http://www.seiwa-pb.co.jp/htmlmail/158.html
星和書店
  今月の新刊 next
動機づけ面接法の適用を拡大する:心理的問題と精神疾患への臨床適用

動機づけ面接法の適用を拡大する
:心理的問題と精神疾患への臨床適用

ハル・アーコウィッツ、ヘニー・A・ウェスラ、 ウイリアム・R・ミラー、ステファン・ロルニック 編
後藤恵 訳

A5判 並製 496頁
ISBN978-4-7911-0928-9〔2016〕
本体価格 3,800 円 + 税

問題飲酒行動の治療法として開発された動機づけ面接法は、アルコール依存症の治療の世界にとどまらず、薬物乱用、ギャンブル、摂食障害、不安症、慢性疾患の管理、など様々な問題に対してももちいられるようになった。本書は、このような現状を鑑みて、様々な心理的問題と精神疾患の治療で動機づけ面接がどのように応用されているかを紹介する。
帰還兵のPTSDの治療、うつ病の治療、摂食障害の治療、ギャンブル依存の治療、統合失調症と服薬アドヒアランスの問題、などで動機づけ面接がどのようにもちいられているか、各現場から報告する。またスウェーデン刑務所でMIをもちいて、再犯率が劇的に下がった事例も興味深い。MIが様々な形で受け入れられつつある今日、本書は、日本における動機づけ面接法の様々な臨床場面への応用について、新しい視点を提供する。

統合失調症を悩まないで

統合失調症を悩まないで

家族がみつけた幸せへの道

渡部和成 監修
渡部和成、愛知みすみ会 著

四六判 並製 160頁
ISBN978-4-7911-0929-6〔2016〕
本体価格 1,500 円 + 税

統合失調症の治療では、統合失調症について患者さんや家族に理解してもらうために行う勉強会(心理教育)が効果的である。心理教育の場で家族が統合失調症について学ぶことで、家族の心や態度が変わっていく。このことが統合失調症患者の病状改善と社会参加を促すことにつながる。渡部和成医師は、患者さんに対する心理教育とともに、家族に対する心理教育である家族教室を開き、家族会を組織してきた。この家族会活動で幸せへの道を歩みだした家族メンバーから、この活動を全国のご家族に伝えたいという希望が渡部医師に寄せられた。本書は、この家族の手記を渡部医師が監修し、解説やコメントをつけてまとめたもので、まさに家族と二人三脚で作り上げた希望の書である。家族会活動が、真に患者さんを回復に導き、家族を幸せにできていることを本書は実例をもとに伝えている。

双極性障がい(躁うつ病)と共に生きる《電子書籍版》

双極性障がい(躁うつ病)と共に生きる
《電子書籍版》

病と上手につき合い幸せで楽しい人生をおくるコツ

加藤伸輔 著

本体価格 1,500 円 + 税

「うつ」が繰り返し襲ってくる。いつまでも治らない「うつ」。うつ病という診断は、間違っているのではないか。もしかしたら双極性障がいかもしれない。
双極性障がいと診断されるまでに13年を要した著者が自身の体験をもとに、その症状ならびに確定診断されるまでの経緯、具体的な治療、双極性障がいと上手につき合っていくコツ、同じ障がいをもつ当事者へのインタビューをまとめた。本書は双極性障がいのみならず、幅広く精神障がいを抱えている方にお届けするピアサポートブックである。

EMDR革命:脳を刺激しトラウマを癒す奇跡の心理療法

せん妄の臨床指針〔せん妄の治療指針 第2版〕
《電子書籍版》

日本総合病院精神医学会治療指針1

日本総合病院精神医学会せん妄指針改訂班(統括:八田耕太郎)編

本体価格 1,800 円 + 税

せん妄は、日常臨床で頻繁にみられる症候群であり、身体予後悪化の独立した危険因子のひとつである。従来一過性の病態と考えられていたが、一旦発症すると持続して身体予後や医療経済的予後、さらには認知機能に悪影響を及ぼすことが明らかになっている。しかし一方で、日常臨床でのせん妄発見率は低く、診断や治療が遅れることにより、より複雑な病態にいたることが指摘されている。高齢化が著しい現況において、せん妄はさらに増加することが自明な優先度の高い課題である。しかし世界的にも名だたる診療ガイドラインの内容は、現場の医療者のニーズとは程遠い感がある。このような問題意識から2005年に『せん妄の治療指針』が出版されたが、この10年間に様々なエビデンスが蓄積されてきた。それらのエビデンスと現場感覚との融合を重視しながら、システマティック・レビューも含めて、10年ぶりに大幅な改訂を行ったのが本書である。

