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星和書店
今月の新刊 next
自閉症スペクトラムとコミュニケーション

自閉症スペクトラムと
コミュニケーション

理解コミュニケーションの視覚的支援

リンダ・A・ホジダン 著
門眞一郎、小川由香、黒澤麻美 訳


B5判 並製 272頁
ISBN978-4-7911-0824-4〔2012〕
定価 3,885 円(本体 3,700 円)

自閉症スペクトラムの子どもたちは聴覚よりも視覚的な理解力が大きいという特性を生かし、視覚的手法を用いてコミュニケーションを支援する。豊富な写真やイラストで視覚的支援具を紹介する。

子どもの強迫性障害 診断・治療ガイドライン

子どもの強迫性障害
診断・治療ガイドライン

齊藤万比古、金生由紀子 編

A5判 並製 300頁
ISBN978-4-7911-0823-7〔2012〕
定価 3,780 円(本体 3,600 円)

不登校やひきこもり、発達障害と関連が深い子どもの強迫性障害は、診断と治療に高い専門性が求められる。各専門領域の第一人者による6年間の研究成果が結実した、本邦初の包括的ガイドライン。

改訂新版 精神科の専門家をめざす

改訂新版 精神科の専門家をめざす

これだけは知っておきたい診療の技とコツ

福田正人 編著

四六判 並製 328頁
ISBN978-4-7911-0822-0〔2012〕
定価 2,940 円(本体 2,800 円)

本書は、精神科臨床における、患者のアセスメント、心理教育、診療に役立つカルテ記載などについて、教科書には記載の少ない、現場で本当に役立つ知恵・コツ・技を紹介。初版のほぼ倍の頁になった改訂新版。

統合失調症からの回復に役立つ治療生活日常生活のポイント

統合失調症からの回復に役立つ
治療と日常生活のポイント

患者さんに知っておいてほしいこと

渡部和成 著

四六判 並製 192頁
ISBN978-4-7911-0821-3〔2012〕
定価 1,680 円(本体 1,600 円)

統合失調症治療の専門家である著者が治療の極意を披瀝(ひれき)する。回復に向けて患者さんが心掛けるべきことを15のポイントにまとめた。16の症例から、各ポイントの実生活への役立て方も学べる。

IBS克服10のステップ

IBS克服10のステップ

過敏性腸症候群で悩む人&専門家へ

Jeffrey M. Lackner 著 
佐々木大輔 監訳・解説
細谷紀江、佐藤 研 訳


B5判 並製 192頁
ISBN978-4-7911-0820-6〔2012〕
定価 2,835 円(本体 2,700 円)

薬だけでは完治が難しい過敏性腸症候群。本書は、認知行動療法に基づいた、自分でできる症状コントロールのための10ステップを紹介する。食事療法、薬物療法などについても詳しく解説。

  雑誌の最新号 next
精神科治療学
定価 3,024
月刊 精神科治療学 第27巻10号

特集:摂食障害治療に取り組む I

摂食障害は最近、児童期例や成人発症例、他の精神疾患の併存例など新しい病像が増えており、一般の精神科医も対応に迫られる機会が増えている。しかし、精神科医の中で摂食障害の専門家は少なく、また苦手感を持つ精神科医も少なくない。そこで本特集は「摂食障害治療に取り組む」と銘打ち、単なる摂食障害の特集ではなく、治療論からみた摂食障害という視点を重視した。定式化した治療論ではなく、柔軟で辛抱強い治療の取り組みを紹介しており、精神科医の立場から摂食障害治療のノウハウを知ることができる特集。

臨床精神薬理
定価 3,045
月刊 臨床精神薬理 第15巻11号

特集: 精神科薬物治療と判断能力評価
特集: 成人期ADHDの適正診断とその治療
―注意欠陥/多動性障害治療薬atomoxetine

精神科医療においてもインフォームドコンセントは重要になっているが、患者の判断能力の評価が他科に比べて難しいという問題点もある。本特集では、精神科薬物治療と判断能力評価の実際を紹介した。また、ADHDは児童・思春期の疾患だが成人期でも症状が持続する例が報告されており、このたび本邦で初めて成人期ADHDへの適応を承認されたatomoxetineを中心に、成人期ADHDについて特集した。
ISBN:978-4-7911-5181-3

