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星和書店
今月の新刊 next
アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT) 第2版

アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT) 第2版

―マインドフルな変化のためのプロセスと実践―

スティーブン・C・ヘイズ、カーク・D・ストローサル、ケリー・G・ウィルソン 著
武藤 崇、三田村 仰、大月 友 監訳

A5判 並製 640頁
ISBN978-4-7911-0883-1〔2014〕
本体価格 4,800 円 + 税

1999年にHayesらによるAcceptance & Commitment Therapyが出版された。ACTに関する初めての書であり、ACTのバイブルである。2012年にその第2版が出版された。この12年間のACTの発展に伴い、第2版は大幅に内容が変更されている。本書は、その第2版を翻訳したものである。第1版が刊行された当時の日本では、認知療法が本格的に実施されるようになったばかりで、ACTはまだほとんど知られていなかった。それから十数年が経過し、多くの臨床家がACTに関心を持ち始め、多くのACT関連の本も出版されてきた。このような状況で、いよいよ「真打ち」を出版するときが来たのである。本書は、ACTの重要なエッセンスが凝縮された最新版バイブルである。

がん告知 そして家族が介護と死別をのり越えるとき

がん告知 
そして家族が介護と死別をのり越えるとき

物語とQ&Aで理解する介護家族の心のケア

バリー・J・ジェイコブス 著
渡辺俊之 監訳
渡辺俊之、山田宇以、近藤 強、釋 文雄、エイムズ唯子 訳

A5判 並製 324頁
ISBN978-4-7911-0884-8〔2014〕
本体価格 2,600 円 + 税

物語で理解する介護家族の心のケア。本書は、高齢の母親と、その介護をする50代の二人の娘、そしてその家族の物語です。実際の介護の様子や家族の心情が時間を追って丁寧に描かれ、同時に介護に役立つ解説や、様々な状況を想定したQ & Aが内容も豊富に用意されています。模範的とは言えない普通の人たちが、ぶつかり合ったり自分を責めたり相手に不満を持ったりしながら介護にあたっている様子が詳細に描かれています。 介護には「正解」と呼ばれるものはないのだということ、そしてその上でどうしたらいいのかを考えるための多くのヒントを与えてくれます。

   雑誌の最新号 next
精神科治療学
本体価格  
2,880
円+税
月刊 精神科治療学 第29巻9号

特集:精神科における困難事例にどう対処するか? I

精神科医が困難事例に出遭った時の解決策が満載!いずれの事例も、まだ外来診療を始めたばかりの若手がクリアしてもらいたい『基本対応例』と、ベテランの工夫が生きる『応用対応例』を記述。特集Iでは治療抵抗性統合失調症、不機嫌な・焦燥感を募らせた双極性障害、心因性非てんかん性発作、知的障害・発達障害による病状の修飾、長期のひきこもり事例、副作用での難渋例、長期拘束となる事例、産業精神保健における困難、措置診察での困難などを取り上げた。なかなか解決策が見つからず困ったときに役立つ特集。
JANコード:4910156070948

臨床精神薬理
本体価格   
2,900
円+税
月刊 臨床精神薬理 第17巻10号

特集: 抗精神病薬の適正使用

近年向精神薬の適応拡大が続いているが、本特集では抗精神病薬に焦点を当て、多剤大量療法の是正や、認知症のBPSD・成人の不眠・気分障害など統合失調症圏以外での使用、小児における使用において、「適正使用」という視点から概説した。また緊急報告として、ゼプリオン(paliperidone palmitate)の死亡例報告について、市販直後調査や突然死に関する文献的検討など様々な視点から死亡例について検討し、わが国の精神科医療が何を学ぶべきかをまとめた。
ISBN:978-4-7911-5204-9

今月のコラム
今月のコラム
摂食障害の理想の治療に近づくには?

