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星和書店
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身体に閉じ込められたトラウマ

身体に閉じ込められたトラウマ

ソマティック・エクスペリエンシングによる最新のトラウマ・ケア

ピーター・A・ラヴィーン 著
池島良子、西村もゆ子、福井義一、牧野有可里 訳

A5判 並製 464頁
ISBN978-4-7911-0942-5〔2016〕
本体価格 3,500 円 + 税

トラウマの画期的な治療法を紹介する!
世界的に著名な神経生理学者であり心理学者でもある本書の著者ピーター・ラヴィーンは、からだの気づきを用いた画期的なトラウマ・ケアとして注目を集めているソマティック・エクスペリエンシング(Somatic Experiencing®, 以下SE)の創始者である。本書は、このソマティック・エクスペリエンシングについての、初めての理論的解説書である。  
トラウマによって「凍りつき」状態となった人のからだの発する内なる声を聴きとり、生存に必要な感情である怒りや恐怖を感じとれるよう支援することでトラウマからの回復をもたらす。 本書の特色は、SEの基礎理論だけでなく方法論までも示された分かりやすい解説書である。読者が理論を体感できるようなエクササイズが全般的に豊富に盛り込まれているため、難解で想像しにくい事柄も、理解しやすいものとなっている。そのためトラウマ・ケアの専門家だけでなく、トラウマを受けた人にとっても分かりやすく、トラウマという絶望から回復する希望を与えてくれる。



孤独な人が認知行動療法で素敵なパートナーを見つける方法

孤独な人が認知行動療法で素敵なパートナーを見つける方法

バーンズ先生から学ぶ、孤独感・内気さ・性的不安の克服法

デビッド・D・バーンズ 著
林建郎 訳

四六判 並製 484頁
ISBN978-4-7911-0941-8〔2016〕
本体価格 2,200 円 + 税

私には友人も恋人もいない、一人ぼっちで孤独な人間だと悩んでいるあなたに。
バーンズ先生が認知行動療法のエキスパートとして素敵なパートナーの見つけ方をあなたに伝えます。
友人関係や恋愛関係に自信がもてずに、親密な人間関係を発展させることが難しい人たちは、低い自尊心に悩み、相手からの不同意や拒絶におびえ、孤独に悩んでいます。対人関係において、自己防衛的になり、批判を恐れ、自分および他人に対して非現実的なまでに高い期待を抱き、過度に自己批判的になり、独断的に相手を非難したりします。この本では、これらの否定的な思考に気づき、苦痛を伴う感情を克服し、より前向きで現実に合った考え方を認知行動療法の技法を通して学ぶことが出来ます。
かけがえのない一人の自分を愛せるようになってこそ、素敵なパートナーは見つかります。



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精神科治療学
本体価格  
2,880
円+税
月刊 精神科治療学 第31巻10号

特集:精神科医療における安全管理 I

特有の安全上の問題がある精神科医療。より安全に進めるためには何が必要か。以前から患者の自殺・自傷行為や他害行為の問題があったが、最近は認知症患者の増加に伴い転倒・転落等へ対応する場面が増えている。本特集では2号にわたり、安全に精神科医療を進める上で注意すべき点を特集。本号では、2015年10月に始まった医療事故調査制度について、また個人情報保護、病棟種別ごとの安全管理、リエゾンコンサルテーションと安全管理、転倒・転落対策、薬物の有害事象の予防、自殺予防、暴力・暴言への対策、身体拘束の最小化、院内感染防止対策について取り上げた。より安全に精神科医療を進める上で必読の特集。
JANコード:4910156071068

臨床精神薬理
本体価格   
2,900
円+税
月刊 臨床精神薬理 第19巻11号

特集: Bipolarityを有するうつ病の病態と治療アップデート

近年最も注目されている双極性を有するうつ病の最新の動向を特集。双極性障害の実態と概念の拡大、精神病理学および脳科学からみた双極性を有するうつ病の病態、難治性うつ病との関連、急性期薬物療法のあり方、抗うつ薬投与の是非、心理社会的介入、そして長期予後と維持療法の問題について、第一線で活躍中の専門家が紹介する。
ISBN:978-4-7911-5229-2

精神科治療学 第31巻 増刊号
本体価格   
5,900
円+税
精神科治療学 第32巻 増刊号

高齢者のための精神科医療

現時点での統合失調症治療の総まとめ。
全部で85項目を、現場で活躍している80名以上の著者が執筆。リカバリー重視、病院から地域へという流れは今後ますます拡大し、一方でさまざまな診断技術や新規抗精神病薬、また心理社会的治療のツールや技法が開発され、今後も開発が続くと思われる。本増刊号は現時点で統合失調症の臨床現場で導入されている最新の治療や支援を簡潔に解説した決定版。
JANコード:4910156081067

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  今月のコラム

 
今月のコラム
新たな雇用を生み出し、新たな就労支援に挑戦する「ソーシャルファーム」
東京家政大学/社会福祉法人豊芯会
上野容子

私は、精神保健福祉領域のソーシャルワーカー(現在の呼称:精神保健福祉士〔国家資格取得者〕)として、精神科病院やクリニック、保健所、ハローワークにおける障害者職業専門相談員、地域生活支援施設(障害者自立支援法以来、福祉サービス事業所に名称変更)、大学における精神保健福祉士養成教育等に携わってまいりました。