臨床精神薬理
定価 6,195
精神科治療学 第28巻 増刊号

物質使用障害とアディクション
臨床ハンドブック

アルコール・薬物依存といった物質使用障害や、ギャンブル依存、インターネット依存といった行動のアディクションに対する現時点での最も包括的で最新の臨床実践集。これら、今日的な精神障害に苦手意識を持つ精神医療現場は多いと思われるが、本書を読めば、基本的な知識が得られるのみならず、必ずしも自分のところで治療することが難しくても、適切な支援資源が何かがわかるので、そこへつなげることができ、結果として患者に最善の治療を提供することができるようになる。執筆陣は経験豊富な臨床家、支援者を揃えた。わが国の物質使用障害とアディクション臨床のスタンダードとなる書。
JANコード:4910156081036

治療の聲
定価 2,940
年一回刊 治療の聲 第13巻1号

特集1:東日本大震災:新たなる臨床の風貌
特集2:災害と精神医療:神戸=東北ホットライン
特集3:討論:サリヴァンのエンパシー概念の深みへ

震災後1年半を経過した現在、被災地のただ中で精神科医療に携わる支援者たちは被災地でのメンタル面での問題について何を感じているのか。特集1では、被災地の周辺からの思い、臨床倫理の問題、被災地における臨床、専門職によるボランティア活動、阪神淡路大震災との関係などさまざまな視点からの貴重なメッセージの数々を収載する。特集2は、今年行われた神戸大学精神科での講演会「災害と精神医療」から4つの講演の記録。神戸と東北の支援者の活発な意見の交換により災害支援システムの問題点が浮き彫りに。特集3では、サリヴァンの「エンパシー」概念をめぐり3名の論客が議論を戦わせる、本誌ならではの画期的内容。
ISBN:978-4-7911-7717-2

臨床精神薬理
定価 2,310
季刊 精神科臨床サービス 第12巻4号

特集: 就労支援と医療の統合をめざして:
実践家・企業・当事者の知恵から学ぶ

雇用義務化と法定雇用率引き上げへの動きを受けて,精神障害者の就労支援への関心がこれまでになく高まっている。しかし,我が国の支援制度や連携体制はいまだ未成熟で,期待される成果は上がっていない。本特集では,世界的に明確なエビデンスである「就労支援と医療の統合」を軸にしたつなぎ目のない支援体制構築のために,医療・福祉・雇用支援の専門家,そして働く当事者と雇用主とが,最新技術と豊かな経験からノウハウを提供しあう。精神障害者に関わるあらゆる職種に必携!
ISBN:978-4-7911-7148-4

−マインドフルネスを巡る心理療法−
マインドフルネスと第三世代の認知行動療法フェア

今月のコラム
今月のコラム
登山と認知行動療法とマインドフルネス
千葉大学 大学院医学研究院 認知行動生理学  田中麻里

酒の勢いとは恐ろしいもので、山好きの友人との居酒屋での何気ない会話が、予期せぬほどに盛り上がり、これまでアウトドア派でも何でもなく、「日焼けは嫌」「虫も爬虫類もダメ」「3K(きつい、汚い、危険)は苦手」だった私が、なぜか今夏から登山を始めることになりました。

しかも、普通なら、初心者の山ガールならぬ山ウーマンらしく、低い山でのトレッキングぐらいから体を慣らすところですが、これまた酒の勢いで、いきなり標高1000m台のセミプロ級から始めることになり、しらふに戻ってから、事の重大さに動揺するという始末…。

