http://www.seiwa-pb.co.jp/htmlmail/165.html
星和書店
  今月の新刊 next
子どものこころの診療ハンドブック

子どものこころの診療ハンドブック

日本総合病院精神医学会治療指針7

企画・編集 日本総合病院精神医学会 児童・青年期委員会

四六変型判 並製 208頁
ISBN978-4-7911-0945-6〔2016〕
本体価格 2,600 円 + 税

〈子どものこころの臨床に興味があるが,何からはじめたらよいかわからない〉
〈あまり興味もないけれど,小児科から診察を頼まれるので何とかせざるを得ない〉

といった精神科医の声に応える。
本書のコンセプトは、児童精神科を専門としない医療関係者が,子どもを診療する必要に迫られたときに役立つハンドブックである。診療する前に,必要な部分だけ拾い読みして調べたり確認できることを目指した。そのため,全ての事項を教科書的に網羅したりエビデンスにこだわるのではなく,日常の臨床経験や個人的意見も織り込んだ内容となっている。 外来で出会う発達障害や摂食障害ほか、さまざまな疾患をもつ子どもへの対応のポイント、家族・児童相談所・他科などとの連携のコツや療育手帳や特別児童扶養手当など有効なツールの利用方法などをわかりやすく解説。身体疾患で入院している子どもや被災害児の心のケア、被虐待事例の初期対応にも活用できる実践ハンドブックである。


メンタライゼーションでガイドする外傷的育ちの克服

メンタライゼーションでガイドする外傷的育ちの克服

〈心を見わたす心〉と〈自他境界の感覚〉をはぐくむアプローチ

崔炯仁 (ちぇ ひょんいん)

A5判 並製 260頁
ISBN978-4-7911-0943-2〔2016〕
本体価格 2,300 円 + 税

MBT(メンタライゼーションに基づいた治療)をやさしく学ぶ!
外傷的育ちとは、子どものころに身体的、心理的、性的な虐待を受けた体験、心や脳にダメージを与えるような養育体験とその影響を意味する。 本書では著者の豊富な臨床経験に基づき、いわゆる毒親、虐待などの外傷的育ちから生じる種々の心理・行動特徴について幅広く解説。適切なミラーリングと分離、メンタライズ力の成長を軸に、患者に安心感を与え心の成長を促す治療や支援方法を紹介する。 境界性パーソナリティ障害に対して効果が実証されていて、近年注目を集めているMBT(メンタライゼーションに基づいた治療)を平易に学べるよう構成された入門書。


日常診療における精神療法:10分間で何ができるか

日常診療における精神療法
10分間で何ができるか

限られた時間を有効に活かす精神療法的アプローチ

編集 中村敬

A5判 並製 256頁
ISBN978-4-7911-0944-9〔2016〕
本体価格 2,200 円 + 税

一般的な精神科の外来診療においては、1人当たりの患者に費やす時間は、数分から長くても20分ほど、平均すると10分程度に過ぎないのではないだろうか。このような時間的制約がある中でも、優れた臨床家は患者の回復を促す技法を自然と身につけている。例えばそれは挨拶や態度であるかもしれないし、投薬に添える言葉かもしれない。本書では、主だった精神疾患ごとに、限られた時間でも行える精神療法的アプローチを示す。


トラウマセラピー・ケースブック《電子書籍版》

トラウマセラピー・ケースブック
《電子書籍版》

症例にまなぶトラウマケア技法

〈企画・編集〉野呂浩史

本体価格 3,600 円 + 税

持続エクスポージャー療法、眼球運動による脱感作と再処理法(EMDR)、認知処理療法など、数あるトラウマ心理療法の中からエビデンスのあるもの、海外では普及しているが日本では認知度が低いものなど10の療法を、経験豊富な専門家が症例を通してわかりやすく解説。各療法の共通点、相違点を理解するのにも有用な書であり、どれがその患者(クライエント)さんに有効・最適なのか検討・選択するのに大いに役立つ。各療法を学ぶためのアクセス方法も各Partに記載。代表的な10のトラウマ療法の概要と治療の実際が1冊でわかる待望の書。



