籍し,Cullen Centre(認知行動療法センター)で,摂食障害治療の取り組みに感銘を受ける。慶應義塾大学精神神経科助手,1998年より東京都精神医学総合研究所勤務を経て,2013年より白梅学園大学教授。著書に『過食症の症状コントロールワークブック』『過食症短期入院治療プログラム』(編著),『摂食障害:見る読むクリニック』(共著)(以上,星和書店刊)などがある。

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