   雑誌の最新号 next
精神科治療学
本体価格  
2,880
円+税
月刊 精神科治療学 第31巻4号

特集:学校と精神医学 I

学校は精神医学に何を求めているか。精神医学は学校にどうかかわるのか。人のメンタルヘルスに多大な影響を及ぼす学校。学校におけるメンタルヘルスの問題に貢献する精神医学。2号にわたり、この問題に鋭く切り込む。本号では、いじめや不登校の問題、発達障害への対応、合理的配慮の義務化、メンタルヘルス教育や自殺予防教育などの予防精神医学的側面、院内学級、保健室と養護教諭の役割などを取り上げた。学校における精神医学の重要性がわかる特集。
JANコード:4910156070467

臨床精神薬理
本体価格   
2,900
円+税
月刊 臨床精神薬理 第19巻5号

特集: 向精神薬の初期用量・最大用量・維持用量

最大限の効果と最小限の副作用を目指す薬物療法を行ううえで必携の特集号!! 向精神薬の初期用量・最大用量・維持用量をどう設定するか? 見逃せない重要な留意点をそれぞれの専門家が分かりやすくまとめた。肝代謝酵素CYPの遺伝多型と用量、メタボリック症候群・腎機能障害・心疾患を有する患者や高齢者における留意点、持効性注射剤の用量設定と対応、統合失調症・うつ病の再発予防のための維持用量について、それぞれ専門の先生方に解説いただいた。
ISBN:978-4-7911-5223-0

トップへ

第2回日本多機能型精神科診療所研究会
 
今月のコラム

 
今月のコラム
LEAPとの出会い―治療を受け入れてもらうために― 前編
八重樫穂高

今回、ひょんなことからLEAPという精神病患者とのコミュニケーション技法について書かれたアメリカの書籍を翻訳することになった。「I am not sick, I don’t need help!」というインパクトがある題名の本で、その10周年記念版というものである。LEAPは、病識の面で問題がある患者を、いかに治療や支援と繋ぎ留めておくかということを主題に開発されており、「Listen傾聴 — Empathize共感 — Agree一致 — Partner協力」の頭文字から成っている。その根本は「相手に話を聞いてもらい、なにか意見を伝えたいときには、信頼関係の構築が大切である」という至極当然なことにある。私がLEAPと関わるようになった経緯から、その後に参加したLEAPの研修の様子をこの機会に少し紹介させていただきたい。

LEAPと初めて出会ったのは、ある論文の中でのことだった。それはGAINアプローチという、持効性注射製剤を導入する際の面接法についての論文である。そのGAINアプローチの基盤として用いられていたコミュニケーション技法こそがLEAPであった。それをきっかけにLEAPに関して興味を持つこととなる。まず、Xavier Amadorというアメリカの心理士によって開発されたものであるということがわかった。不勉強な私はそれまでAmador先生のことを存じ上げていなかったのだが、すぐに病識研究の分野で大変ご活躍されている方だということを知った。病識を扱う研究でよく用いられている、SUMD(Scale to assess Unawareness of Mental Disorders)という評価尺度の開発者であり、同じく病識研究で有名なAnthony Davidとともに「Insight and Psychosis」という書籍を出版されている。そして他の数ある著書のうちの1つに今回の「I am not sick, I don’t need help!」があった。その初版は2000年にアメリカで出版され、和訳本も2004年に出版されていた。しかし、そこにはLEAPの原型はあれども、いまのような概念はまだ確立されていなかった。そして、その後に現在の形のLEAPが完成され、10周年記念版の中で改めて紹介されるのである。それを初めて読んでみたときにその説得力と迫力に驚いた。中でも病識の乏しさに対する考え方、その扱い方などが非常にわかりやすく明瞭に記されていた。なによりも、この本が持っている魅力は、Amador先生のもう亡くなられてしまったお兄様が統合失調症だったことと深く関係している。この兄弟にも他の多くの家族と同様に、薬をのむ、のまないのやり取りで長年にわたり口論を繰り返した、辛い経験があった。そんな中で、「兄さんを理解したい」という弟の切実な思いが、LEAPを生み出したのである。つまり、LEAPは非常に家族向けのツールだと言える。たしかに患者家族など、医療者以外にも使えるように作られており、この本も患者家族を含めたすべての関係者にとって興味深いものとなるはずである。

