ピアの視点
加藤伸輔
拙著『双極性障がい(躁うつ病)と共に生きる 病と上手につき合い幸せで楽しい人生をおくるコツ』の上梓を機に、コラム執筆のご依頼をいただきました。
さて、何を書こうかと思いあぐねていたところ、とあるグループホーム世話人の求人がありました。知人の勧めもあり応募することにしました。必要書類に応募動機論文があります。今回はそれをご紹介しようかと思います。以下、その内容です。
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日常生活面における相談、日常生活に必要な金銭出納に関する助言、服薬指導などの援助をすることで、利用者の方が自分らしく自立した生活を送れるようになることを目的とする通過型グループホームは、精神障がいのある方が地域社会で暮らしていくための第一歩として重要な場です。
そのような場で、私自身が寛解に至るまでに乗り越えてきた困難や経験、様々なサービスを受けてきた経験、リカバリーへ向けての活動などを生かし、直接的に利用者の方と関わり合いながら、彼らのリカバリーのお役に立ちたいという強い思いから、応募いたしました。
グループホームの世話人に応募した動機は具体的に3点あります。日常生活における工夫、傾聴による安定、ロールモデルです。
・日常生活における工夫
双極性障がいの私にとって症状を安定させるために薬は欠かせません。しかし薬だけで安定状態を保つことはできないことを経験的に学びました。
日常生活のちょっとした工夫によって、私の病状は飛躍的に回復しました。
例えば、生活リズムチェック表を記録し、客観的に自分を把握することで驚くほど状態が安定したのです。
そのような些細ではあるが、実はとても効果のある工夫をピアの視点からお伝えしていきたいと思っております。
世話人というと、とかく指導という形になりがちかもしれません。もちろん指導も大切です。それと同時に、自分自身の体験や経験をお伝えし受容と共感を大切にしながら、利用者の方のリカバリーに寄りそっていくことも大切にしていきたいです。
・傾聴
自分が回復するために、ピアに話を聴いてもらうことが大いに役立ちました。もちろん、専門職の方に話を聴いてもらいアドバイスをもらいたいこともたくさんあります。
一方で、障がいのない方には言いづらい、あるいは理解してもらえないようなこともあります。例えば薬の副作用のことなど、ピアだからこそ共感しながら話を聴ける場面も多くあるかと思います。
また、かつて行政書士・土地家屋調査士として多くの相談業務に携わってきました。その際、相手の立場になってじっくりと耳を傾けることで、相談者の問題としていることを自身で整理してもらうよう努めてきました。
ピアとしての視点と経験から学んだ傾聴スキルを併せて、利用者の方の話に耳を傾け、何に困っていて、どのように乗り越えていくかを一緒に考えていきたいです。
受容と共感を大切にし、相手のストレングスを見つけていく支援をしたいと考えております。
・ロールモデル
3年前、私はデイケアに通っていたのですが、障がいを抱えながら今後どうやって生きていこうかと思い悩んでいました。
そんな中、「ピアサポート」という言葉に出会い、ピアスタッフという存在を知り、自分の障がいを弱みではなく強みにできないかと考えられるようになりました。
障がいによるハンディキャップはあっても、自身の状態を上手にコントロールし且つそれまでの経験(ストレングス)を生かすことができれば、自分らしく精神的にも経済的にも自立した生活が送れることを証明していきたいと考えています。
自分自身がロールモデルになり、一人でも多くのピアに希望をもって頂きたいです。
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応募動機論文は以上です。ピアの視点から書き上げました。ピアサポート、ピアスタッフに関する私の思いが伝われば幸いです。
はてさて、結果はいかに。それはまた別の機会に。
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