〜ロサンジェルス・摂食障害スタディーツアーより〜

東京女子医科大学附属女性生涯健康センター 臨床心理士  小原千郷

先日、星和書店から『摂食障害:見る読むクリニック』を出版させていただきました。この本は、内科医・精神科医・臨床心理士の3名で、それぞれの診察やカウンセリングの中で実際お話しすることをDVDとテキストにまとめた内容になっています。この本を執筆しながら私たちが話し合ったことは、今の日本で摂食障害の理想的な治療を提供するのがいかに難しいかということでした。保険制度の問題、専門医の不足、どの科にかかるべきか、そして専門家同士の連携など課題は山積みのように感じます。

そんな中、この8月にカルフォルニア大学ロサンジェルス校(UCLA)で看護師をなさっている安田真佐枝先生のコーディネートで、ロサンジェルス「摂食障害スタディーツアー」に参加する機会をいただきました。UCLA病院で2日間、病棟見学とともに様々な専門家からみっちりと講義を受け、加えて3カ所の「レジデンシャル」と呼ばれる滞在型の治療施設を見学できるという、とても充実した内容でした。(レジデンシャルは日本でいうグループホームに近い形式ですが、民家に数人から十数人の患者さんが1カ月〜数カ月寝泊まりし、数多くの専門家が治療に当たります。さすがロサンジェルス、ある施設は、ハリウッドスターも住む高級住宅のゴージャスなプール付きの民家を改装して作られていました。)
 日本からは、精神科医・心理士・栄養士・看護師・薬剤師など多彩なメンバーで参加しました。

学んだことはたくさんあったのですが、中でも印象に残ったことが二つありました。一つ目は治療の枠組みやガイドラインがしっかり確立されていて、本当にたくさんの職種の方が同じ目的を共有して治療に当たっているということでした。病棟でも、レジデンシャルでも、患者さんの一日のスケジュールは大忙しです。毎日の主治医(心理士や精神科医)との心理面接に加え、家族療法、栄養指導、描画や小物作りといった作業療法、日々の楽しみ方を学ぶためのレクレーションセラピー、他の患者さんと気持ちを分かち合う集団療法などが、患者さんの状態に合わせて組み合わされます。食事の時間も状態に応じてルールが決められ、状態が良くなるとスーパーなどに自分の食べ物を買いに行ったり、外食したりする、退院後に備えた練習もありました。これらの治療の枠組みは他職種のチームミーティングで決定されます。
 そして、状態が良くなるにつれて、大学病院への入院→レジデンシャルへの滞在→朝・昼・晩3食を含む長時間のデイケア→短時間のデイケア→外来治療といったように、連続した治療が行われます。少なくともロサンジェルス周辺では、ここ数年こういった連携が非常にスムーズになってきていると多くの専門家の方から伺えました。このような治療全体の枠組みが分かると、患者さんもご家族も安心して治療が受けられるように思います。ただし、治療費はとても高額で、よい保険に加入していないと治療が受けられないという大きな問題はあるようですが。

そしてもう一つ印象に残ったことは、摂食障害からの「回復者」が専門家となり、治療をリードしていることでした。見学した三つのレジデンシャル施設のうち、二つの施設の代表者は元患者の方でした。回復して専門家の資格を取るとともに、自ら施設を立ち上げ、理想の治療を追求していらっしゃいます。そして、自分の体験をオープンに話し、「摂食障害は絶対治る」ということを熱く語られていたことが印象的でした。そういった方の尽力が、ここ数年アメリカの治療や専門家の意識を変えていると数人の方から伺いました。日本では、まだ偏見も多い摂食障害ですが、フィギュアスケートの鈴木明子さんをはじめ病歴をオープンにして活躍する方も現れ、最近では回復者の方が「同じ苦しみを味わう人が減るように」と様々な自助活動を始める動きもあります。確かに体験者の方は、どんな治療や支援が必要なのか、理想なのか、一番深く知っている方といえるかもしれません。

日本でも摂食障害のより良い診療体制や社会的支援を整えるための活動が始まっています。私たち専門家も、様々な国から学んで日本に合った治療を考えていく必要があります。その際、回復者の方の意見や力を積極的に生かしていくことも、理想の治療に一歩近づくために大切なことなのかなと、改めて考えさせられる体験でした。

小原千郷先生の本、好評発売中

摂食障害:見る読むクリニック ―DVDとテキストでまなぶ―
(鈴木眞理,西園マーハ文,小原千郷 著)


遊佐安一郎先生の2日間ワークショップ 遊佐安一郎先生 内田江里先生 感情調整困難支援研修II「臨床実験コース」 
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