しかしながら、終わってみると、山の素晴らしさは想像以上で、奇しくも、私の専門である認知行動療法や、訳させていただいたマインドフルネスの効果を実感するものとなりました。今日は、そのお話をしたいと思います。

私たちが最初に登った山は、急勾配と平地を繰り返す形状で、最初の急勾配では、息が苦しくなるほどのきつさで、パニック障害のような「うわぁ、どうしよう! 無理だよ! 死んじゃうよ!」という自動思考に伴う不安点数が100点近くはあったと思います。ですが、1時間ほど行ったところで平地となり、2回目の急勾配では、きつさに馴化したのか、直前の経験から「このきつさも、いつかは終わる」という認知が働いたのか、点数は20点以下にぐっと下がり、めでたく認知行動療法の「不安低減理論」が証明される結果となりました。

また、私は、過去に、母の友人で、私もとてもお世話になった方を山の事故で失くしています。そのため、私が登山をするにあたって恐れていた最悪のシナリオは、彼女が亡くなった経緯から「手すりのない橋で足を滑らせ、岩場で頭を打って死亡する」というものだったのですが、下りの道中でまるでその場面を再現するような箇所が現れ、しかも、予定外の夕立で足元はぬかるんでいたのです。

その時の私は、正しく教科書通りのFight or Flight(戦うか、逃げるか)状態だったと思いますが、当然ながら、山ですから、逃げるという選択肢はありません。そこで、不安障害の治療で用いられる「暴露反応妨害法」のお世話になることにし、「こんなところで死んでたまるか!」と、私の中の戦闘スイッチをオンにして、目の前の、文字通り「足のすくむような」恐怖に挑みました。すると、無事に橋を渡り終えた時、ドーパミンなのかアドレナリンなのかわかりませんが、頭の中で様々な脳内物質がプチプチと分泌されているのではないかというような快感と高揚感を味わい、あの恐怖は一体何だったんだと思えるまでになったのです。意外にワイルドな自分の一面を垣間見たこの出来事から、これまで恐れていたものは、実は実体のない幻想だったということが分かり、私自身の体験として、「暴露反応妨害法」の効果が実証されたという訳です。

そして、特に岩場など危ない箇所を歩いている時は、マインドフルであるか、そうでないかで、明らかに体の感覚と得られる結果が違うことも分かりました。「もう嫌だ」とか「早く終わってくれ」とか「滑落して死んじゃったらどうしよう。お母さん、ごめんなさい」などの自動思考や、脅威的解釈に注意を奪われている時は、道のりが途方もなく長く感じられ、疲労は激しく、本当に滑りそうになります。一方、マインドフルに呼吸に意識を向け、無心で一歩一歩を踏みしめていると、体は軽く、心も軽く、気づいたら悪い道は終わっているのです。それこそが、マインドフルネスでいうところの「今ここ、この瞬間の完全さ」と言えるのかもしれません。

さらに、「疲れたら休む。休んで元気になる。お腹が空いたら食べる。食べて元気になる」という原始人のような行動は、高度情報化社会で生きる者には、なかなか新鮮なものです。もちろん、登っている時の腿の「プルプル」や、下っている時の膝の「ガクガク」は、そろそろ無理がきかなくなるアラフォーの体には厳しく、その後3日間は全身筋肉痛なのですが、山頂で味わう達成感や、澄んだ空気の美味しさ、刻々と変わる景色の美しさは、そのような肉体的な疲れを上回って余りあるものです。

そういう意味では、山の雄大な自然に触れると、私たちは一人の人間である前に一匹の動物であるということに気づかされ、実は、物事は思考で複雑化させず、シンプルに捉えた方がうまくいくということを教えられます。そして、それは私たちが行っている認知行動療法やマインドフルネスが目指すところでもあると思います。

折しも、秋の行楽シーズンですね。お弁当を持って、お近くの山に出かけてみてはいかがでしょうか?

ジョン・カバットジン著、田中麻里監訳『マインドフルネスを始めたいあなたへ
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