また、10周年記念版では新たに、持効性注射製剤の有用性やアメリカでの精神医療の現場の様子が手に取るようにわかりやすく紹介されており、初版よりも内容が充実している。こういったことを踏まえて、改めてこの本を翻訳しようと決めたのである。疾患への理解を促し、ひいては偏見を減らすことも期待でき、日本の精神科医療にとっても大変有益なものになるだろうと考えたのだ。
 いざその翻訳を始めるに当たって、Amador先生とEメールでのやりとりを始めた。すると、平成27年の夏頃に彼からLEAP Instituteがニューヨークで月1回開催している研修に参加してみてはどうかとの提案があった。非常にありがたいお話だと思った、と言いたいところなのだが、小心者の私は正直なところ、はじめはあまり気が乗らなかった。というのも、私の英会話のレベルといったらひどいもので、単独で海外に行くということ自体も初めてだったからだ。しかもLEAP instituteの所在地はRiverheadというニューヨーク州のはずれにあるらしかった。ニューヨークと聞いてイメージする、マンハッタンのような中心部ではなかったのだ。JFK国際空港からはどう行くのかと尋ねると、公共交通機関はあまり使い物にならないから、レンタカーが一番だと言われた。不慣れな海外で独りで車を運転するという、さらなる障害が現れたのである。逆に良い点もなかったわけではない。このときちょうど、当院の上級医がニューヨークのHillside病院に1年間の留学中だったからだ。共に翻訳に取り組んでいた当院の院長からも、どうしてこのタイミングで行かない奴があるかと言われる始末だった。たしかに、どうせ行くのならば出版前に行っておきたいという本音もあり、心を決めることにした。

そこから予定を調整し、なんとか都合がつきそうなのが、平成28年の1月末だった。多少の懸念は抱えつつも、翻訳作業と並行しながら、研修会に参加する準備を進めていく。まずはLEAP instituteのホームページを見たり、あとは研修会の様子を収録したCDやDVDが発売されていることを知り、入手した。それを通勤の車内で流したりして、徐々に心の準備も整えていった。しかし、旅立ちを1週間後に控えたとき、ニューヨークで観測史上2番目の大雪とのニュースが飛び込んでくることとなる。1月のニューヨークであり、もちろん雪の心配をしていなかったわけではないのだが、よりによって記録的豪雪ときた。LEAP instituteの代表者からも、Blizzard Happening!という件名で、やめといたほうがいいんじゃないか、春に延期したらどうか、というメールがきた。いや、しかし、このタイミングは逃せない。外来や病棟の業務も必死の思いで調整したのである。いまさら先延ばしにはできなかった。予定通り向かう旨を伝えたが、きっとクレイジーな日本人だと思われたことだろう。たしかに大雪の中を長距離運転しなければならない可能性もあったわけだが、もうあとは野となれ山となれであった。(後編につづく)

八重樫 穂高(やえがし ほだか)
2011年、山梨大学医学部卒業。2011年より山梨県立中央病院初期臨床研修医、2013年より山梨県立北病院精神科後期臨床研修医。2016年より、山梨県立北病院精神科医師として勤務。ニューヨークにてXavier AmadorからLEAPのレクチャーを受ける。
訳書:『病気じゃないからほっといて―そんな人に治療を受け入れてもらうための新技法LEAP』(ザビア・アマダー著/八重樫穂高、藤井康男訳、星和書店より5月中旬刊行予定)
配信停止希望