   雑誌の最新号 next
精神科治療学
本体価格  
2,880
円+税
月刊 精神科治療学 第31巻11号

特集:精神科医療における安全管理 II

特有の安全上の問題がある精神科医療。より安全に進めるためには何が必要か。以前から患者の自殺・自傷行為や他害行為の問題があったが、最近は認知症患者の増加に伴い転倒・転落等へ対応する場面が増えている。本特集では前号と本号の2号にわたり安全に精神科医療を進める上で注意すべき点を特集。本号では、精神科外来における安全管理(精神科救急情報センター、受診援助や移送、意識障害患者、自殺予防、暴力・暴言対策、過量服薬・リストカットへの対応など)、病態ごとの安全管理(妊産婦、振戦せん妄、危険ドラッグ使用者、ECT施行時、無断外出・離院など)、精神科医療安全士(仮称)について取り上げた。より安全に精神科医療を進める上で必読の特集。
JANコード:4910156071167

臨床精神薬理
本体価格   
2,900
円+税
月刊 臨床精神薬理 第19巻12号

特集: 高齢の気分障害への薬物療法

高齢者の気分障害に対する薬物療法を解説した特集。高齢者の薬物動態・薬力学・薬物相互作用の観点から老年期うつ病治療を考察し、高齢うつ病・高齢で難治性の気分障害・うつと認知症が併存した病態への薬物療法、高齢うつ病への脳刺激療法、そして抗認知症薬が抑うつ状態に及ぼす効果と特発性正常圧水頭症における抑うつ状態に対するシャント術について、第一線の医師に解説いただいた。
ISBN:978-4-7911-5230-8

精神科臨床サービス
本体価格   
2,200 円+税
季刊 精神科臨床サービス 第16巻4号

特集:アルコールの問題を抱える人たちのために

アルコール依存症をもつ人を精神科外来で受け入れるために──。 日本にはアルコール依存症の専門治療機関が少ないため、精神科の外来やクリニックに患者さんが来院することも多い。しかし、精神科医にアルコール依存症の治療を行った経験がないと、“自分は専門ではないから”と断ってしまう場合が多いという。対応困難な重症事例が少なくないものの、実際には精神科外来でも対応可能な例も多い。そこで今号では、アルコール依存症治療の現状と課題を討論した座談会を始め、初回面接の方法や再診の介入法、精神科訪問看護、自助グループなど、様々な視点からアルコール依存症を診るためのアプローチを紹介し、アルコールの問題を抱える患者さんを支えるための方策を考察する。
ISBN:978-4-7911-7164-4

トップへ
  今月のコラム

 
今月のコラム
勇気と覚悟とカブトムシと
大月 友

私には3つの顔があります。1つ目は、科学者として大学で研究・教育に携わる研究者の顔、2つ目は、セラピストとしてクライエントさんに向き合う臨床家の顔、そして、3つ目は、父親として家族と過ごすイクメンの顔です。今回コラム執筆の機会を頂いたので、普段はあまり表に出さない3つ目の顔で自分の体験談を書いてみることにしました。

現在、我が家は二人の男の子の子育てに奔走しています。ある日、自分の苦手にしていることが思わぬところで子育ての“壁”になることに気づかされました。実は、私は“虫”が好きではありません。海沿いの埋立地で育った自分には、幼少期に昆虫採集をした記憶もなく、昆虫の王道であるカブトムシも見たことがありませんでした。カブトムシを飼っている友達もいませんでした。そんな私にとって、カブトムシは触ったこともないただの大きな“虫”で、決して好きなものではありませんでした。

ところが、我が家の長男は幼稚園の頃から昆虫に興味を持ちだしました。幼稚園で虫博士と呼ばれていたほどです。昆虫の図鑑をよく読み、特にカブトムシが大好きで、世界中のカブトムシが戦うDVDをいつも観ていました。私としては何が良いのかよく分かりませんでしたが、息子がそこまで好きと言うならと、ある夏休みに昆虫展とやらに連れて行くことにしました。昆虫展というのは、いろいろなカブトムシが展示されていたり、触れたりできる、夏休みによくある子ども向けイベントです。