これまで、様々な経験をする機会に恵まれ、貴重な時間を経てきていることに感謝していますが、特に「ソーシャルファーム」との出会いは新鮮でした。
 ソーシャルファームとは? 社会的企業の一形体で、何らかの事情で就労困難な人達を社会から排除せず、雇用と就労の場と機会をつくり、市場で評価されるビジネスを展開していく事業体です。由来は、1970年代に、イタリアのトリエステにおいて、精神疾患で入院している人達を病院から地域へ送り出し、地域で生活をしながら治療を受ける体制に切り替えた時、病院から地域に出た患者さんやリストラされた職員達が仕事を求めたが就職できず、止む無く患者と職員が一緒になって地域で花屋やカフェ等を起業したのがソーシャルファームの起源と言われています。
 それから、ドイツ、イギリス、フランス等のヨーロッパ諸国にソーシャルインクルージョンの施策との関連で拡大していき、近年では北欧の福祉体制の変化とともに、フィンランドやデンマーク等でも広がりを見せています。

長い間、精神障害者の就労支援に力点を置いて活動してきた私は、従来の訓練型の支援方法に疑問を感じていました。それから、障害者の就労支援は一般企業に重点を置いた一般就労か福祉サービスを利用しながら就労支援を受ける福祉的就労の2タイプしか無く、「一般就労に散々チャレンジしてきたので自分のペースで働きたい」、「障害者枠の補助的な仕事でなくもっとやりがいと責任がもてる仕事をしたい」、「疾患や障害があるので短時間しか働けないが、その範囲であればこれまで培ってきたスキルを生かして働ける」など、2タイプには当てはまらない人達が多数いることに気づいてきました。

私が所属している社会福祉法人豊芯会は、1978年に開設以来、精神疾患や障害がある人達の居場所づくりからスタートし、現在は、長期入院者を地域へ迎えるためのグループホーム、ショートステイ、相談支援を中心とした地域生活支援センターI 型、グループでの表現活動や長時間の労働が困難な人達の働く場所として地域活動支援センターIII 型、就労継続支援として雇用型のA型と訓練型のB型事業所、日常生活をきめ細かく支援する自立訓練・生活介護等の事業を実施しています。
 特に、障害者の雇用支援制度においてかなり遅れをとっていた精神障害者の働く場と機会をつくることに果敢にチャレンジし、1993年に地域の高齢者や障害者で食事作りに不自由をきたしている人達に、手づくりの家庭料理を宅配する仕事を開始しました。当時、精神障害者の就労支援として食事サービスを始める所はまだ数少ない時代でした。当初30食のお弁当を作り宅配するのが精一杯だった活動が、現在では飲食店も合わせて300食ほどの食事を提供できるようになりました。福祉的就労の就労継続支援A型と地域活動支援センターIII型の精神・知的障害がある利用者が主ですが、年間約5000万円の売り上げを達成できるようになったのは、障害がある人達と共に、子育て中の親、難病で通常勤務が困難な方、定年退職した高齢者、服役した後仕事に真面目に取り組む刑余者の人達が、調理、宅配、受注管理、店の接客等で携わり、働く場面では、各々が役割をもち、障害者も対等に仕事をしている環境が創られてきたからだと言えます。障害があっても様々な得意とするスキルを持っていた人達が、多様な立場の人と一緒に働く機会を得て、私達が引き出すことができなかったスキルを、仕事場面で積極的に発揮している姿を見るようになり、それが売り上げに比例していく経験をとおして、私達もこれまでの就労支援の在り方を見直す貴重な機会となり、ソーシャルファームの取り組みに大きな魅力を感じるようになったのです。

ソーシャルファームに先進的に取り組んでいる海外のお話を拝聴する機会があり、ドイツや韓国、フィンランドなど、ソーシャルファーム関連法が成立していることを知りました。日本はまだそこまで至っていません。それから、従来の福祉制度の枠組みで法制化するのではなく、そこで営まれる事業(ビジネス)が発展していくような仕組みづくりに繋がる法制度が必要と考えています。
 新しい雇用・就労支援をめざして、ソーシャルファームを日本にも広げていこうと2006年に「ソーシャルファームジャパン」(代表 炭谷茂)が創設され、立ち上げから運営に参加しています。

今年の10月8、9日と茨城県つくば市において、地元の社会福祉法人「創志会」のご協力を得て、第3回目の「ソーシャルファームサミット」を開催することができました。実際にソーシャルファームに取り組み始めた人達や実際の事業への取り組みに関心がある人達が一堂に参集し、先進的な取り組み、農業に取り組んでいる人達の報告や、法務省、農水省、厚労省の三省が分野を越えて新しい雇用・就労支援に取り組み始めたことなどを確認することができました。
 まだまだ、日本のソーシャルファームは、スタート地点に立った創成期ですが、着実にソーシャルファームの風が吹き始めたことを実感しています。
 関心のある方のご連絡をお待ちしています。

【連絡先】
・社会福祉法人豊芯会(ほうしんかい) TEL 03‐3915‐9051(本部事務局)
・東京家政大学 人文学部教育福祉学科 精神保健福祉研究室
                                   ueno@tokyo-kasdei.ac.jp

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