会場に到着し、内心「虫を見るためにお金を払うなんて……」と思いつつも、息子が喜ぶならと思いチケットを購入しました。そして中に入り、世界中のカブトムシを見て回り、最後に、目玉企画であるカブトムシと触れ合えるコーナーにたどり着きました。それがどんなコーナーかと言うと、2?3m四方くらいのネットに囲まれている小屋があって、その中に人が入れるようになっており、中には天井側のネットにも壁側のネットにも、床に設置されている丸太の上にも、いたるところにカブトムシが大量にひっついているというものでした。このなんとも言えない空間の中で、カブトムシと心ゆくまで触れ合えるようになっていたのです。私はあまり気が進みませんでしたが、とりあえず息子と二人で入ってみました。すると、自分の中である感情が生まれていることにはっきりと気づきました。そう、“恐怖心”です。触ったこともない黒くて大きな“虫”に囲まれ、情けない話ですが怖くて怖くて仕方なくなりました。そして、すぐにその小屋から出てきてしまいました(息子を置き去りにして!)。自分にとって、カブトムシは“好きではない”どころではなく、“怖い”存在だったんだと自覚しました。すると、息子も後を追って外に出てきてしまいました。息子が「なんで出ちゃうの? 入ろうよ」と言ってきたので、私は「一人で入っておいで」と言いました。しかし、息子が「一人で中にいるのは怖いから一緒に入って」とせがんでくるではありませんか。大好きなカブトムシではあるものの、初めて触れるということもあって、まだ小さい息子には少し怖かったようです。

さて、どうしたものか……。困りました。父親としては、息子の好奇心を伸ばして、いろいろな経験をさせてやりたいものです。そして、息子の笑顔が見れたら幸せです。とは言え、はっきり言って怖い……。今まで“虫”が怖いということで、特に困ることはなかったのですが、子育てという文脈に自分が置かれたところ、この感情は厄介な問題となってしまいました。カブトムシに対する恐怖心のせいで、自分が大切にしたいと思っていることからも逃げ出してしまいそうです。

そんな時、自分の1つ目の顔(研究者)と2つ目の顔(臨床家)で取り組んでいる、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)が頭に浮かびました。ACTは、大切にしたい自分にとっての生き方に沿って行動していくために、難しい感情や気持ちと上手く付き合っていくための方法を学んでいきます。ACTでは“上手く付き合う”というのは、感情や気持ちをコントロールすることではなく、その気持ちとともにアクションを起こすためのコツを身につけることです。この時の私の選択は、恐怖心がありながらも、“勇気”と“覚悟”を持ってそれを受け入れ、今、この瞬間しか味わえない息子との体験を豊かにするための行動をとることでした。カブトムシくらいで何が“勇気”と“覚悟”だと言われてしまいそうですが(笑)。それでもその時の私にとっては、この言葉がしっくりくるような気がしています。

あれから数年経ち、素晴らしい仲間とともに若者向けのACTのワークブックを監訳し、『セラピストが10代のあなたにすすめるACTワークブック』として出版することができました。自分が大切にしたい価値を見つめ直し、それに沿って生きていくためには何が必要かを考え、壁となる感情や気持ちに邪魔されないコツを身につける。そのための練習ができるようなワークブックです。

さて、現在、私のカブトムシ恐怖はどうなったのでしょうか。今も相変わらず怖いと感じることはありますが、自宅周辺に樹液場をいくつか見つけ出し、今年の夏は長男と何回も観察したり採りに行ったりして、家でも3つの昆虫ケースを駆使して飼育しています。カブトムシ自体は今でもやはり好きではありませんが、息子といろいろなことを体験する時間は何より大切です。来年の夏には、今は1歳の次男も連れて家族みんなで行けそうです。

大月 友(おおつき とむ)
早稲田大学人間科学学術院准教授。
千葉県生まれ。臨床心理士。筑波大学第二学群人間学類卒業、新潟大学大学院教育学研究科修了、広島国際大学大学院総合人間科学研究科修了。
セラピストが10代のあなたにすすめるACTワークブック』ほか、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)関連の翻訳書多数。
配信停止希望